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2016/11/29 10:00

【西田宗千佳連載】「タッチ」で別れるマイクロソフトとAppleの進む道

「週刊GetNavi」Vol.49-1

20161201-02(1)

マイクロソフトはタッチ+ペンで2in1市場を牽引

「Appleの進化は小さかった。年末商戦で消費者は我々の製品を選ぶと思う」
米マイクロソフトの副社長であるブライアン・ホール氏は、11月に来日した際、記者にそう宣言した。

 

理由は、同社が、積極的に「新しいUIデバイス」を持つ機器を市場に投入しているからだ。Appleが新しいMacBook Proを発表した10月27日の前日には、タッチ対応のデスクトップPC・Surface Studioを発表している。

 

Surface Studioは、28インチ・4500×3000ドットの超高精細大画面一体型PC。従来のSurface同様、タッチ+ペンが使える。クリエイターがイラストや映像、3Dデータを作るには最適な製品と言える。タッチ+ペンで使う「2in1」市場をリードしているのはマイクロソフトであるのは間違いなく、市場を作った、と言っても過言ではない。「我らこそ変革者であり、業界をリードしている」とマイクロソフトが主張することに反論する人は少ないはずだ。

 

Appleはタッチ+ペンは専用デバイス向けと考える

一方、名指しで批判されたAppleの側としては、そこに異論もあるだろう。新しいMacBook Proは、ESCキーとファンクションキーを排除し、タッチパネル形式の「Touch Bar」を採用したからだ。これを彼らは「ファンクションキー、45年ぶりの進化」と呼んでいる。一見単にボタンをなくしただけに見えるが、ここはプログラマブルな領域であり、アプリの種類や作業の内容によって、役割を様々に変化させる。「何に使うのかよく分からない」と言われることの多いファンクションキーを、「その時に使いたい機能がある場所」にするのが「Touch Bar」の狙いである。同時に「画面を直接タッチで操作したほうがいいが、遠いので腕が疲れる」という指摘に対する回答でもある。

 

マイクロソフトAppleはPC業界を共に作った存在だが、ときには「斜陽」とも言われるPC業界をいまも支えている。両社とも、「パーソナルコンピューティングの未来はタッチ+ペンにある」と見ているが、アプローチは全く異なる。

 

Appleは「タッチ+ペンは専用のデバイスであるべき」という立場をとる。iPhoneやiPadを「新しい個人向けコンピュータ」と位置付けているわけだ。一方、Macはあくまで、「キーボードとマウスで仕事をする人が効率的に使う」ためのもの。画面タッチを取り入れず「Touch Bar」という限定的なアプローチなのは、「Macの使い方ではそのほうが使い易い」という主張からだ。

 

それに対してマイクロソフトは「PCがタッチ+ペンを取り入れることで姿を変え、これからの時代にあったものになっていく」ことを是としている。より積極的なアプローチであり、目立つのは後者だ。10年前とは攻守が入れ替わった印象もある。

 

だが、意見が揃う点もある。それは「OSメーカーが差別化されたハードを作ることで、ブランド価値が高まる」という発想だ。

 

ではなぜ両社はブランド価値を重視するのか? なぜアプローチが別れるのか?

 

そのあたりは次回のVol.49-2以降で解説する。

 

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