グルメ
2023/1/1 21:00

なんでヒットしたか?を専門家が深掘り。2022年の「グルメトレンド」を振り返る

2021年はマリトッツォやアサヒ生ジョッキ缶&マルエフ、チキンバーガーなどが一大トレンドとなりましたが、2022年はどうだったのでしょうか? 5つのトピックスを挙げるとともに、その背景や注目ポイントなどをフードアナリストが深掘り解説します。

 

↑本稿ではあえて「ガチ中華」は挙げていません。その理由も解説するのでぜひ一読を

 

【その1】睡眠改善市場の活性化

2022年に品切れするほどヒットした代表商品を挙げるとすれば、やはり「ヤクルト1000」。睡眠の質向上やストレス緩和といった機能面が、現代人にウケた背景にあるものの、より直接的な要因は別のところに。それは今春、有名タレントが番組で愛飲発言をしたこと。

 

↑「ヤクルト1000」。2019年10月から1都6県で発売開始し、2021年4月より全国展開。それから1年を経た2022年には品切れが続出する大ヒット商品に

 

もう一点は、そもそもヤクルトが超有名ブランドだからという側面も見逃せません。なぜなら、睡眠の質向上やストレス緩和を特徴とする他社の飲料(「ネルノダ」「届く強さの乳酸菌」など)も以前から発売されていたからです。とはいえ「ヤクルト1000」のヒットを起爆剤に、睡眠改善市場が一気に活性化されました。

 

↑ハウス食品の「ネルノダ」シリーズは2019年3月のデビューで、ドリンクタイプをはじめ数種展開。こちらも人気を集めています

 

ちなみに、2022年は東京ヤクルトスワローズがリーグ優勝し、“村神様”こと村上宗隆選手の歴史的快挙も大きな話題に。ヤクルトファンには記憶に残る一年となったことでしょう。

 

【その2】生ドーナツ

2022年を代表するスイーツを語るうえでは「カヌレ」という声もあるのですが、筆者としては「生ドーナツ」を挙げたいです。確かに、購入できる場所の多さでは「カヌレ」に軍配が上がるでしょう。ただ「生ドーナツ」のほうが旬であり、これまでにない特徴をもったドーナツだからです。

↑「生ドーナツ」ブーム火付け役の旗手が「アイムドーナツ」。ふわとろの食感が最大の特徴です

 

火付け役は、福岡発のベーカリー「アマムダコタン」と姉妹店の「アイムドーナツ」。前者は2021年10月に東京進出。後者は1号店を2022年3月に中目黒へ、5月に2号店を渋谷へオープンし、どこも大行列の人気店となりました。

 

また「生ドーナツ」は、イタリアの揚げ菓子「ボンボローニ」とともに第3次ドーナツブーム(※)をけん引した立役者でもあります。なお2009~2010年ごろにはドーナツ型のムースケーキ「とろなまドーナツ」がブームになったのですが、こちらは一連のトレンド話のなかでほぼ語られなかったので、ここで触れさせていただきました。

 

※:第1次は2006年に上陸したクリスピークリームドーナツの大行列。第2次は2015年に起こったコンビニドーナツ競争。

 

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【その3】完全メシ

技術力の高さとマーケティングの妙を実感したのが、日清食品の「完全メシ」です。デビューは2022年の5月と、完全栄養食のカテゴリーとしては後発なのですが、これまでにないプロダクトで大ヒットに。

↑「完全メシ 豚辛ラ王 油そば」と、「完全メシ カレーメシ 欧風カレー」。「栄養バランスを考えるのが、めんどくせぇヤツらに!」というコピーもわかりやすく秀逸

 

ちなみに後発とはいったものの実は日清食品、2019年に「All-in PASTA」という完全栄養食を発売しており、「完全メシ」にはその知見が生かされていると思います。

↑こちらが「All-in PASTA」。オンライン限定で発売されていました

 

これまでにないプロダクトというのは、おいしさと多彩なジャンルにあります。日清食品のお家芸である即席フードの技術力をフルに生かして「ラ王」「カレーメシ」ブランド(シリアルとスムージーもあり)から発売し、9月にはかつ丼や汁なし担担麺などを「完全 冷凍メシ」として増強。日清食品の完全栄養食事業は未来を見据えた一大プロジェクトでもあり、今後も動向から目が離せません。

 

【その4】劇場型ハンバーグ

ここからは外食トレンドを紹介します。ひとつは「劇場型ハンバーグ」。特徴は、目の前で焼き上がるハンバーグをお客が好みの味付けで楽しめるライブ感。西の横綱は福岡発祥の「極味や」、東の横綱は東京発祥の「挽肉と米」で、どちらも大人気店となっています。

↑「極味や」の渋谷パルコ店。同店では客席目の前が鉄板になっていて、大きな半生ハンバーグを好みの加減に焼いて食べられるのが特徴

 

「極味や 渋谷パルコ店」は2019年、「挽肉と米」1号店の吉祥寺店は2020年ですが、徐々にベンチマークする店が増加。自粛モードも薄れるなか、他社の動きが顕著になったのが2022年だった感じます。

↑「挽肉と米」のハンバーグ。スタッフが目の前で、3回に分けて挽きたて焼きたてを提供してくれるのが魅力です

 

特に「挽肉と米」の“和の空間にカウンター席”“炊きたて羽釜ご飯”“回数を分けて焼きたてを提供”といった手法は発明ともいえるスタイルでフォロワー店が多く、なかには他社が別業態で「○○と○○」という店名を用いるケースも散見。影響力の高さを感じます。

 

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【その5】韓国酒場

2021年は映えを意識した「ネオン酒場」やアジア屋台のにぎわいを演出した「夜市酒場」が活況でしたが、2022年はそのなかから「韓国酒場」が躍進したと感じます。なぜかというと、外食のやり手企業として知られる、串カツ田中ホールディングスとダイヤモンドダイニングが「韓国酒場」の新業態をオープンしたからです。

↑串カツ田中傘下の企業が、2022年9月に都内1号店として開業した「焼肉くるとん 代官山店」。ブランド1号店は、同年3月オープンの北浦和店

 

有名企業による「韓国酒場」は以前から「韓国屋台 ハンサム」や「豚大門市場」などがありましたが、今年になって参入が増えた理由は、Z世代を軸としたコリアンブームがより顕著になったから。例えば、近年のフードなら「トゥンカロン」や「ダルゴナコーヒー」などがありますし、エンタメやファッション、美容などでも韓国の人気はご存知の通り。

↑ダイヤモンドダイニングが8月に新橋へオープンした「韓国大衆酒場 ラッキーソウル」。看板メニューは、近年若者中心に人気のイイダコを使った「チュクミサムギョプサル」

 

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なお、2022年はユーキャン新語・流行語大賞で「ガチ中華」がノミネートされましたが、こちらは長期トレンドだったものが今年になって日の目を浴びたように感じるので、本稿では触れませんでした。強いていえば「ガチ中華フードコート」がブレイクした一年だったかと思います。

 

2023年は近しい流れで、「ガチインド」や「ガチスタン」がよりアツくなると感じていますが、来年初頭には改めて「2023年のフードトレンド予測」的な記事の掲載も予定。そちらもぜひ注目ください!

 

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