缶入りのチューハイやサワーなど、開封してすぐ飲めるお酒やドリンクのことをRTD(Ready To Drinkの略)といい、ここ数年のアルコール市場で特に元気なカテゴリーです。たとえばいまも大人気のレモンサワー。また、数年前には高アルコール度数のストロング系もブームとなりましたが、このRTD界に新風が巻き起こっているのです。本稿はその注目商品を中心に、最新トレンドをレポートしていきます。
野菜と果実の恵みが凝縮したスムージー感覚の新作
RTD界の新風とはズバリ、「やさしさ」です。たとえば、身体に良さそうな素材を使ったり、ナチュラルな製法にこだわったり。これまでも糖質、プリン体、人口甘味料にフォーカスしたオフやゼロ系のカテゴリーはありましたが、さらに素材や製法にもいっそう踏み込んだ新商品が続々登場しています。
背景にあるのはやはり、コロナ禍における健康志向の高まり。これはお酒だけでなくフード業界全体のトレンドであり、たとえば昨年大ヒットしたタピオカブームの火付け役「春水堂」(チュンスイタン)は腸活ティーを、「ゴンチャ」はヘルシーなビネガードリンクを新発売するなど、やさしさにフォーカスする流れは勢いを増しているのです。
一連の流れのなかでキリンが今秋新発売したやさしいRTDの第1弾が、冒頭の「キリン ベジバル」シリーズです。こちらはひとことで言うと、スムージーのようなカクテル。野菜と果実をバランスよくミックスし、繊維を含んだ野菜汁と果汁が最大33%使用されています。
グリーンmixはマスカット、キウイ、ケール、小松菜入りで、果汁と野菜が計20%のふくよかなうまみが特徴。レッドmixはりんご、アセロラ、トマトが計31%で、まろやかな酸味がウリ。オレンジmixはオレンジ、マンゴー、ニンジンが計33%で爽やかな甘味を感じられるテイストになっています。開封して飲んでみました。
香りにも味にも青っぽい感じはなく、野菜と果汁のうまみや甘みがみずみずしいおいしさです。口当たりもきわめて特徴的で、素材の繊維感を楽しめるジューシーなテクスチャーが絶品。フタの部分が広口になっているのは、この舌触りを最大限楽しむためであり、メーカーの自信を感じます。
お酒であるため、あえてスムージーという表現をしていないそうですが、飲んだ印象は確かにスムージー。甘めのお酒やカクテル好きな人はもちろん、野菜を摂れるので、罪悪感の低い一本としてもアリだと思いました。