デジタル
2021/6/7 19:50

【西田宗千佳連載】有機ELやミニLEDを「クリエイター向け」に使い始めたPCメーカー

Vol.103-3

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは、「ミニLED」。新iPad Proの12.9インチモデルで採用されたことで注目を集める同技術を深掘りする。

↑Apple 12.9インチ iPad Pro/12万9800円~

 

当連載の前回で述べたように、ノートPCやタブレットの場合、ディスプレイのコントラストを改善したいなら、別にミニLEDを使う必要はない。有機ELを使えばいいのだ。調達数量や調達価格の点で課題はあるが、それはメーカーの考えること。消費者としては、「ミニLEDのiPad Pro以外にも、高画質・高コントラストなディスプレイを採用したIT機器はある」という点が重要である。

 

現在、有機ELパネルを使ったノートPCの多くは「クリエイター向け」として販売されている。正確にいえば、ゲーミングPCの上位モデル、もしくはバリエーションモデルとして「クリエイター向け」のブランドで販売されていることが多い。

 

なぜそうなるのかというと、有機ELのパネルを採用した場合、ゲーマー向けのトレンドからは外れる可能性が高いからだ。

 

現在のゲーミングPCのトレンドは、「ディスプレイの高フレームレート化」にある。ゲームにおける高画質化、というと4K化を思い浮かべる人も多いと思う。だが、ゲームの体験においては、解像度よりもフレームレートを優先して「動きをヌルヌルにする」ことのほうがプラスである場面は少なくない。FPSなどで敵と戦っている場合、フレームレートが高いと相手に弾を当てやすくなるという結果が出ており、解像度よりも高フレームレートのパネルを選ぶゲーマーが多いのだ。液晶の場合、毎秒120コマや144コマといったディスプレイが多数存在するが、有機ELの場合だとほとんどが60コマまで。120コマ表示に対応すると価格と消費電力が跳ね上がる。

 

一方で、クリエイター向けのモデルならば60コマ表示でも十分だ。むしろ解像度やコントラストの高さ、黒の締まりなどに注力したディスプレイが好まれる傾向にある。

 

そのため、ハイエンドゲーミングPCと同じ設計を使ったうえで、ディスプレイを4Kの有機ELにしてクリエイター向けに仕上げるケースが多くなっているのである。

 

ただ、こうしたモデルは2020年後半あたりから数が少々減ってきている。2018年から2019年にかけて、ディスプレイメーカーの事情でPC向け有機ELパネルが一時的に多く供給された時期があり、そこを狙って各社が製品化したのだが、いまは確固たる狙いがないと製品化が難しくなっていると思われる。そもそも、単価が高く収益性は高いものの、たくさん売れるモデルというわけではない。

 

モバイル向け有機ELディスプレイパネルの生産元であるサムスンディスプレイは、2021年3月から「毎秒90コマ」の表示に対応したPC向け有機ELパネルの量産を開始し、また、ビデオ会議用のカメラを「ディスプレイの裏」に埋め込んでしまう「UPC(Under Panel Camera) OLED」のコンセプトも発表している。2021年後半以降、こうしたディスプレイを使った「有機EL採用PC」が増えてくる可能性はある。

 

また、MSIのようにミニLED搭載ノートPCを作っているメーカーや、ASUSのように「クリエイター向けミニLED採用PCディスプレイ」を作るメーカーもある。

 

そういう選択も含め、「ハイエンドPCにコントラストの高いディスプレイを採用する」という流れは、今後加速する可能性が高い……と筆者は予測している。

 

では、高画質ディスプレイを採用する製品の典型例である「テレビ」はどうか? そのあたりは次回解説したい。

 

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