デジタル
2018/5/2 12:30

【西田宗千佳連載】OPPO、ハイエンドAV機器ビジネス撤退の衝撃

「週刊GetNavi」Vol.66-1

ハイエンドAV機器の注目メーカーが突如撤退

4月3日、ハイエンドAV機器を開発・販売するOPPO Digitalは、突如、今後新製品の開発と製造を止める、と発表した。同社はコアなAVファン向けの高画質UHD BDプレイヤーである「UDP-205」や、ハイレゾオーディオ向けのUSB DAC「Sonica DAC」などの製品で知られており、AVファンの人気を集めていた企業だ。ソニーやパナソニックなどの大手家電メーカーほど身近ではないものの、ホームシアターなどの構築にこだわるファンに特化し、2010年代に入ってから、着実に業績を伸ばしてきた。直近の販売状況も決して悪いものではなく、「UDP-205」と「Sonica DAC」を軸に、ハイエンドファンから指名買いされるような状況にあった。

↑「UDP-205」

 

それが突如、今後のAV関連ビジネスを止める、と発表したことで、業界には衝撃が走った。現在販売されている商品の販売とソフトウエア改善、そしてサポートは継続されるものの、事実上、同社はAV市場から撤退することになった。これを受けて、前述の「UDP-205」は撤退発表直後から注文が殺到。日本法人には撤退発表後2日で2か月待ちという受注が発生しており、4月6日には、当面の新規受注が中止される事態となった。記事を執筆している4月上旬の段階では、今後の受注再開があるか、完全に停止されるかも明言されていない。

 

ディスクから配信への流れが米国では決定的に

同社がなぜ、好調だったAV事業を閉じるのか? 考えられる理由は2つある。

 

ひとつは、主力市場であるアメリカでのディスクビジネスが急速に悪化している、ということだ。すぐに引用可能な統計が手元にないため、印象論となって恐縮なのだが、ここ数年、アメリカの家電量販店に行くと、ディスク売り場が急速な勢いで縮小しているのが目に付いた。10年前にはDVDとブルーレイが数千種類売られていたものだが、今は店舗の片隅に、ブルーレイとUHD BDがあるだけだ。どこで話を聞いても「ネット配信」の話しか出てこない。4K・HDRによる高画質配信も実現しており、UHD BDほどではないにしろ、画質の要求にも応えている。縮小したとはいえ、日本での映像ビジネスはまだディスク抜きに成り立たないが、米国ではそうではない。

 

もうひとつは、OPPOという会社の軸足が変わってしまった、ということだ。OPPOというと、多くのゲットナビ読者の方は「スマホメーカー」だと思うのではないだろうか。両者は同じ流れを汲む会社であり、元々AV機器で成長した同社が、次に狙いを定めたのが「カメラを軸にしたハイエンドスマホ」だったのである。同社はこれまで、主にアジア市場を軸に戦ってきた。だが、今年は日本市場にも参入し、先進国市場へのビジネス拡大を進めている。そこではより多くのリソースが必要であり、「好調だが先行きは明るくない」AV事業を今のうちに閉じて、資産の有効活用を狙ったのでは……と見られている。

↑OPPO「R11s」

 

OPPOはなぜハイエンドAV事業を継続できないのか? そして、ディスクビジネスは今後どうなるのか? そのへんは次回のVol.66-2以降で解説する。

 

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