Vol.145-3
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はシャープから登場した「AQUOS R9 pro」。ライカ社との協業でカメラ性能をアップさせた、シャープの開発意図を探る。
今月の注目アイテム
シャープ
AQUOS R9 pro
実売価格19万4600円〜
スマホにとって、カメラは大きな差別化要因だ。特にハイエンドスマホにとっては、高価な先端イメージセンサーを使った“カメラ特化”が重要な方向性といえる。そこで得た差別化要因は、次第にマス向けの製品にも活用され、裾野へと広がっている。
そんな中、カメラメーカーとコラボレーションするスマホも増えてきた。
シャープやシャオミはライカと組み、Oppo(オウガ・ジャパン)はハッセルブラッドと提携している。特に2024年は、これらのメーカーのスマホが目立った年でもあった。
カメラメーカーのお墨付きがあるスマホ、というのは昔からあった。だが5年ほど前までは、その市場価値はいまほど大きくなかったように思う。
理由は、画質やカメラとしての機能がまだ未熟だったからだと考える。スマホのカメラ機能が未熟な時期には、センサーの性能や基本的な画質補正などの進化の幅がまだ大きい。そうすると、カメラメーカーと組んだからということより、わかりやすいスペックの方が有効になる。
しかしいまは、スマホのカメラもかなり画質が上がってきた。ハイエンドなセンサーを搭載した製品ならなおさらだ。
一定の水準を超えたカメラを作る場合、重要になるのは“写る”ことではない。写った画像・映像で“どのような色・写りにするのが良いのか”ということだ。シンプルな言い方をすれば、同じような映像がデータとして得られたとして、どの色にすることを選ぶのか……という話でもある。
写真の写りは、レンズの選び方や特性によって変わるところもあるし、その後の処理によって変わる部分もある。カメラメーカーとして長い経験があるところは、その判断基準を持っている。デジタルカメラでの知見に限ったことではない。カメラブランドとして長くビジネスできているということは、“このカメラであればこういう写真が撮れる”ということを消費者・ファンが支持し、判断して購入しているということでもある。
単にブランドを貸すだけでは、そうしたファンを失う可能性にもつながる。だからこそ現在は、“高画質になったカメラでどんな色の写真を残すのか”という判断基準の決定について、カメラメーカーとスマホメーカーが協力して臨むようになってきているわけだ。
ただ、ライカがシャープやシャオミと提携しているからといって、シャープとシャオミのカメラが同じ写りになるわけではない。色などの選び方の傾向として「ライカっぽさ」が双方にあるものの、どこを重視するかは同じにはならない。筆者の見るところ、2社製品の間にはズームやコントラストに関する考え方の違いがあるように感じる。この辺まで見ていこうとすると、製品選びはなかなか難しいものだ。
他方で、現在スマホメーカーと組んでいるのは「日本のカメラメーカー以外」と言える。日本メーカーは一眼において競争を繰り広げている最中で、まだまだスマホメーカーとの深い協業には至りづらいのだろう。日本で元気なスマホメーカーが減った、という影響も否定できない。この辺、2025年にも変化はないと予想しているが、どうなるかはまだ見えてこない。
では、カメラ以外の差別化点はどこか? 今はAIに注目が集まっている。そこでどんな点に着目すべきかは、次回のウェブ版で解説しよう。
週刊GetNavi、バックナンバーはこちら