手ごろな価格で性能十分な家電を多数手がける“バリューブランド”のルーツや、製品開発にかける想い、アプローチ方法についてインタビューを行う企画。今回は、シャオミのヒット商品を紹介しながら、同社の成長の経緯とモノ作りの哲学に迫る!
※こちらの記事は「GetNavi」 2021年6月号に掲載された記事を再編集したものです。
社名:Xiaomi Corporation
創業:2010年4月
本拠地:中国・北京
ヒット家電第1号:Mi 1(Xiaomi Phone)
2010年の創業後、わずか4年で中国のスマホシェア1位を獲得するほどの驚異的な成長を遂げる。IoT家電なども販売し、現在ではスマホの世界シェアは第3位。日本市場には2019年に本格参入。ハイコスパなモデルを中心に展開している。
【今回ピックアップする製品】
ハイエンド機同等のカメラとディスプレイを搭載
シャオミ
Redmi Note 10 Pro
実売価格3万4800円
120Hz駆動の6.67型有機ELディスプレイや、1/1.52型センサーを用いた1億800万画素カメラなど、ハイエンド機並みのスペックを誇る4G対応ミドルクラス端末。デュアルスピーカーを搭載し、ボディ側面には指紋センサーも備える。
SPEC●プロセッサー:Snapdragon 732G●ストレージ:128GB●メモリ:6GB●ディスプレイ:6.67インチ有機EL(2400×1080)●サイズ/質量:約W76.5×H164×D8.1mm/約193g
【開発ストーリー】ユーザー視点でメリットを熟慮して仕様を研ぎ澄ます
世界的な人気を誇るRedmiシリーズで初めて有機ELディスプレイを搭載した本機。このディスプレイは、ユーザーメリットを考慮し、いたずらに解像度を追求するのではなく、操作感に直結するリフレッシュレートの向上を選択したという。こうした様々な取捨選択を適切に行うことで、ミッドレンジ帯の価格帯でフラッグシップ級の機能を実現した。
【この人に聞きました】
Xiaomi シニアPRマネージャー
齊木更沙さん
エンタメ業界での広報を経て、2020年7月よりXiaomi Japanの広報を担当。同社の扱うプロダクト全般を熟知する。
伝説的な創業者によるマンガのような成り立ち
創業は2010年と、シャオミの歴史は比較的短い。しかし、同社はわずか4年で中国ナンバーワンのスマホメーカーへと急成長し、現在では世界展開を進めている。躍進する中国を象徴するような、その足取りの背景には、立志伝中の人である同社CEO雷軍さんの思想と戦略があったと、シニアPRマネージャーの齊木さんは語る。
「携帯電話業界に一歩も踏み入れたことがなかった雷軍は、まず『世界で一番の携帯電話を他社の半額で提供して皆が買えるようにする』という目標を掲げました。その秘策は、“トライアスロン型”のビジネスモデルにあります。これは、一つの企業が①ソフトウェア②ハードウェア③インターネットサービスを提供するというもの。販売チャンネルをオンライン化し、最小限のマーケティングでインターネットサービスを提供するという、当時のインターネット業界にあったマインドセットを基に考案したものです」(齊木さん)
これを実現するために、雷軍さんはOSの開発から着手。こうして現在も続く同社独自のOSであるMIUIが誕生した。MIUIはインターネット上で徐々にファンを獲得。ローンチから1年も経たずにユーザー数は30万人を突破したという。しかし、同社初のスマホであるMi1の発売までは、一筋縄ではいかなかった。
「当初、Mi1は1500人民元(約1万8000円)で発売する予定で、販売台数は30万台程度を想定していました。ところが、パーツの供給元にすべて業界でトップに君臨しているサプライヤーを選んだ結果、予算がオーバー。販売価格を2000人民元(約2万4000円)程に変更しないと大幅な赤字になることが判明したんです。当時、中国国内のメーカーが販売しているスマホの平均価格は700人民元(約8400円)程度。Mi1を1999人民元で発売したとして、高すぎて1台も売れないかもしれないと、雷軍は眠れない夜を過ごしたそうです。ところが発表会当日、雷軍が会場に到着すると、会場は参加者で溢れかえっており、ステージに上がることもままならないほど混み合っていました。壇上で1999人民元の価格を発表すると観客から30秒間ほど続く拍手が沸き起こりました。それは『プレミアムなデバイスを手ごろな価格で』という方針が受け入れてもらえた瞬間でした。発表会終了後、Mi1は30万件のプレオーダーが入り、最終的に700万台売れました。以降もこの方針は変わらず、2013年に誕生した新ラインのRedmi Noteシリーズは世界での累計販売台数で2億台を超えるほどのヒットになっています」(齊木さん)
その後、成長を続けたシャオミは、2018年に香港証券取引所に上場。その直前、雷軍さんは決定的なステートメントを発表した。それが「ハードウェア事業は純利益5%を超さない」という方針だ。これは、各方面からの圧力が加わる上場後も、適正な価格で高品質な製品を作り続けるためのもので、以後、今日に至るまで、この約束は守られている。
「スマホ×AIoT」を中核戦略にさらに成長
現在のシャオミは「Smartphone×AIoT」を中核戦略として、生活家電を含む2000を超えるIoTデバイスを販売している。日本でも2020年秋にMi スマートバンド5が発売されたが、これは同社の製品群のほんの一部だ。
「スマホとAIoT機器は共生関係にあります。今後、AIやインテリジェントなコネクティビティの進化につれて、その重要性は増加し、未来のライフスタイルを構築していくでしょう。私たちはこうした業界でリーダーシップを保持できるように、この先5年において70億USドルを投資する予定です。日本ではまだまだ展開できていないものが多いですが、今後にご期待ください」(齊木さん)
【Miスマートバンド5】
【Mi 空気清浄機 3H】
【Mi ハンディクリーナー ミニ】
【バリューブランドの真髄】コスパ品だけでなく付加価値アイテムも得意
日本ではまだシャオミは「コスパ重視のメーカー」と考えられがちだ。だが、それは同社の一面でしかない。世界的に熱狂的なファンを持ち、ハイエンド製品も精力的に開発・販売するメーカーでもあるのだ。グローバルでは、1/1.2インチセンサーを搭載した端末や最先端の折りたたみスマホなどもラインナップ。こうした製品の日本投入も待たれる。
【Mi Mix Fold】
【Mi 11 Pro】