「週刊GetNavi」Vol.55-1
Windows 10 SはChrome OSの対抗馬
5月2日(現地時間)、マイクロソフトは、米国ニューヨークで開催した「Microsoft EDU」で、Windows 10の教育市場向け版のWindows 10 Sを発表した。
なぜ教育市場向けなのか?
それは、特に米国のPC市場で教育がホットだからだ。こういう話をすると、「ああ、日本と同じようにタブレット導入の話か」と思う人もいそうだ。だが、それはちょっと違う。米国の教育市場では、数年前からGoogleのChromebookが勢いを増している。Windows 10 SはChromebookに搭載されているChrome OS対抗のOSである。
ChromebookはブラウザであるChromeの上で各アプリを使うことを前提としたノートPC。価格は200ドル前後からと非常に安いものの、当然、使えるアプリの種類は限られる。個人市場向けにも出ているが、まったく振るわない。
だが、教育市場では別だ。イギリスの調査会社フューチャーソース・コンサルティングの調査によれば、米国の幼稚園から高校までの「K-12」と呼ばれる教育市場では、Chrome OSのシェアは2016年には58%で、2012年の1%から急拡大している。一方、Windowsのシェアはその間、43%から22%に急落している。
教育市場での普及のカギは「管理」のしやすさ
Chrome OS普及のカギは「管理」だった。児童・生徒はPCを適切に管理できない。学校内では安全なアプリだけを使わせたいが、それを管理するには様々なハードルがある。新たに機器を導入するときや機器が壊れたとき、機器のセットアップは簡単・短時間に行えなければならない。Googleは管理ツール「G Suite for Education」とChrome OSをセットにし、それらの問題を解決したうえで、安価に使えるハードとして教育市場への大量導入に成功したのだ。
Windowsも管理機能を持っているが、企業向けで多機能すぎ、セットアップも面倒だった。管理機能を考えるとWindows 10 Homeより多機能で高価なProを選ぶことになり、コストもかかった。
そこでマイクロソフトは、Windows 10 Proから不要な機能を削除し、一斉セットアップなどを簡便化する機能を用意したうえで、アプリを「Windows Store」からのみインストールできるものを教育市場向けに作った。これがWindows 10 Sだ。機能を削ったぶんライセンス価格を下げ、ハードウエア価格も200ドルからとした。まさにChromebookと真っ向から対抗する準備を整えたわけである。同時に、「SurfaceLaptop」という新ハードウエアにWindows 10 Sを搭載して販売する。この新ハードは999ドルからと教育向けとしては高いが、非常に高品質であり、日本のモバイルファンにも気になる製品になった。
マイクロソフトとGoogleの一騎打ちになった感がある米国教育市場だが、Appleはどう対抗するのだろうか? 日本にはどのような影響があるだろうか? そのあたりは次回のVol.55-2以降で解説する。
週刊GetNavi、バックナンバーはこちら!