デジタル
2019/11/14 7:00

【西田宗千佳連載】日本でハイエンドスマホは売れなくなるのか

Vol.84-4

 

分離プランの導入によって、日本でもハイエンドスマホに高額な割引がつくことはなくなった。結果として、スマホの料金は高くなる。

 

となると、ハイエンドスマホは売れづらくなるのだろうか?

 

答えはイエスでありノー、という微妙なところになる。

 

10月に入っても、iPhoneのようなハイエンドスマホが売れなくなっているわけではない。なぜなら、2年後の買い取りを前提としたプランは存続しており、その場合、スマホの購入価格はそこまで高くならないからだ。

 

ただしこれは「買い取りが前提」の場合。2018年12月にMMD総研が公開した調査によれば、日本の消費者のうち52.4%が「中古でスマホを買い取ってもらうことになんらかの抵抗感がある」と答えている。この比率は高くなっていくだろうと想定されるが、「ハイエンドスマホを売ってハイエンドスマホを買う」というサイクルを好まない人もいるのは間違いない。

 

そうすると、自然と主流のスマホの販売価格は下がっていくことになる。一方、同じ調査では「中古スマホを買うことに抵抗がある」という人が74.3%にものぼるため、中古として流通するハイエンドスマホの利用者が上がるとも言い難い。ということは、購入するスマホの価格を下げ、「2万円以内」とされている分離プランでの携帯電話事業者からの補助額からあまり離れない額の製品を選ぶ人も増える……ということになる。

 

大手携帯電話事業者も同じ結論に達している。そのため、「おトクで機能としては十分」な機種を主軸に据えつつある。2019年秋のモデルで具体的に言えば、シャープの「AQUOS sense 3」とサムスンの「Galaxy A20」だ。これらの機種は高性能ではないが、日本のスマホユーザーが求めるものを満たしており、非常にお買い得なモデルになっている。

 

Apple iPhone 11

 

iPhoneやGalaxy Note、Xperiaなどを買い続ける人は一定数いて、その人は中古買い取りをうまく活用する一方で、ミドルクラス以下の「お買い得スマホ」を選ぶ人がいる。その間のクラスを選ぶ人は減っていくのではないか、というのが筆者の読みだ。そして、その「中間クラス」を選ぶ人は、スマホの目利きに長けた人で、SIMロックフリーの機種を選び、ハイエンドの場合と同様に中古販売店なども活用していくだろう。そして、当面MVNOの利用者は、この「中間クラス」と「一番安い端末」が主戦場になるだろう。

 

結果的に、ハイエンドスマホは「ゆっくりと減っていく」可能性が高い。だが、ハイエンドスマホが企業にとって「商品として魅力的」であるうちは、ハイエンドスマホをなんとか安く売る努力が継続され、減少量は一定に留まるのではないだろうか。

 

というのは、今後出てくる5Gはハイエンドスマホが中心になるからだ。日本で5Gを急速に普及させるには、ハイエンドスマホを売らなければならない。だからこそ、大手携帯電話事業者は「ハイエンドスマホを安く売る」ビジネスから降りることができないのだ。

 

この一点を考えても、総務省が指導した分離プランは実情に合っていなかったことがわかるのではないだろうか。

 

 

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