デジタル
スマートフォン
2020/3/27 21:30

Googleアプリが使えない…でもさほど困らなかった! SIMフリーの5Gスマホ「HUAWEI Mate 30 Pro 5G」レビュー

新型コロナウイルスの感染が世界中に広がり、不安な状況が続く2020年の春ですが、通信業界では大きなムーブメントが起きています。いよいよ、日本でも5Gの商用サービスが始まりました!

 

3月下旬には、3大キャリアが相次いで5G対応スマートフォンを発表。Galaxy、AQUOS、Xperiaなど、お馴染みのブランドが名を連ねました。これまで大手キャリアには参入していなかったOPPOもauとソフトバンクに端末を供給。昨年12月に日本市場に参入したばかりのXiaomiも、auから5Gスマホを発売します。

 

そんな中、本来であれば、3大キャリア各社のラインナップに入っていたかもしれないファーウェイは、SIMフリーの5Gスマホ「HUAWEI Mate 30 Pro 5G」を発表しました。ご存知の方も多いと思いますが、現在、米国政府のファーウェイに対する禁輸措置によって、ファーウェイの製品にはGoogleのアプリケーションが入れられません。

↑ファーウェイが3月28日から先行発売する「HUAWEI Mate 30 Pro」

 

ただし、昨年5月頃までに発売された製品にはGoogleのアプリがプリインされていて、アップデートもできます。日本向けの製品で言えば、昨年11月に発売された「HUAWEI nova 5T」までは問題なく、フツーのAndroidスマホとして使えます。

 

なお、ファーウェイが米国企業の製品・サービスを全く使えないというわけではありません。OSはGoogleが主体となって開発したAndroidを引き続き搭載しています。マイクロソフト社が開発した翻訳アプリやOfficeアプリもプリインされています。今後の米中関係によっては、再びGoogleのアプリが使えるようになる可能性もあるでしょう。

 

ファーウェイは、Googleが使えなくても、スマホを快適に使える環境を整えるべく、「Huawei Mobile Service(以下、HMS)」の構築を急いでいます。これは、ファーウェイ向けのアプリのプラットフォームで、アプリは「AppGallery」というストアからダウンロードできます。「Google Mobile Service(以下、GMS)」および「Google Playストア」に代わるものと言っていいでしょう。

↑AppGalleryは170か国以上で利用でき、月間アクティブユーザー数は4億人を超えるという

 

前置きが長くなりましたが、そんなGoogleアプリが使えないMate 30 Pro 5Gをいち早く使ってみました。

 

前から見ても、後ろから触れても超ハイエンド

ファーウェイは「P」シリーズと「Mate」シリーズの、2つのフラッグシップがあります。どちらも世界的な老舗メーカー・ライカが監修したカメラを搭載し、デザインにもこだわったハイエンドモデルを展開。Mate 30 Pro 5Gは、Mateシリーズの最新モデルかつ最上位モデルで、5Gにも対応しているモデルです。要するに、ファーウェイの最高峰モデル。

 

約6.53インチの有機ELディスプレイは、左右端にカーブが施されて、もはやべゼルは見えません。音量ボタンはなく、エッジをタップすると、音量を調整できるバーが表示される仕組み。ディスプレイの上には通話用のスピーカーさえなく、スピーカーは画面内に組み込まれています。さらに、画面内には指紋センサーも搭載。ちょっと触れただけで先進性がわかる仕様です。

↑ディスプレイの左右は、側面に回り込むようにカーブしている

 

↑側面をタップすると、音量調節バーが表示される

 

背面パネルには「ヴィーガンレザー」を採用。天然由来の素材を使った人工皮革で、本物のレザーよりは硬く、ザラザラとした独特の手触り。手にした時に滑りにくいことと、指紋が付きにくいことがメリットと言えるでしょう。

↑カラーはこのオレンジのみ。カメラ部は「Halo Ring」という新しいデザインを採用

 

AppGalleryであのアプリを探してみたが……

ハイエンドであることがひと目でわかる外装ですが、気になるのは “中身” ですよね。先述の通り、Mate 30 ProはGMSには対応していません。電源をオンにしてホーム画面を表示させても、そこには「Playストア」はありません。「Chrome」も「Gmail」も「マップ」もありません。その代わりにAppGalleryというアイコンがあります。

