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2018/3/17 8:00

【西田宗千佳連載】ソニーに残る「モバイル」の課題

「週刊GetNavi」Vol.64-4

2018年4月1日より、ソニーの社長は平井一夫氏から、吉田憲一郎氏へと交代する。吉田氏は平井ソニーでCFO(最高財務責任者)を務めた人物であり、平井氏の片腕と言っていい。吉田氏の意見は平井氏の舵取りに大きく影響していたといわれており、今後の吉田氏によるソニーの運営も、基本的には平井路線の継承……というより、平井・吉田路線を継承し、自らの企業運営をしていくことになるのだろうと予想できる。

 

そのなかで、吉田氏はどこに注力するのか?  吉田氏は「バランスシート(経営上の収支状況)の改善は緒についたばかり」としており、基本的には各事業の収益性改善と評価に力を注ぐであろうと思われる。

 

そこで気になるのは「モバイル」事業だ。前回解説したように、モバイルはソニーのなかでも問題の多い部門である。日本ではXperiaは人気のスマホだが、世界全体で見ればシェアは低い。中国メーカーとの競争が激しい一方、ハイエンド市場はごく少数の企業で寡占されており、そこに割って入るのは難しい。そのため、平井ソニー時代には、すでに「規模を追わない」姿勢になっている。それでも、売上規模は2017年度予測値で7400億円と大きい。儲からないのに売上は大きく、ちょっとした市況変化で容易に赤字に転落しうることがモバイル事業の問題点で、本来は、さらに抜本的な「高付加価値型へのシフト」もしくは「事業の刈り込み」が必須である。ただ、スマートフォンは、今後出てくる新たな技術の礎となるもので、事業を止めてしまうと次の時代への足がかりがなくなる。こうしたジレンマが、今、ソニーのモバイル事業の流れを不透明なものにしている。

↑Xperia XZ1

 

モバイル市場の先行きに左右されるという意味では、好調であるはずの半導体事業も例外ではない。スマートフォンは普及期から定着期を迎えた。毎年のようにハイエンドスマートフォンがどんどん売れる、という状況ではなくなりつつある。これまでも、スマートフォン向けイメージセンサーは、各地のスマホ市場の売れ行きに左右され、ソニーの収益に影響を与えてきた。この先、スマートフォン向けイメージセンサーの売上が安定的に伸びるとは考えづらく、「ハイエンドスマホ向け一本足打法」からの脱却は必須なのだ。そのため、自動車などの新しいジャンルにも目を向けてはいるものの、これが大きく収益に貢献するのは2020年より先になりそうだ。

 

堅調に見えるゲームも、数年のうちにはプラットフォーム更新の時期が来る。「PS5」が出るのかどうかはわからないが、PlayStation 4事業も、あと1、2年のうちに「次」を見据えた収益構造に変化する必要がある。

 

こうしたことを、吉田新社長は当然考えているはず。だから、どこかひとつが上手くいかないだけで全体が崩れるようなビジネスモデルではなく、トラブル・変動に強い体質を目指すだろう……というのが、筆者の読みだ。特に、半導体を含めた技術投資がどの方向へ向かうのか、慎重に見極めたいと思っている。

 

●次回Vol.65-1は「ゲットナビ」5月号(3月24日発売)に掲載予定です。

 

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