デジタル
2020/7/15 7:00

【西田宗千佳連載】「ビデオ会議需要」はYouTuberの後を追いかける

Vol.92-4

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、ビデオ会議。新型コロナウィルスの流行によって、急速に拡大した新しい働き方の背景を解説する。

 

新型コロナウィルス禍で、我々がデジタル機器に求める要素も変化を余儀なくされた。短期的な影響としては、屋外に持ち出して楽しむための機器の売り上げにはブレーキがかかり、自宅で楽しむための製品が良く売れている。そして、「スマホがあればPCはいらない」という風潮にも変化の兆しが広がっている。テレワークや教育用途では、やはり「スマホだけ」で対応するのは難しいからだ。そして、前回の記事で述べたように、カメラに対する需要も変化してきている。

 

だが、「PCがあると利便性が高い」「一眼カメラで自撮り動画を撮る」「自分のことをビデオで撮る時には良いマイクが必要」といった意識は、なにもテレワークが生み出したわけではない。

 

こうした機材の活用法は、この数年間、「YouTuber」や「ゲーム実況者」といった人々が先に開拓していたジャンルなのだ。

 

YouTubeで彼ら・彼女らの動画を見る行為は、すでに一般化している。5年前であれば、スマホやPC内蔵のカメラで撮ったシンプルな動画でも問題なかったが、いまやライバルの配信者が増えたこともあり、「いかに見やすく、聞きやすい動画を効率よく作るのか」という点が重要になっている。放送局のように大規模な機器を使うわけでもなく、いかに身近なデジタル機器で画質・音質をあげるか、ということが重視されているのだ。カメラはもちろん、マイクやヘッドホンまで、試行錯誤の幅は広い。そもそもこうしたフィールドでは、「デジタル機器のレビュー」が人気を集めやすい、という背景もあったが、配信者たちが画質・音質の向上に努力する試行錯誤の流れ自体も1つのコンテンツと化しており、人々を楽しませていた部分はあると思う。

 

ソニー  VLOGCAM ZV-1/実売価格9万9900円/発売中

 

そうした「動画を作って積極的に公開する」ための製品の市場は、ゆっくりとではあるが無視できない規模に拡大していた。初期のゲーム実況者やYouTuberが話題になり始めた5年前はともかく、いまは各種周辺機器市場において、「動画配信向け」という要素は重要なものになっている。

 

そういう観点で言えば、新型コロナウィルスの影響でビデオ会議が増え、そのためにデジカメやマイク、ヘッドホンといった製品に注目が集まったとき、結果として、この数年YouTuber需要が掘り起こしていたジャンルを追いかけることになった……ということができる。

 

ソニーが「VLOGCAM ZV-1」を発売して話題になったが、あれはそもそも今回の新型コロナ需要ではなく、まさに「YouTuberが拡大した動画撮影需要」に向けたものだった。それがタイミングよく市場に出たことは、ソニーにとって(言葉は良くないが)不幸中の幸い、という部分があっただろう。

 

PC内蔵カメラの改善など、本格的な「ビデオ会議需要に向けた製品改善」はこれからだが、当面はYouTuberが開拓した需要とノウハウを辿る形で、ビデオ会議向けのガジェット市場が盛り上がるのではないかと考えている。

 

 

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