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2016/1/14 8:00

【西田宗千佳連載】「統合」でむしろ弱くなる日本のPCメーカー

「週刊GetNavi」Vol.38-4

 

vaio s11

東芝は昨年12月21日、同社の家電部門である東芝ライフスタイル社の再編計画を発表した。同時に、PC部門を2016年4月を目標に分社化する、と発表。本稿の執筆時点では、富士通やVAIOとの経営統合について明確なコメントはないものの、業界内では「統合に向けた動き」と理解されている。

前回説明したように、仮に3社が統合することになれば、世界シェアを足し合わせた場合、Appleと並ぶ世界第4位のメーカーになる。もちろん日本では1位だ。

とはいえ、この値を額面通りに受け取る業界関係者はいない。それぞれの事業が抱える負債を圧縮し、事業をコンパクトなものに整理する必要があるからだ。その過程では、厳しいジャンルを切ることもあるだろうし、各社が持っていた良さの一部を捨てる必要もある。3社統合の際、規模縮小は避けられない。

東芝は、PC事業分社化に際し、約1300人の人員削減を行う。存続する事業はB to B、すなわち企業向けビジネスであり、日本でのみ個人向け事業を継続する。

この時点で、東芝のPC事業の規模は3~4割コンパクトなものになる。これは、他社との事業統合を行う際、できるだけ負荷の小さな企業体となるよう事前に整理しておく、という意味合いが強い。富士通のPC事業は、分社化でどうなるかまだ全貌が見えていないが、東芝同様、ある程度スリム化するものと考えられる。

となると、VAIOはどうなるのか? VAIOは企業向けに目線を送りつつも、まず個人に好かれるPCとしての成功を目指している。そして、モバイルとクリエーションという、付加価値の高い領域でだけ勝負することで、「価格で戦うメーカーには作りづらい」製品を目指している。東芝・富士通がソリューションビジネスとの関連を生かしたB to Bで戦おう、という姿勢でいることとは大きく異なる。それも当然だ。VAIOにはソリューションビジネスがないのだから。

統合の行方がどうなるか、現時点でははっきりしない。

しかし、数だけを頼みにした統合は、コンパクトな事業体になる以上、難しい。富士通と東芝はともかく、企業としての狙いも体質も異なるVAIOを取り込むことが、本当にメリットとなるのか、それもわからない。

難しいのは、PCは売れづらくなった商品だが、世の中では必須のものだ、ということだ。鉛筆が儲からない商売になったからといって、鉛筆メーカーがなくなるわけではない。日本メーカーが鉛筆を作らなくなったら、海外製の鉛筆が日本に入ってくるだけだ。

日本のPCメーカーの力が、また弱くなることだけはわかっている。インテルやマイクロソフトといった、プラットフォーム開発を行う企業に対し、日本メーカーが求めるものを伝える道も細くなる。もうそれでいい、と、ワールドワイドに売られる安いものを買うか、それとも、若干高くなるが日本のニーズを濃く反映した製品を買うか。

これから、ユーザーにはそんな選択肢が突きつけられることになる。

●Vol.39-1は「ゲットナビ」3月号(1月23日発売)に掲載予定です。

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