「週刊GetNavi」Vol.52-3
Nintendo Switchの特徴は、合体構造によって「どこでも同じようにゲームができる」ことだ。これは日本のユーザーから見れば、「携帯ゲーム機がパワフルになって、据え置き型ゲーム機としても使えるようになった」ように見える。実際、採用されているNVIDIAのSoCは、CPUコアとしてARM系アーキテクチャを採用している。バッテリーも搭載していて、省電力性も配慮されているから、中身としてはスマートフォンやタブレットに近い。そこを考えても、携帯ゲーム機に近い構造といえる。
しかし任天堂は、プロモーションのなかで「携帯ゲーム機」という言葉を一切使っていない。これは、「携帯ゲーム機」という言葉に「性能を犠牲にして携帯性を重視したもの」「メインではなくサブのゲーム機」というニュアンスが存在するからである。日本ではともかく、海外ではそうした印象の人が多い。一部のマニア向けを除き、海外では携帯ゲーム機がほとんど売れなくなっており、欧米においては、新型ゲーム機が「携帯ゲーム機」と思われることはマイナスである。あくまで「最新の据え置き型がそのまま持ち出せる」、ということになっている。
一方で性能的に見れば、Nintendo Switchは実際のところ、主流の据え置き型に比べると劣る。すでに述べたように、モバイル系の技術基盤で作られているためだ。ゲーム向けPCはもちろん、PlayStation 4やXbox Oneに比べても性能的には見劣りする。
それが致命的な差になる、と筆者は考えていないが(実際、性能以外の面でNintendo Switchは魅力的だ)、ひとつの事実として、性能が大きく異なるゲーム機向けに同じゲームを作るには、データや一部ゲーム内容に作り直しが必要になることが多く、ゲーム開発を行ううえではリスクが生まれる。ゲームの開発効率を上げたいゲームメーカーとしては、「性能が劣り、まだ売れるかわからないゲーム機に、手間をかけてゲームを移植する」モチベーションが出ない……ということはあり得る。Nintendo Switchが普及する前にゲームを集めるうえで、このことはリスクである。実際、国内メーカーに比べると、欧米メーカーのNintendo Switchに対する視線は冷ややかだ。
確かに不利で、懸念材料ではあるものの、すでに述べたように、筆者はこのことがNintendo Switchがヒットするうえで致命的な問題、とは考えていない。Nintendo Switchにはほかのゲーム機にはない特徴があり、任天堂としてはもちろん、そこがユーザーに評価されてヒットする……と見込んでいるわけだ。任天堂がそこでコアな要素と考えているのが「コントローラー」ということになる。
では、コントローラーがどこまでNintendo Switchを差別化する要素になるのか? それは次回のVol.52-4で解説することとしたい。
●Vol.52-4は3月17日(金)公開予定です。
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