デジタル
2024/12/9 12:00

【西田宗千佳連載】Apple Intelligenceは発展途上。本質は2025年になってから花開く

Vol.144-3

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はAppleの「新型iPad mini」の話題。Apple独自の生成AI「Apple Intelligence」の展開において、iPad miniが狙う立ち位置とは何なのかを探る。

 

今月の注目アイテム

Apple

iPad mini

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「Apple Intelligence」とは、生成AIなどを使ったAIモデルをOSに複数搭載し、いろいろな機能をより便利に使えるようにするフレームワークである。Appleの場合、同じ機能をiPhone・Mac・iPadの主要3製品にすべて搭載し、基盤技術として利用していく。

 

10月末に各種OSのアップデートがあり、アメリカ英語ではApple Intelligenceが使えるようになっている。日本語での対応は2025年4月以降だ。だが日本で売られているApple製品でも、言語の設定を「英語」にすれば、そのままでApple Intelligenceが使える。

 

Apple Intelligenceの有効化により一番目立つのは「Siriの変化」だ。従来は丸いボールが表示されていたが、Apple Intelligence後には「画面の周囲が虹色」で表されるエフェクトになる。以前は“音楽を流す”“なにかを検索する”といったことに使う場合が多かったと思うが、Apple Intelligenceの導入により、個人の行動やアプリの利用履歴を活用し、「パーソナルなコンテクスト」に合わせて回答するようになる。

 

また、会話はよりなめらかなものになる。単に言い回しが自然になるだけではない。人間の側が、言い淀んだり言い間違ったりしても、その内容を汲み取って会話を続けようとする。これまでは「どういう命令を与えるとSiriがきちんと動くか」を理解した上で一定の命令を与える、という使い方が馴染んだが、人に話しかけるのに近い対話で、「おすすめのレストランまでの道筋を示して、カレンダーに予定をメモとして組み込む」といったことが可能になる。

 

メールやウェブの要約もできる。特にメールについては、たくさんの返信が続いた長いものでも、“これまでの会話はどんなものだったか”という感じの内容で要約を作ってくれて、かなり便利だと感じる。

 

画像や動画も、「海の近くにあるヨット」のような自然文で検索可能になる。Apple Intelligenceが画像になにが映っているかを把握し、検索のための情報を作る仕組みが導入される。結果として、より人間的な発想で画像検索が可能になるわけだ。

 

ただ、これらの機能があっても、“Apple製品が劇的に賢くなった”とまでは言えない。結局のところ、ちょっと検索や要約が便利になっても、それは付加的な要素に過ぎない。AIでスマホが大きく変わる……というところまでは進化していない。

 

Apple Intelligenceは段階的に機能が投入される。10月末のアップデートは「第一弾」に過ぎず、年内に第二弾、年明けにさらに機能が少しずつ追加されていく。そんなこともあって、まだまだ本命と言えるほどの機能向上ができていない、というのが筆者の見立てだ。日本語でのサービスは2025年以降なのだが、その時期であっても、Apple Intelligenceはまだ“進化途上”である。そういう意味では慌てる必要もなく、単純に「お買い得なタイミングだから買う」という考え方で十分だ。

 

実のところ、AI関連機能の“産みの苦しみ”は、Appleだけの課題ではない。GoogleにしろMicrosoftにしろ、同じように付加価値を出しきれてはいない。2025年に向けて機能が模索され、価値を高めていく……と考えれば良いだろう。

 

そんな中、1機種だけ大きく価値を変えた「新Mac」がある。そのMacの話は次回のウェブ版で解説することとしたい。

 

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