Vol.150-3
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はマイクロソフトのPC、新Surfaceの話題。同社はSnapdragonプロセッサーモデルの普及を目指しているが、その理由は何かを探る。
今月の注目アイテム
マイクロソフト
Surface
米国価格799ドル~(Surface Pro 12インチ)

マイクロソフトは現在、主にノートPC向けのソリューションとして「Copilot+ PC」を推進している。Windows 11にAI機能を組み込み、PCのプロセッサーが搭載したAI推論機能を使う「オンデバイスAI」で処理し、Windows PCの価値を高めようというものだ。
Copilot+ PCは昨年5月に発表され、対応製品は6月から発売されていた。しかしこれまではヒットに結びついていない。それも当然の話で、Copilot+ PCを生かす機能がWindows 11に正式搭載されたのはこの春のこと。それまではテスト版という扱いであり、幅広く使える状況にはなかった。結果としてCopilot+ PCでどんなことができるかの周知も進まず、ニーズは拡大してこなかったわけだ。
だが今後は少し状況が変わる可能性は高い。Intel・AMD・Qualcommといった主要プロセッサーメーカーの製品は、Copilot+ PCが必要とする「40TOPS以上のNPU」を搭載するようになっている。最新のPCを買ったらCopilot+ PCの機能が使えた……という形を目指すことになるだろう。
背景のひとつとして考慮すべきなのは、Windows 10のサポート期間が2025年10月14日に終了する、ということだ。セキュリティ修正は提供されなくなり、利用に大きなリスクが生まれる。長期間使われてきたPCの置き換えニーズが生まれており、そこでCopilot+ PCが選ばれる可能性は高い。
ただ問題は、Copilot+ PCを積極的に選ぶ人がどれだけいるか、ということだ。最新のPCを選ぶとCopilot+ PC対応である可能性が高いとはいえ、「できるだけコストを下げたい」と考えると、機能に対する認知度が低いCopilot+ PCが選択されない……という可能性は否定できない。
そこで大きな変化になる可能性が高いのが、「Microsoft 365」(いわゆるオフィスソフト)のAI機能である「Microsoft 365 Copilot」のオンデバイスAI対応である。現在はすべてクラウドで処理されているが、Copilot+ PCのオンデバイスAIで処理可能になると、通信がないところでも安心して、AIの力を使って作業ができるようになる。昨年11月、「Microsoft 365 Copilot」のオンデバイスAI対応が勧められているというアナウンスがあったものの、2025年5月末現在、利用可能にはなっていない。計画が遅れているのではないか、という懸念は大きいが、新しいPCの価値を高めるものとして期待したいところだ。
ではその辺も含め、今年のPC市場がどうなるのかは次回のウェブ版で解説していきたい。
週刊GetNavi、バックナンバーはこちら