イギリスは“英語”を生んだ大国であり、日本との文化交流も古い国。ただ、グルメのことに限ると話は別で、イタリアやフランスに比べておいしいものが少ないという印象です。実際にイギリス本土の人は、自国の料理に対してどのように思っているのでしょうか。
日本人はローストビーフの本来の食べ方を知るべきだ!
有名なイギリス料理といえばフィッシュ&チップスですが、イギリス本土の人はよく食べているのでしょうか? 日本に短期滞在中のエドワード・ルーカス・ロウさんにききました。
エドワード・ルーカス・ロウ さん
イギリス・ドーセット出身。イクラ軍艦が好きで、北海道に行くのが楽しみ。
「好きだけど、日常的には食べないよ! あれはパブ料理やファストフードだから、日本でいう唐揚げやフライドチキンみたいなものだネ。ビールによく合うでしょ。お酒に合うという意味なら、スコッチウイスキーに欠かせないのは『ハギス』だよ」(ルーカス・ロウさん)
ハギスとは、茹でた羊の内臓をミンチにして調理する、そぼろのような料理。羊肉独特のクセがありますが、多彩な香辛料とハーブを用いた味わいが、ピート香(泥炭による燻製のような香り)の効いたスコッチウイスキーとよく合います。
ルーカス・ロウさんは、最近日本に来たばかり。そこでうれしかったのは、日本におけるローストビーフの盛り上がりだとか。丼をはじめとした、日本人が独自に解釈してアレンジする食べ方には戸惑いがあったものの、本当においしいローストビーフの食べ方をもっと知ってほしいと熱弁します。
「ローストビーフは、『ローストランチ』という伝統的な食事のメインディッシュ。僕は毎週日曜日に家族とよく食べていたけど、多くのイギリス人も同じようにローストランチを食べる風習があるんです。僕らにとって、特別なご馳走であることは間違いないね!」(ルーカス・ロウさん)
この料理は、ローストビーフをメインに、ヨークシャープディング(シュークリームの皮をふわっとさせたような一種のパン)やマッシュポテト、人参を一皿に盛り付けたもの。日本でも「ロウリーズ・ザ・プライムリブ」などの専門店に行けば、このスタイルで提供されます。
「プライムリブはアメリカのステーキ文化に影響されたものだから、薄めに削ぐ繊細なイングリッシュカットとは違って、ぶ厚く豪快な味だよね。日本でローストビーフが流行っているなら、ぜひ本場イギリスでローストランチを食べてほしいです」(ルーカス・ロウさん)
イギリスのおいしい料理が世界中でアレンジされている?
そしてさらに話を進めていくと、日本のパイブームにも一言もの申したいとルーカス・ロウさん。近年オーストラリアから日本に上陸した「パイフェイス」や、横浜で人気沸騰中の「パイホリック」ではセイボリー(惣菜)パイが名物ですが、原型はイギリスの「シェパーズパイ」であると豪語するのです。
「オーストラリアやアメリカではパイが伝統的な家庭料理のひとつだけど、もとはイギリス人が伝えたものですから! なかでも、僕らのふるさとの味といえばシェパーズパイ。羊や牛肉を、マッシュポテトなどで閉じ込めたミートパイだね」(ルーカス・ロウさん)
確かにアメリカもオーストラリアも、かつてのイギリス人が建国したといえる国。英国の食文化が根付いて発展していったと考えれば、ローストビーフにパイと、イギリスの伝統料理は様々な国にアレンジされているといえるでしょう。
今回、ハギス、ローストランチ、シェパーズパイを挙げてもらいましたが、すべてに共通するのは肉とジャガイモ。色合いも茶と黄で地味な印象ですが、個人的にはもっとイギリスに寄り添って奥深い伝統料理に触れていきたいと思います!
※この企画は、外国人留学生へのリサーチから得た知見をもとに、海外向けに日本企業のブランディングや商品PRのサポートを行う「LIFE PEPPER」とのコラボによるものです。