Vol.130-4
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回のテーマは新製品が多く登場しているサングラス型ディスプレイ。各社製品を大きく分けると2つの差別化ポイントが見えるという。
XREAL
XREAL Air
実売価格4万9980円
サングラス型ディスプレイは、名前が示すとおり「ディスプレイ」であることが本質だ。
たとえば「Meta Quest」のようなVR用HMD(ヘッドマウントディスプレイ)は、本質的に「コンピューター」である。PCやゲーム機と接続して使う場合もあるが、単体でゲームやコミュニケーションなどが行える。アップルの「Vision Pro」も、中身はM2搭載のiPadに近く、頭にかぶるコンピューター、といって差し支えない。
一方でサングラス型ディスプレイは、軽く作りたいという要求から、ケーブルでほかの機器とつないで使うのが基本だ。一般的にはスマートフォンやタブレットとつなぎ、その映像を表示する。
とはいえ、スマホをつなぎ続けて使うとバッテリー消費の問題が多く、「なにか別の機器」を用意することも考える必要が出てくる。
そこで各社が積極的に推し進めているのが「専用外付けデバイス」の開発だ。基本的にはそれぞれのメーカーが作るサングラス型ディスプレイ専用の機器。特定の外付け機器が魅力的だと感じたなら、サングラス型ディスプレイも同じメーカーのものを選ぶ必要が出てくる。
どれも方向性や操作性はかなり異なり、好みの分かれる状況だ。あえて分類するなら、“専用機器自体でサングラス型ディスプレイを楽しむ”のか、“いろいろな機器をつなぐ助けとなるデバイスを用意する”のか、という違いと言っていい。
VITUREとRokidが選んだのは「OSとしてAndroid TVを使ったデバイスを作る」ことだ。Rokidは手のひらサイズのAndroid TVデバイス「Rokid Station」を作り、VITUREはネックバンド型の「VITURE One ネックバンド」を作った。前者はGoogleのサポートも受けた純正のAndroid TVであり、後者はOSとして使いつつ、オリジナル機器として開発されたものだ。映像配信やゲームなど、Androidアプリをそのまま動かして使うことを想定している。
それに対してXREALが選んだのは、さらにスマホやPC、ゲーム機などを外付けにする際に、接続と表示をサポートするデバイスだ。「XREAL Beam」は内部にバッテリーを搭載、スマホ(iPhone含む)からのワイヤレス接続にも対応する。またケーブルを使えば、PCやゲーム機にもつながる。他社と違ってXREAL Beamだけで動画配信を見たりすることはできないが、前回説明した「3DoF」対応のほか、映像のブレだけを抑制する機能もある。要は“バッテリーや表示形式、ほかの機器との接続などをラクにする”要素だけをまとめたのがXREAL Beam、ということになる。
それぞれ一長一短な部分があり、「これが一番」とは言い難い。ただ現状、もっともこなれた製品を出しているのはXREALであり、他社はさらに差別化を狙って独自デバイスに磨きをかけている……といった印象が強い。しかしソフトウェアのアップデートなども頻繁に実行されているので、記事が出る頃には評価が変わってくる可能性もある。
まだ市場は小さいが動きは活発なので、少し注目しておいていただければと思う。気になるのは、いつ“中国系以外が参入するのか”というところなのだが……。
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