5G(第5世代移動通信システム)関連の重要なキーワードとして「ローカル5G」が話題になっています。
そもそも「ローカル5G」って何?
「ローカル5G」とは、所有する建物や土地の範囲内において、所有者自らが免許を取得して構築する自営の5Gシステムのこと。自身で構築するのは難しい場合が多いため、代理の企業などにシステム構築を依頼することも認められています。
<ローカル5Gのメリット>
●キャリアが手をつけないエリアでも独自に導入できる
●用途に即してネットワークをカスタマイズできる
●接続を限定しやすくセキュアな通信が可能
本格的な導入開始は2020年以降となる予定
ローカル5Gは、5G規格の制定時から活用が視野に入れられており、周波数帯としては4.66~4.8GHzおよび28.2~29.1GHzの使用が想定されています。なかでも28.2~28.3GHzの100MHz幅は、現在先行して制度整備が進行中。すでに屋内外で利用できると確定しています。ローカル5Gに関する電波利用料は1基地局あたり年額2600円。4Gシステムを併用しないSA(スタンドアローン)方式の仕様が固まるまでは、4G設備も別途必要です。
今回はローカル5G事業に取り組むNECに、目指す場所を聞いてみました。
【答えてくれた人】
NEC
ネットワークサービス ビジネスユニット
新事業推進本部
川村勇輝さん
同社の川村勇輝さんは、ローカル5Gのメリットについてこう話します。
「例えば、建設工事の現場で低遅延性が求められる遠隔制御を実現したい場合、大手キャリアがカバーしない山奥でも、条件に適合すれば、ローカル5Gを用いて事業者の意向で必要な通信環境を構築できます。また、データのアップロードを重視するなど、用途に合わせてネットワークをカスタムできる点や、外部から隔離した安全な5G環境を構築できる点などもローカル5Gならではの利点と言えます」
これらの特徴を持つローカル5Gは現在、建設現場やスタジアムのほか、物流倉庫や空港、港湾、病院などから引き合いがあるといいます。
ローカル5Gを管轄する総務省は、残りの周波数については2020年以降に割り当てることをすでに発表しています。NECでは、今年度から来年度にかけて、技術ビジネス視点での実証実験の実現と効果検証を進めようとしている段階とのこと。
「現在は、パートナー企業とローカル5Gのソリューション化を進めています。各種の制度化が完了し、本格的にローカル5Gのシステム製品などが提供可能になるのは来年度以降の予定です」(川村さん)
ローカル5Gは、ビジネスの現場で現在見えている課題や将来的に予測できる課題を解決する助けになると、各所から期待されています。「ソサエティ5.0」実現のカギを握る要注目の技術なのです。
<ローカル5Gでできること>
ローカル5Gが構築されると実際になにができるのでしょうか。ここでは、街の各施設においてローカル5Gがどのように機能するのか、ユースケースを見ていきましょう。
【CASE 01】会場で競技映像を即時配信
スポーツを観戦するスタジアムでローカル5Gを使うと、複数アングルの映像や競技に関する情報を加えた映像を、専用デバイスへと安定的にリアルタイム配信できます。将来的には、メガネ型AR機器を活用した観戦満足度の向上施策などが期待されます。
【CASE 02】自立&遠隔施工が可能に
建設現場では、5Gを利用した自立運転や遠隔運転の導入が期待される。危険と隣り合わせの現場でも安全性を確保でき、熟練した技能者不足も補えます。局地的にローカル5Gを構築することで、最新のネットワークを利用しづらい場所にも対応可能です。
【CASE 03】センサーを駆使した最新農業
農業従事者が減り続けるいま、IoT機器を活用した次世代農業のあり方が模索されます。ローカル5Gを用いて広大な農地に多数のセンサーなどを配置すれば、作物の状態をデータで把握可能、作業をさらに効率化できます。
【CASE 04】無線化で作業効率を向上
ローカル5Gで工場内を無線化することで、生産ラインを柔軟に変更しやすくなり、多種少量生産への対応が容易になります。また将来的に、ARを活用した遠隔作業支援やAGV(無人搬送車)などのロボットによる自動化といった作業効率の向上も期待されます。
【ローカル5Gのココに期待!】
「キャリアの整備を待たずいち早く5Gを導入できる」(モバイルライター・井上 晃さん)
5G商用サービスの開始は2020年ですが、最初は都市部に限定されます。現在の4Gのように全国展開が完了するには、4~5年かかる想定。真打ちのSA基地局の展開にも時間はかかるでしょう。5Gシステムをいち早く取り入れたい企業にとってローカル5Gは重要な選択肢になります。