インド料理といえばカレー。そしてより本格的に味わうならナンをセットに付けるというのが日本での一般的な食べ方ですよね。でもインド人からすると、それは間違った認識だということが判明しました。現地出身のカイルさんが、日本人が抱くインド食のイメージの誤りを教えてくれました。
サンドゥ・カイルさん
パンジャーブ出身。郷土食のバターチキンカレーを人一倍愛する。
日本のインドカレーの多くは北インド料理で「ルー」なんて呼ばない!
カイルさんの故郷はインドの北の方。日本人がよく食べるバターチキンカレーなどが郷土料理のパンジャーブ出身ですが、日本に来てほかの地方のインド料理が少ないことに驚いたそうです。
「バターチキン、ホウレンソウ、豆、カリフラワーなどのカレーに加え、タンドリーチキンもパンジャーブ料理。日本には北のインド料理を扱う専門店ばっかりだし、そもそも日本のカレーはとろみがついている濃厚系がほとんどだよね。サラっとしたカレーがメインの南インドレストランは少ないと思います」(カイルさん)
北インド料理ばかりというのはレトルトのカレーでも顕著。日本で売っているレトルトの”本格インドカレー”はバターチキンカレーが多く、その味わいはクリーミーで甘みがあります。一方、南インドカレーの特徴はサラっとした口当たりと爽やかな辛さ。専門店が少ないものの希少性や味わいが人気となっており、行列店も少なくありません。この南北の違いをカイルさんに深掘りしようと思い、「ルー」という単語を出すと驚くべき答えが返ってきました。
「日本人はよくカレーのソースのことを『ルー』って言うけど、インドにそんな文化はないよ。故郷ではだれもそんな言い方しないし、なんでそう呼ぶのかわからないけど独特の表現だよね」(カイルさん)
筆者の独自調査によると、これにはカレーが日本に伝わった経緯にヒントがありました。「ルー」とは小麦粉をバターで炒めて調理した古典フランス料理の「roux」がルーツ。日本のカレーは、イギリスから伝わったイギリス式フランス料理がベースの「欧風カレー」が原点であるとともに、家庭にカレーが広まるきっかけとなった固形のカレーの素を「ルー」と呼ぶようになったのがその起源であるようです。
ナンはマイナーで「チャパティ」やライスで食べるのがインド流!
カイルさんがもうひとつ、日本人の間違いで主張したいのがナン。日本では最も有名なインドのパンとして食べられており、飲食店はもちろんスーパーなどでも売られています。ですが、実際には本場インドではあまり食べないとのこと。その理由を聞くと、納得の答えが返ってきました。
「ナンはもともと王宮で食べられていたようだし、普通の家にはタンドール窯がないから作れないのさ。インドでもちゃんとしたレストランとかに行かないと売ってないから、普段はめったに食べることはないよ。北インドでは、鉄板やフライパンで焼く『チャパティ』っていう薄い円形のパンが一般的。南インドではライスが主食じゃないかな」(カイルさん)
北は小麦で南は米食。日本よりはるかに広大なインドでは、北と南で収穫できるメインの農作物が違うため、食べる穀物も違うとのこと。ちなみにご飯は「バスマティライス」といって、日本のジャポニカ米とは品種が異なる粘り気の少ない米を食べているようです。さらにカイルさんは、こんなインド事情も語ってくれました。
「南インドの人は『ビリヤニ』という料理もよく食べているはずだよ。これはいわゆる炊き込みご飯で、日本でもたまに見かけるかな」(カイルさん)
ビリヤニは、東京を中心にヒットしている南インドレストランのミールスに次ぐ人気料理。2017年のトレンド予想のひとつとして挙げられています。とはいえ、インドのリアルな食文化はまだまだ日本に浸透していません。グローバル化が進むなか、本来のインド料理もよりいっそう広まっていけばいいですね!
※この企画は、外国人留学生へのリサーチから得た知見をもとに、海外向けに日本企業のブランディングや商品PRのサポートを行う「LIFE PEPPER」とのコラボによるものです。