↑ホーム画面のAppGalleryをタップすると、アプリを検索・購入できるストアに進む。事前にHUAWEI IDの登録が必要

 

↑ほかのアプリストアと同じように、キーワード入力やカテゴリからアプリを検索できる

 

AppGalleryはHMSのアプリストアで、iPhoneのApp Storeや、AndroidスマホのPlayストアに相当するものです。ちなみに、従来のファーウェイ端末でもAppGalleryは利用できます。しかし、多くの人はAppGalleryは使わずにPlayストアだけを使っているはずです。アプリの数も種類もPlayストアのほうが充実していますからね。

 

AppGalleyにアクセスし、どんなアプリを入手できるかをチェックしてみました。まず、多くの人が必要とするであろうLINE、Twitter、Instagramなどを検索してみましたが、見つかりませんでした。アプリの数は結構あるものの、中国語や英語で説明されているアプリが多く、日本向けのアプリはまだ少ない印象です。しかし、メルカリやNAVITIME、ウェザーニュースといった、日本で人気のある定番アプリも結構あったので、今後どこまで増えていくかを注目したいところです。

↑人気の「メルカリ」アプリは、すでに配信されていた

 

↑「TikTok」も使える

 

↑日本語キーボードはプリインされているが、「Simeji」を使うことも可能

 

ちなみにLINEは、海外ではLINE Liteというアプリが配信されているようです。これは、携帯電話番号の認証がなくても利用できる簡易版アプリで、パソコン版のLINEアプリのように、メイン端末で使っているアカウントを併用できます。ぜひ、日本でも配信してほしいですね。

 

Googleアプリがなくても、さほど困らなかった。その理由は?

Gmailを使うには、どうしたらいいのか? Mate 30 Pro 5Gには「メール」というアプリがあり、そこにGmailのアカウントを設定できました。

↑プリインの「メール」アプリは、Gmailのアカウントも登録できた

 

Googleマップ、Googleフォト、Googleドライブを使うには、どうしたらいいのか? 実は、筆者はこれらのサービスを多用しているので、最も気になるところでした。アプリがないので、「ブラウザ」からアクセスして、ウェブ版を使わなくてはなりません。さぞかし使いにくいだろう、反応が遅いだろう、と覚悟していたのですが、実際には、思っていたほど使いにくくは感じませんでした。画面の視認性はアプリと遜色はなく、Googleマップは位置情報も反映されます。Googleフォトは、撮影した写真の自動同期はできないようでしたが、写真を選択してアップロードすることはできました。Googleのサービスをパソコンでも使っている人は、パソコンで利用する場合に近い操作性で利用できると考えてよいでしょう。

↑Googleマップはブラウザで利用可能。現在地情報の取得やルート検索もできる

 

↑Googleフォトもブラウザで利用可能。Googleアカウントでログインして、画像のアップロードもできる

 

↑YouTubeもブラウザで見られるので、不便は感じなかった

 

TwitterやFacebookも、ウェブ版を利用できました。Instagramはウェブ版には機能制約があるので、使いにくいでしょう。筆者は、あまりゲームはしないので、ゲームアプリは深くはチェックしなかったのですが、日本で人気のあるタイトルは少なく、ゲーム好きの人にも向かないと思います。

↑アプリをダウンロードしなくても、ウェブ版を素早く開いて使える「Quick App」という機能があり、日本向けのアプリはすぐに開けるように整理されている

 

↑これまで使っていたスマホからデータを移すPhone Cloneという機能があり、これによってアプリを移すことも可能。ただし、新端末での動作保証はされないので、裏技のようなものと認識すべきだろう

 

カメラは “誰もが失敗しない” レベルに到達

HUAWEI Mate 30 Proの最大のセールスポイントはカメラです。従来モデルから引き続き、ライカの監修を受けて開発したカメラを搭載しています。

 

前モデルのMate 20 Proはトリプルカメラでしたが、Mate 30 Pro 5Gはクアッドカメラへと進化。円形にデザインされた背面のカメラ部には4つのレンズを搭載。広角(約4000万画素)+超広角(約4000万画素)+望遠(約800万画素)+3D被写界深度カメラ、という構成です。

