デジタル
2020/3/7 7:00

【西田宗千佳連載】REGZAはハイエンドとそれ以下で「半導体戦略」に違いあり

Vol.88-3

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「2020年のテレビ市場」。なかでも製品が登場しはじめた8Kテレビの動向と、各社の戦略を紐解く。

 

 

この原稿を書いている2月末現在、日本でシェアの大きいトップ5社のうち、日本向けにテレビ製品を発表済みなのはソニーと東芝(REGZA)だ。このうちソニーは、超ハイエンドといえる8Kの「Z9H」を発表したのみで、ちょっと特殊だ。一方、REGZAは、価格を抑えた液晶モデルのみを発表している。REGZAの本命ともいえる有機ELモデルは、もう少し後に登場するだろう。このようなやり方になっている理由はシンプルで、2月から6月にかけたいわゆる「春商戦」の場合、売れるのはハイエンドモデルよりも価格重視のモデルだからだ。他社は昨年モデルの価格を下げるなどして対応しているが、REGZAは新モデルを用意し、「ハイエンドな有機EL」と「液晶」を明確に分ける戦略に出ている。

 

そして、精査していくと、同じREGZAの液晶モデルのなかでも製品によって特質が違うことも見えてくる。

 

REGZAは「独自開発の高画質LSI」を使ってテレビを作ることで知られている。ソニーやパナソニックも似た戦略ではあるが、REGZAはそれを初期から行い、より戦略的にアピールしてきた。

 

最新モデルでも新LSIを採用しているのだが、液晶モデル最上位の「Z740X」と、ミドルクラスにあたる「M540X」、ハイコストパフォーマンスモデルである「C340X」では、使っているLSIの素性がかなり異なる。Z740Xに搭載されているのは、従来から同社がハイエンド機種に採用してきた、まさに「オリジナル」のLSIと汎用LSIを組み合わせた2チップ構成の「レグザエンジンCloud PRO」。だが、C340Xに使っているのは、他のテレビメーカーも使う汎用のLSIに、REGZAで培われたソフトを組み込んだ「レグザエンジンG」である。ミドルクラスの540MXも、「レグザエンジン G」より大規模な汎用LSIを採用した「レグザエンジンCloud」になっている。

REGZA「Z740Xシリーズ」

 

 

実のところ、テレビの画質を決める部分は多くがソフトウェアのノウハウで出来上がっており、汎用LSIにソフトを組み込んだものでも十分な差別化はできる。とはいえ、差別化を徹底し、より画質面でのチューニングの幅を広げるには、オリジナルの強力なLSIとのセットが望ましい。そのため、一見「Pro」がついているだけに見えるが、「レグザエンジンCloud Pro」を搭載したZ740XとM540X&C340Xとでは、画質チューニング関連の機能に違いが出ている。これは筆者の予想だが、有機ELを採用した上位モデルでは、Z740Xと同じような汎用+オリジナルLSIという2チップ構成を採るのではないだろうか。

 

正直、最高画質や付加価値にこだわらないなら、M540X やC340Xのコストパフォーマンスはかなり良好だ。しかし、テレビは長く使うものである。特に今年のREGZAは、クラウドを介してテレビ放送の画質を上げていくる「クラウドAI高画質テクノロジー」を搭載する。この機能はZ740XとM540Xにのみ、今年の6月以降にアップデートの形で提供される。だから、上位機種のほうがよりオススメだし、どうせ買うなら、M540XよりもZ740Xのほうがいい、と筆者は思うのだ。

 

では、今年のテレビについて、「画質以外」の要素はどうなるのか? ゲームを考えると、考慮しておくべき機能が増えてくる。それがなにかは、次回のウェブ版で解説する。

 

 

 

 

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