まことしやかなカレーの効能
ーー夏場は暑くて食欲も減りがちなのですが、なぜかカレーだけは食べたくなることがあります。これはどうしてなのでしょうか。
風間 やはり食欲を刺激するんじゃないかとは思います。いろいろな香辛料が入っていますから。
和田 先ほど堀井さんがおっしゃいましたけど、そもそもカレーで使われているスパイスは漢方の原料と同じだったりするわけですから、そういう影響があるかもしれないです。
堀井 科学的なデータを持っているわけではないですが、例えば暑い時期などにスパイスを取ると、体調が整うなど、そういう効果はあるのかもしれないですね。
ーーまことしやかな話で「カレーを毎日食べていると風邪をひきにくくなる」とか「カレーを食べると集中力が高まる」なんていう説もありますけど。
堀井 ただ、それも根拠はないんですよ。漢方薬と同じスパイスを使っていますから、身体に良い効果を生み出す可能性はあるかもしれないですけど、科学的根拠はないので、なんとも言えないのが正直なところですね。
固形ルウを使った究極のレシピは?
ーー近い将来、日本式カレーにまつわる動き、ブームの予測などがあればぜひ教えてください。
堀井 ここ数年、ネットでレシピが出回った影響で「スパイスからカレーを作る」という方が増えました。たしかにスパイシーで美味しいかもしれないし、作ること自体の喜びもあるとは思います。しかし、アレコレやっても結局「我が家のカレーには勝てない」といったような、近い将来に定番の日本式カレー、固形ルウを使った家庭カレーが再評価されるだろうと思っています。
なぜなら食品の歴史って振り返ってみるといつもそうなんですよ。定番メニューから派生した斬新なものが一気に流行ると、その反動で数年後には元のメニューの需要がまた伸びる。こういったことを繰り返してきていますので、近い将来は、また日本式カレーが再評価されるのではないかと思っています。
風間 そうなんですよ。今、堀井さんがおっしゃった「日本式カレーの再評価」「カレー=日本食」という流れは、本当は東京オリンピック・パラリンピックの影響で今年にでも訪れたのではないかと私は思っていたんです。しかも、世界中に日本式カレーが広まってくれるだろうと……。しかし、東京オリンピック・パラリンピックが延期になってしまいました。もちろん、近い将来にはきっと「日本式カレーの再評価」だったり、「カレー=日本食」という認識は高まるだろうと信じていますけどね。
ーー最後になりますが、市販されている固形ルウをより美味しくするための究極の方法があったら教えてください。
堀井 つまらない答えかもしれないですけど、パッケージ裏面に書かれた通りに作るのが究極のレシピです。使う食材の量もきっちりそのままやると良いと思います。
風間 私もそう思います。それこそ、固形ルウを使ったアレンジレシピがネット上では出回っていますけど、純粋にカレーを美味しく食べるのであれば、裏面のレシピ通りが一番ですね。
堀井 各メーカーとも研究所のメンバーが、最も美味しくなる研究を重ねた結果ですからね。だから、私個人的にもいつもその通りに作っています(笑)。
ーーたまに「様々なメーカーの固形ルウを混ぜて使うと良い」みたいなレシピを目にすることもありますけど、どうですか?
堀井 混ぜておいしい場合もあるとは思いますが、必ずしもスパイスが増えれば良いというわけではないですし、スパイス同士が喧嘩して味を損ねることもありますから。固形ルウは、配合自体も研究所のメンバーが、研究に研究を重ねて出した結果ですから。だから、裏面に書かれたレシピ通りに作られるのがやはり一番だと思いますよ。
140年以上に及ぶ日本式カレーの変遷を、かなり足早に紹介していただきましたが、これらの話は実はまだまだほんの一部に過ぎません。日本人の食に欠かせない、カレーの歴史、さらに調べていくと面白いかもしれませんよ。
撮影/我妻慶一
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