「週刊GetNavi」Vol.50-4
ネットワーク家電を売るカギはなかなか見つからない。
そのなかで注目を集めているのが「コミュニケーションする家電」だ。ただし、そこまでの道のりは長い。
人が家電に求めるのは、極論すれば「誰もがお手伝いさんや執事を雇える」環境だ。家電で家事の手間は減ったが、自動化できた範囲は少ない。結局、自分で家電を操作し、時間を短縮しているに過ぎない。自宅のセキュリティや明日の予定の確認などを、声を通じて行えるようになれば、それはある種「誰もがお手伝いさんや執事を雇える」環境に近い。アメリカでAmazon EchoやGoogle Homeが注目されるのはそのためだ。Facebookも、執事になるコンピュータ技術を開発中だし、AppleのSiriもそうだ。HomeKitとの連携がある分、Appleはより現実の方向へ、他社より一歩先に出ている、ともいえる。
一方でシャープは、自社で独自にではあるが、「よりコミュニケーションの要素が濃い家電」を指向している。同社が「ココロプロジェクト」として展開中の技術では、エアコンやスマートフォンに「強く擬人化したキャラクター」を用意し、コミュニケーションの要素を強くして「ネット連携家電」を作ろうとしている。それは、執事的な方向性というよりも、鉄腕アトムやドラえもんから続く「友人としてのロボット」路線である。
ただし問題は、どちらも「完璧なものはまだまだ出来ない」ところだ。機械が人間臭い反応をすればするほど、人間は人と同じ要素を機械にも求めるようになる。付加価値として、コミュニケーションの要素しかない状態であれば、過去のペットロボットと同じように、飽きられて終わってしまう。
そのため各社は、「どこに実用的な要素を加えるか」で試行錯誤している状況だ。
AmazonやGoogleは、自社の機器にスピーカーの機能を持たせつつ、外部のネットサービスと連携するようにした。最低限スピーカーとして使えることを担保したうえで、対応サービスが自然と増えて行くビジネスモデルとしたのだ。シャープは、家電とAIが密結合することを活かし、「その家族はどのようなサイクルでこの機器を使っているのか」という履歴を活かし、「このあとどう家電を使うと便利になるか」を提案するよう、開発を続けている。シャープ1社で戦うのは厳しいのだが、すべての家電で同じバックグラウンド技術を使う、と定めて効率的な開発を目指しており、少なくとも国内企業としては先頭を走っている。あとは、機能だけでなく他社連携がどうなるかも気になる。
実は、現状家電連携で先を走っているように見えるAppleのHomeKitも、単に「まとめて操作できる」「操作ボタンの名前を呼べば声でも働く」だけ。できることを手堅くやっているに過ぎず、インテリジェントな部分は弱い。AIに関するアプローチについて、Appleは意外なほどビジョンを示していない。今後AppleがAIをどう扱うのか、家電連携だけでなく、全体戦略としても気になるところだ。
●Vol.51-1は「ゲットナビ」3月号(1月24日発売)に掲載予定です。
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