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2017/8/31 20:00

【西田宗千佳連載】PCの「脱16:10」はゲームから広がった

「週刊GetNavi」Vol.58-2

↑LGの21:9 曲面型ウルトラワイドゲーミングモニター「34UC89G-B」
↑LGの21:9 曲面型ウルトラワイドゲーミングモニター「34UC89G-B」

 

2000年代に入って、ディスプレイは急速に「横長」に集約された。テレビ関連の縦横比が「16:9」になった結果、そこに合わせるように変わっていったわけだ。

 

しかし現在、その常識は崩れ始めている。ディスプレイの縦横比の変化がまず現れたのはPCだった。なかでも明確な変化があったのは、ゲーム向けの別売のディスプレイだ。ゲームを主たる用途としたPC、いわゆるゲーミングPCは、欧米を中心に2010年頃から売り上げが伸びている。現在は、PCのなかで伸び続けているのはゲーミングPCのみ、といってもいい状況である

 

ゲーミングPCでは、没入感を高めるために「ウルトラワイド」ディスプレイを求める流れがある。これは、16:9ではなく、21:9。21:9は映画館で使われる、いわゆる「シネスコ(シネマスコープ)」に近い。だが、主にゲームで使われるのは、映画に近いということよりも、画角が広くなり、左右の視界が広くなることが大きい。ファーストパーソン・シューティングのようなゲームでは臨場感が高まるし、ネットワークRPGでは表示出来る情報の量が純粋に増え、プレイの自由度が高まる。スペックが固定されている家庭用ゲーム機と異なり、PCならば画面の縦横比が異なっても対応は容易だ。

 

ゲームのような趣味には、こだわりこそが重要。本気でゲームをする人がディスプレイにこだわり、そこに付加価値があるものを求めるのは当然だ。だから、PC用ディスプレイパネルを製造するLGディスプレイなどがウルトラワイド型のパネルの提供を始めると、PC用ディスプレイのメーカーが採用を始めた。もちろん、ゲームにも向くが、もちろん、映像作成などのクリエイター向けとしても使える。だが、もっとも購買意欲が旺盛なのはゲーマーなので、ウルトラワイドディスプレイは、まずゲーム向けに広がっていった。その関係もあり、販売の本場はやはり海外だ。

 

日本はノートPCの比率が高いので、外付けディスプレイのトレンドは緩やかにしか入ってこない。ノートPCはサイズに制約があること、量産がコストに直結することなどから、ひとたび16:9もしくは16:10のディスプレイが定着すると、そこからの変化は遅かった。実際のところ、Windows 7までは、マイクロソフトが「16:10のディスプレイに向けて機能を作っていた」部分が大きく、PCメーカーとしてもそこを逸脱するモチベーションが小さかった。

 

だが、Windows 8以降、マイクロソフト自身がSurfaceで16:10でないPCを作るようになり、こだわる必要が減ったことから、4:3もしくは3:2の製品が増えた。それが差別化点になり始めているのだ。

 

では、スマホやタブレットはどうか? その辺は次回のVol.58-3にて。

 

●Vol.58-3は9月7日(木)公開予定です。

 

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