3)App Storeアプリにゲーム遊び放題のタブができる
ゲームアプリが遊び放題になるサブスクリプションサービス「Apple Arcade」も発表されました。こちらは、秋から150以上の国と地域で提供される予定です。具体的な国名は明かされませんでしたが、150以上となるとおそらく日本も含まれているでしょう。
具体的には、App Storeアプリのタブとして「Arcade」が新設され、購読者は対象のゲームアプリが使い放題になるという仕組みになります。広告やアプリ内課金がないことが特徴です。なお、料金など詳細は明かされていません。
Arcade内では、Appleが開発費用を助成してクリエーターとともに魅力的なオリジナルコンテンツを創っていくと言います。例えば、「ファイナルファンタジー」シリーズの生みの親である坂口博信氏、「Monument Valley」のケン・ウォン氏、「シムシティ」のウィル・ライト氏といった著名なクリエーターらのオリジナル作品もApple Arcadeで提供される予定です。
質の良いゲームアプリを世に出したいけれども、有料アプリでは手に取ってくれる人が減ってしまう。しかし、フリーミアムで収益を確保すると広告を導入したり、アプリ内課金を設けなくてはならず、ユーザー満足度が下がってしまう——。こんな悩みを持つクリエイターがどのくらいいることでしょうか。Appleとしては、サブスクリプション型のビジネスモデルを構築しつつ、ゲームクリエイターが本来作りたかったコンテンツを実現するための新たな道を提示したわけです。
4)動画視聴ためのプラットフォームができた
動画コンテンツに関しては、5月に「Apple TV」アプリが刷新されます。iPhone、iPad、Apple TV向けに無償で提供され、秋にはMac版も登場予定。「Amazon Fire TV」などの他社プラットフォームや、各社のスマートテレビでも利用できるようになります。
従来、Apple TVアプリは、オーストラリア、ブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、メキシコ、ノルウェー、スウェーデン、英国、米国の10か国でしか提供されていませんでしたが、今回は100以上の国と地域で提供される予定なので、日本初上陸の可能性も高め。
新しいApple TVアプリは、テレビ番組、映画、スポーツ、ニュースなどをまとめてチェックできるプラットフォームになります。例えば、iTunes Storeのコンテンツの購入やレンタルもここから一括して行えるほか、「hulu」や「Amazonプライム」といった他社サービスにもまとめてアクセス可能。見たいコンテンツを提供するサービスがバラけていた場合も、アプリを切り替えることなく楽しめるようになります。
Apple TVアプリの中における有料購読コンテンツは「Apple TVチャンネル」と「Apple TV+」に分かれます。「Apple TVチャンネル」では、例えば「MTV Hits」など、好みのチャンネルを購読できるようになっており、チャンネルは世界各国で追加される予定。一方の「Apple TV+」は、Appleによるビデオサブスクリプションサービスであり、オリジナルのコンテンツが見放題になります。ちなみに、料金や提供エリアなど「Apple TV+」についての詳細は秋に明らかになる見通し。
発表会場で感じたもの
Apple Card導入の背景もそうですが、社会問題の解決に向けた側面も絡んでいて、今回のイベントの裏に潜んだメッセージというか主張は複雑なものなのだな、と感じました。
例えば、Appleは今回の発表で繰り返しプライバシーを強調していました。「Apple News+」や「Apple Arcade」「Apple TV+」では、どんなコンテンツを利用したのかは、Apple側で把握しないと断言しています。またApple Cardでは、どんな支払いに使われたのかについて、AppleだけでなくゴールドマンサックスやMastercardも把握できないようになっているそうです。こうした話題が出るたびに会場で拍手が起きていたことも印象的でした。
そう考えると、ニュースやゲームのサブスクリプションも、広告に依存した収益モデルをAppleだけでなく、クリエイターの段階からも脱するという意味でひと役買う仕組みと言えます。もちろん収益性という面で、サブスクリプション型のビジネスモデルが優れていることは先駆的な企業達が証明しています。しかし、それを導入する裏には、もしかすると「広告に依存しないぞ」というAppleらしいメッセージも絡んでいるのかもしれません。