↑ライカ監修の4眼カメラを搭載。前モデルよりも暗所撮影に強くなり、動画の撮影性能も向上

 

超広角カメラは「シネマカメラ」という名称で、ウルトラスローモーションや超広角のタイムラプス撮影などにも用いられます。望遠カメラは光学3倍で、5倍までは画質がほとんど劣化しないハイブリッドズームで撮影でき、最大30倍のデジタルズームで撮影できます。

 

まずは、カメラに関しては素人の筆者が撮った写真をご覧ください。

↑咲き始めて桜を撮影。風が強い日だったが、ブレずに撮れて、背景はナチュラルにぼけた

 

↑「夜景」モードで撮影。細部までパキンとした画質で撮れた

 

↑室内でスイーツを撮影。かなり近づいてもピントが合う

 

↑ワンちゃんを撮影

 

↑超広角で撮影

 

↑広角(1×)で撮影

 

↑光学3倍(3×)で撮影

 

↑ハイブリッド5倍(5×)で撮影

 

↑デジタル30倍(30×)で撮影

 

夜景以外はAIによる被写体・シーン認識をオンにしたままで撮りましたが、常にそのままでキレイな画質で撮れる印象。実は、前モデルのMate 20 Proでは、撮影状況によっては、やや濃い色で写ることがありました。また、昨年9月に発売されたHUAWEI P30 Proでは、画像センサーが一般的な「RGGB配列」から「RYYB配列」に変更されたためか、黄色が強く出ることもありました。今回のMate 30 Pro 5Gは、照明の種類などに関係なく、いつでもバランスのよい色・明るさで撮れる印象です。

↑モノクロでも、いい雰囲気で撮れる

 


↑手持ちで歩きながら動画を撮った作例。手ブレ補正機能がよく効いて、画面の揺れが気にならない

 

カメラの撮影画質は、いま日本で買えるスマホの中でトップクラスと言ってもいいでしょう。実際、カメラの性能を評価する有名なウェブサイト「DxOMark」で第3位の評価を得ています。ちなみに、Mate 30 Pro 5Gのスコアは123点で、OPPO Find X2 ProとXiaomi Mi 10 Proが124点で同点1位です(2020年3月25日現在)。中国メーカー勢、すごいですね。

 

フツーの人にはすすめられないけど、僕は予約しました!

Mate 30 Pro 5Gの市場想定価格は12万8800円(税別)。3月28日以降に、東京と大阪で先行発売(100名限定)をした後、4月中旬から一般発売されます。

 

ファーウェイによると、日本と中国のキャリアの5Gには接続できる仕様になっているとのことで、ドコモ、au、ソフトバンク各社の5G対応SIMを挿すと、5Gの超高速通信を利用できます。ですが、MVNO(格安SIM)は、まだ5Gサービスを提供していないので、キャリアの5Gプランを契約する必要があります。DSDSに対応しているので、5GのSIMと4Gの格安SIMの両方をセットして、使い分けることもできます。

↑SIMスロットには2枚のnanoSIMをセットできる。なお、microSDは非対応で、その代わりに「HUAWEI NMカード」というメモリカードを装着できる

 

↑5Gはソフトウェアのアップデート後に対応予定。もちろん、3Gや4Gにも対応している

 

実は、筆者はこの端末をすでに予約済みです。現状では、5Gに対応する唯一のSIMフリースマホで、デジカメとして使うだけでも価値がありそうなので、買うしかないなぁと。“Googleがない世界” ってのも体験してみたいですしね。

 

でも、スマホを1台しか持ち歩かない、多くの人にはおすすめできません。HMSは、まだ発展途上なので、使い慣れたアプリが使えなくなるでしょうし、これから流行るアプリが使えない可能性も大きいですからね。

 

*掲載した情報は2020年3月24日に確認したものです

 

【お詫びと訂正】

初出時、本文内に「今後の日中関係によっては、再びGoogleのアプリが使えるようになる可能性もあるでしょう」と記載しておりましたが、「米中関係」が適切な表現となります。誤った表現をしてしまったことを深くお詫び致します。

 

【フォトギャラリー】※画像をタップすると閲覧できます。