デジタル
2022/7/11 11:15

【西田宗千佳連載】今年の有機ELテレビは「色」に注目、その理由とは

Vol.116-3

 

本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは2022年のテレビ動向。有機ELテレビの画質の変化について解説していく。

↑真ん中がサムスンディスプレイを採用した、ソニーの最上位モデル「A95K」

 

今年のテレビ、特にハイエンドな製品は「画質が変わる」と前回の連載で解説した。その中核となるのは、やはりディスプレイパネルの世代が大きく進化したことにある。

 

有機ELについては、特に伸びしろが大きい。

 

これまでの有機ELテレビは、利用しているディスプレイパネルがほぼ、LGディスプレイ製だった。LGディスプレイは品質改善の努力を続けており、毎年、画質が向上したパネルが出てきていた。

 

今年は特に、緑の発光効率が向上したことが大きい。テレビなどの「発光するディスプレイパネル」の場合、光の色は赤・緑・青の3原色を混ぜて表現されるが、人間の目が特に強く反応するのは緑。そのため、緑の明るさが映像全体の明るさに影響する。

 

LGディスプレイの有機ELは、白く発光するパネルの上に赤・緑・青のフィルターを重ね、白のまま発光する部分も残した「RGBW」と呼ばれる構造になっている。大型の有機ELパネルを作るために必要な構造だが、明るい映像になると白の影響が強くなり色が弱くなる欠点がある。

 

今回は緑と青を強化したため、白の影響が今までより多少抑えられ、結果として発色が良くなる訳だ。それだけでなく、消費電力の低減や寿命の延長にもつながる。

 

残念なのは、一般にテレビメーカーは、どこのどの時期のパネルを使った製品かを明示しないことだ。最新型だと思ったら実は去年のパネルだった……ということもあり得る。なので製品を選ぶ場合には、「新型パネル採用」などの文言があるモデルを選ぶようにした方がいい。

 

色の変化という意味では、サムスンディスプレイがテレビ向けに参入したことも大きい。今年の国内製品については、ソニーの最上位モデル「A95K」のみに使われている。

 

サムスンの新ディスプレイパネルは「QD-OLED」。構造としてはLGディスプレイのパネルに近く、1色で発光するパネルにカラーフィルターをかけた構造である。

 

ただしサムスンの場合には、青色に発光する有機ELに赤と緑のカラーフィルターをかける。この赤と緑のフィルターには「量子ドット(Quantum Dot=QD)」を使っているので「QD-OLED」、という訳だ。LGのものと違い3色で構成されているので発色の純度が高いのが特徴とされている。

 

詳細の説明は難解になるので省くが、光をより効率よく発することができる「トップエミッション方式」を採用しているため、その面でも輝度の向上が期待できる。

 

ただ、このディスプレイパネルはまだ量産が始まったばかりで、大量の需要には応えられないと言われている。その関係から、今年は国内ではソニーのハイエンドモデルにのみ採用されている状況である。価格的に手が届くなら、他社製品と見比べつつ検討してもらいたい。

 

どちらにしろ、今年の有機ELは「色」の変化が中心だ。解像度は4Kでひと段落し、ダイナミックレンジもHDRで方向性は出た。そこで、次に「色」が注目されてきたという部分はある。ある意味、人は色に敏感なので、店頭などでも訴求しやすい部分だ。

 

では液晶はどうなのか? そこは次回解説したい。

 

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