ホテルの宿泊客が無料で使えるスマートフォンレンタルサービス「handy」が、日本でいよいよ7月1日からスタートします。handyはベンチャー企業のTink Labs(ティンク・ラボ)が2012年に香港で始めたサービスで、日本ではこのTink Labsとシャープが出資した合弁会社handy Japanがサービスを提供します。
海外ではすでに600ホテルで導入
handyは、ホテルの宿泊客が、客室に備え付けのスマホで国際・国内電話、データ通信を無料・無制限で利用できるサービスです。すでに世界17か国で、ザ・リッツ・カールトンやヒルトン、ハイアットなど、海外の有名ホテルを中心に600ホテル・11万客室で稼働。特に、香港やシンガポールでは客室の5割以上に導入されているといいます。
handy端末でできること
handyでは通話やデータ通信のほか、地図アプリと連動したトラベル情報をチェックすることができ、近くにあるレストランや観光情報、施設のクーポンなども提供されます。また、handyは外に持ち出して使うことができ、日本語、英語、中国語にも対応。外出先からホテルのコンシェルジュに簡単につながるので、いざというときにも安心です。
Androidスマホであるhandyは、自分でGoogleアカウントを設定してアプリをダウンロードして使ったり、カメラで写真を撮ったりすることも可能。外部メモリーカードは搭載していませんが、Googleフォトなどのクラウドサービスにバックアップして思い出を残すことができます。もちろん、チェックアウト時に端末は初期化され、個人情報はすべて削除されます。
どの事業者の通信サービスを利用するかは公表されていませんが、日本ではドコモのネットワークを利用し、YouTubeの動画をスムースに見られる速度は確保しているとのこと。ちなみにデータ通信をどれだけ使っても速度制限はありませんが、テザリングはオプション契約となっており、テザリングが使えるhandyを設置しているかどうかはホテルによって異なります。
ホテル側のメリットは?
宿泊客は旅行先でスマホを無料で使えるというメリットがありますが、では、handyを導入するホテル側のメリットとは何でしょうか。発表会ではhandy Japanの代表取締役社長、勝瀬博則氏が登壇し、いくつかのメリットを挙げました。
1つは宿泊客とのコミュニケーションがしやすくなること。handyのホーム画面はホテルのWebサイトと連携しており、いつでも見てもらえます。また、ホテル側からhandyにプッシュメッセージを送れるので、クーポンや割引情報などを組み合わせることでイベントやレストランに宿泊客を誘導しやすくなります。実際、これまでにレストランへの送客が30%、イベントへの誘導が20%増加したという実績があると語ります。
また、宿泊客との連絡手段としても使えます。トルコで爆破事件があった際には安否確認でhandyが使われ、ユーザーの9割がhandyで返答したというデータがあるそうです。さらに、旅の目的や記事の閲覧履歴、言語の選択など、handyで得られるさまざまなデータを解析し、ホテル経営に役立てることができるといいます。
ミネラルウォーター1本分のコストで導入可能
handyの導入にかかる費用は1台あたり月額980円。これには端末代や導入教育、端末が故障などで交換になる場合の補償、コールセンターサポートも含まれており、初期費用は無料です。これは1日あたり33円という計算になり、handy Japanは客室に置くミネラルウォーター1本分のコストだとアピールしています。
日本では、ロイヤルパークホテルが国内初の導入ホテルとなります。ロイヤルパークホテル常務取締役総支配人の笹井高志氏は「カードキー誕生以来の衝撃。客室アメニティの感覚で、すぐに新しいスタンダードになる」と期待をにじませていました。
日本人が日本のホテルでわざわざ別のスマホを使う機会は多くないかもしれませんが、訪日客には便利なツールとなるに違いありません。逆に、香港やシンガポールでは広く普及しているようなので、海外旅行時にホテルの部屋にあったらぜひ使ってみたいものですね。