「週刊GetNavi」Vol.41-4
前回の連載で、「4K放送において録画ができなくなる」という話の実情を書いた。現在のペイ・パー・ビューと同じように「録画を不可能とする」フラグが導入され、番組によっては録画を不可能とする運用が可能になる、というのが技術的には正確だ。すなわち、放送内容によって録画不可となる可能性もある、という話だ。
例えば、4Kで高画質な映画を放送したとしよう。それが自由にダビングできると、DVDやBlu-rayなどのビジネスに打撃を与える可能性がある。だから、要望がある番組については録画不可にしたい……。これが、放送局から出ている要望である。
それはそれで理があるようにも思えるが、問題点が3つある。
第一に、プレミアム向けの衛星放送で譲ったことで、地上波にも悪い影響を与える可能性が否定できない、という点だ。いまはまだ検討されていないが、5年後、10年後に地上波4Kが議論されるのは間違いない。そのとき、衛星放送での議論が悪影響を及ぼす可能性がある。事実、2Kでのデジタル放送では、もともと衛星放送のためだけの仕組みだったB-CASとスクランブル(暗号化)が、なしくずしに地上波にも導入された経緯がある。警戒されても仕様がない。
第二に、番組ごとに録画フラグ切り替えを行う運用ができるのか、ということ。CS放送では一部行われているが、地上波局はトラブルを恐れ、フラグをこまめに切り替えることには消極的である。となると、一部の録画不可番組のおかげですべての番組が録画不可となる可能性もゼロではない。筆者が話を聞いた放送局関係者はみな、一斉適応には否定的だが、まったくない話ではない。4K放送録画禁止フラグの導入に否定的な放送局関係者は、この点を理由に「導入しても使えないだろう」と話す。
そして第三に、誰の要望によるものか、ということだ。テレビ局は映画会社などの名を挙げるが、映画会社から明確な声は上がっていない。「明確な声があるなら話は早いのだが」と、あるテレビ局関係者は話す。どうやら、各方面やテレビ局自身のビジネスを勘案すると「録画不可の運用もできるようにすべきではないか」くらいのトーンが正しい。
そうした条件を、メーカーと放送関係者の話し合いだけで決めるのは正しくない。どういう議論が行われているかをオープンにし、消費者を交えて議論を進めるべきである。正式放送の際に録画機器を製品化するには、半年以内には確定する必要がある。だからもう時間はない。本来はこの春には確定している予定だった。現在は見逃し配信なども出てきて、過去とは録画の関係も変わっている。だからこそ、ここで拙速な判断をすべきではない、というのが、筆者の意見である。
Vol.42-1は「ゲットナビ」6月号(4月23日発売)に掲載予定です。
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