1月上旬に米ラスベガスで開催されたテクノロジーの見本市「CES 2023」。今年は世界の国や地域から3200社が参加する大規模な展示会で、PCや家電、モビリティなどさまざまな分野で、新しい製品や技術が次々と発表されました。
多数の製品や新技術が発表されたCES 2023の中から、とりわけユニークな7個の製品をピックアップして紹介します。
2画面ディスプレイをフル活用できるLenovo「Yoga Book 9i」
CESでまず注目したいのがPC分野。Lenovo、ASUS、Acer、HPなど複数のPCメーカーが多くの新機種を発表しました。IntelやAMD、NVIDIAなどのチップメーカーも新製品を投入しています。
見切れないほどの新製品群の中でも、ひときわ目を引いたのがLenovoの「Yoga Book 9i」。使うシーンに合わせて自在に形状を変化できる2画面搭載のPCです。
2つの13.3型ディスプレイがヒンジでつながれた形状で、持ち歩くときはたためば普通のノートPCと変わらない地味な見た目になります。画面を開いて、脱着できる物理キーボードを下画面に重ねて設置すると、正統的なノートPCのスタイルに。
ヒンジは360度まで回転可能。テントのような形でディスプレイを外側に向けて表示すれば、相手にサブ画面を見せながらプレゼンテーションをする使い方も簡単です。
机のスペースを取れる場所なら、2つのディスプレイを縦向きにして置くだけで、デュアルディスプレイ環境が展開できます。さらに、横向きに2画面並べて配置することも可能です。倒れないかハラハラしそうですが、付属の折りたたみスタンド付きケースがしっかり本体を支えてくれるようになっています。
LenovoのYogaシリーズではこれまでも折りたたみディスプレイを備えた「ThinkPad X1 Fold」など、形状自在な製品が発表されています。Yoga Book 9iは折りたたみディスプレイではなく2画面によって、同じような機能性をより実用的な価格で実現する製品となりそうです。
Yoga Book 9iは2023年6月から世界各国で発売予定。価格は2099.99ドル(約27万円)からとなっています。日本向けに投入されるかどうかは、現時点では明らかにされていません。
人力でPCを充電するエアロバイクデスク「Acer eKinekt BD 3」
テレワークの普及により、ここ数年は在宅勤務が増えたという人も多いことでしょう。一日中自宅のPCに向かっていると気になってくるのが、運動不足です。Acerが多数のPCとともに発表した「eKinekt BD 3」は、この悩みに正面から答えてくれます。
eKinekt BD 3は、エアロバイクを合体させたPC用デスクです。ペダルを回す足こぎ運動ができるうえに、エアロバイクで発電してPCを動かすこともできます。
たとえば、1秒間に1回転の電力で回し続けると、1時間で75Wの電力を生成可能としています。背面にUSB Type-Cポート1つとUSB Aポート2つを備えており、スマホやノートPCを充電できます。運動不足を解消しつつ、環境にも優しいというわけです。
直立姿勢を取れる仕事モードと、自転車のような前傾姿勢でこげるスポーツモードの2つの形状に変えることができ、専用アプリでは走行距離や速度などを確認できます。ドリンクホルダーとバッグ掛けも備えているなど、細部まで考え抜かれた作りになっています。
北米では999ドルで発売予定。台湾では4月発売で、ヨーロッパ・アフリカ諸国では6月発売としています。日本での展開予定は明らかにされていません。
VRコントローラーを置かずに飲み物を持てる「FlipVR」
CES 2023ではVR分野の新製品が相次いで発表されました。たとえば大手メーカーの一角であるHTCは、フラグシップモデルの「HTC Vive XR Elite」を発表しています。
日本企業の動きも活発です。ソニーも「PlayStation VR2」の発売日を正式に発表。また、シャープは独自のディスプレイを搭載した軽量型VRデバイスの技術展示を実施しました。
日本のVR関連スタートアップの中でも勢いがあるのが、パナソニック系のシフトールです。同社はVR Chatなどのメタバース空間に“入り浸る”人向けの製品を多く投入しています。
シフトールがCES 2023で新発表したのが、VRコントローラーの「FlipVR」。一般的には手のひら側にボタンが固定配置されているコントローラーを、手の甲側にずらせるという機構を追加した製品です。ちょっと飲み物を取ったりキーボードを使ったりするときに、コントローラーを手に置かずに済み、VR空間上で“手がだらんと下がって見える”という悲劇も防げます。FlipVRは2023年内の発売予定としています。
