「週刊GetNavi」Vol.39-1
技術&コストの条件が揃い量産が可能に
2016年にどんなものがブレイクするのか?
業界関係者にヒアリングすると、「バーチャルリアリティ(VR)ではないか」という声がよく聞かれる。理由は単純だ。16年上半期に、本命と呼ばれるVR用ヘッドマウントディスプレイ(HMD)が続々と発売されるからだ。
まずは、ソニー・コンピュータエンタテインメントの「PlayStation VR」が、ソニーのゲーム機「PlayStation 4(PS4)」用周辺機器として、16年前半に登場する。
そして、OculusVRの「Oculus Rift」。現在のVRブームのきっかけを作った火付け役であるPC用HMDの製品版が、遂に3月から出荷を開始する。
ほかにも、HTCとゲーム配信大手のValveが共同開発した「HTCVive」や、国内ベンチャー企業が開発中で、視線の方向を認識できるHMD「FOVE」などの登場が予定されている。
ここにきてVR用HMDが増えてきたのは、PCやゲーム機の性能が高くなり、遅延がなくコマ落ちのない高速なCG描画が実現できるようになったこと。そして、ディスプレイパネルやモーションセンサーといったHMDに必要なパーツが、スマホ向けに量産されたことで、低コストになったことなどが挙げられる。
だが、なにより大きかったのは、魚眼レンズを採用したOculusの登場以降、“歪ませて描画したCG”を組み合わせて視界のほとんどをカバーし、見える風景をCGに置き換える体験が可能になったことだろう。
VRは1960年代(!)にCGの発達とほぼ同時期に生まれ、90年代には一度目のブームを迎えた。当時、研究の最前線で検討されていたものと、現在作られているものとでは品質こそ異なるものの、発想面では極端な差はない。約50年に渡り、研究の場では様々な発想が試されてきたが、それをようやく“商品”の場に落としていけるようになってきたことが、現在のVRブームの本質である。
主に2種類のHMDがVRブームを牽引?
HMDのなかでも、PlayStation VRと、Oculus Riftなどとでは、若干性質が異なっている。 Oculus RiftをはじめとするほとんどのVR対応HMDは、PCと連携して動作する。PCは拡張性が高く、演算能力も高いからだ。
一方、PlayStation VRは、PS4を使用。画質ではワンランク落ちるのが実情だ。だが、PS4は3万円台で購入できるうえ、セッティングもPCに比べればはるかにシンプル。ハードルが劇的に低い。
今年は、いきなりVRがブームになるというよりは、“フロントランナーのPC”と“マジョリティ向けのPS4”といった形で、市場を分けるように広がっていくだろう。一方、スマホ用にもサムスン電子の「Gear VR」などの製品が登場しており、最終的にはこちらが本命という声も聞かれる。しかし、“VR体験の鮮烈さ”という意味では、PCやPS4向けのHMDが有利と予想される。
では、VRの“鮮烈な体験”とはなにか? 普及に向けた課題とはなにか?その辺はVOl.39-2以降にて解説していきたい。
「Vol.39-2」は2/1(月)更新予定です。
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