シフトールはまた、CES 2022で初公開したメガネ型VRデバイス「MeganeX」を正式に発表しました。パナソニック独自開発のパンケーキレンズを搭載した軽量設計が特徴で、価格は24万9900円(税込)。2023年3月~4月頃に日本市場で発売されます。同社の口ふさぎ型Bluetoothマイク「mutalk」やフルトラッキングツール「HaritoraX」と組み合わせると、メタバース空間をどっぷり楽しめる重武装ができそうです。
クッションが息している!? ユカイ工学の「フフリー」
毎年、CESでユニークなロボットを発表しているユカイ工学。CES 2023では呼吸するクッション「fufully(フフリー)」のプロトタイプモデルを公開しました。
フフリーは、抱きかかえられる大きさの雲のような形のクッションです。電源を入れると膨らんだり、縮んだりと、まるで寝息を立てている動物のような動きをします。
動物には、仲間の呼吸につられて呼吸をする「呼吸の引き込み現象」があると知られています。フフリーを抱きかかえることでもこの現象が発生し、ゆったりとした深い呼吸になるそうです。
フフリーは東京大学の研究をベースに、JT、博報堂、ユカイ工学の4者で開発を進めています。商品化の時期や価格は発表時点では未定とのこと。
電子ペーパーで変幻自在なクルマ「BMW i Vision Dee」
CESでは毎年、電気自動車も新製品やコンセプトモデルが多数発表されています。CES 2023では、ソニーとホンダが共同開発しているEVの新コンセプト「AFEELA」が話題を集めました。両社はAFEELAをベースとした市販EVを2025年に開発し、受注を開始する予定です。量産モデルに近いコンセプトカーということもあり、装飾的な要素が少ない洗練された見た目に仕上がっています。
AFEELAとは対照的に、ひときわ目を引く外観を持っているのが、BMWのコンセプトカー「BMW i Vision Dee」です。 BMWはCES 2022のコンセプトモデルで白黒の電子ペーパー(E Ink)に覆われたクルマを展示していましたが、今年はカラーE Inkにステップアップしました。
Deeのスポーツ・セダン型のボディは全体がE Inkで覆われていて、数秒でボディ全体の色が変わります。まるでレースゲームで塗装変更を試すかのように、現実世界のクルマをカスタマイズ可能です。
さらに、Deeにはクルマが感情を持ち合わせているかのような表現も盛り込まれています。フロントマスクのグリルが、まるで瞬きするかのように表示が変化します。また、音声アシスタントを搭載し、流ちょうに会話しながらクルマを操作できるというコンセプトも持ち合わせています。
置くとディスコになるカラフル冷蔵庫、LG「MoodUP」
LGが冷蔵庫に搭載した「MoodUP」は、冷蔵庫の前面ドアが高輝度LEDパネルとなっており、発光する色をアプリで指定できます。また、冷蔵庫にBluetoothスピーカーを内蔵しており、スマホで再生した曲に合わせてリズミカルに色を変えることも可能。まるでディスコライトのように空間を演出します。
光るドアは単によく目立つだけではありません。夜間に人を検知すると、ドアが光って足元を照らすほか、冷蔵庫が開けっ放しになっているときに点滅して知らせる機能を備えています。また、上部ドアの1か所は透過型のディスプレイになっており、中に入れたドリンクなどの様子を、ドアを開けずに確認できます。
CES 2023ではPANTONEとコラボしたMoodUP冷蔵庫の限定色モデルもお披露目。また、スマート家電の共通規格「HCA 1.0」への対応も発表されました。
世界初の家庭用尿センサー「Withings U-Scan」
スマートヘルスケア製品を手がけるフランスの Withingsは、世界初という個人向けのハンズフリー型尿検査キット「U-Scan」を発表しました。
U-Scanはトイレに設置する尿検査キットで、110gの小石のような機器にカートリッジを内蔵しています。デバイスを通して尿を分析した情報はWi-FiやBluetooth経由で、スマホのアプリに送信することができます。
カートリッジは栄養状態を分析する「U-Scan Nutri Balance」と、女性の月経周期を分析する「U-Scan Cycle Sync」の2種類。2023年前半にまずは欧州で発売し、米国でも保健当局の承認後に販売される見込みです。カートリッジ1個付きのスターターキットの価格は499.95ユーロ(約7万円)となっています。
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