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2024/6/24 11:30

新興メーカー「AYANEO」のAndroidゲーム機の突き抜け加減がすごい

ポータブルゲーミングPCというジャンルで、異彩を放つ「AYANEO」というメーカーをご存じでしょうか。レトロMacのようなミニPC、2画面のWindows PCなど、個性的な製品が並び、創業から4年で投入した製品は17台にもおよびます。このメーカーは何者なのか。初来日したArthur Zhang CEOのプレゼンテーションから、AYANEOの素顔を紹介します。

 

そして注目の、Androidゲーム機「AYANEO Pocket S」もレビューします。

↑AYANEO Pocket S

 

ベンチャーとしては異例の企画力と設計力を持つAYANEO

AYANEOは中国・深センに本拠地を置くハードウェアメーカーです。Windows搭載の小型ゲーム機作りを得意としており、コントローラー付きのゲーム機を10種類以上投入しています。

 

驚くべきは、企画と設計の能力です。ベンチャー企業としてこれほどまでに多品種を生産するのは並大抵のことではありません。投入された製品を見てもスライドキーボード付き、Windowsで2画面対応など、ひと癖もふた癖もある製品ばかり。オールドMac風やファミコン風などの懐かしい製品をリバイバルしたものもあります。

↑AYANEOは2021年の立ち上げ以降10種類以上の小型ゲーム機やPCを発表しています

 

AYANEOの創造性の一因は、深センという中国でもハイテク工場が集積している土地を本拠地としていることにありそうです。さらに、AYANEOのZhang CEO自身が並々ならぬゲームファンであることにも、秘訣があります。Zhang氏は中国でモバイルガジェットの専門メディアを複数立ち上げた人物です。個人としては大のゲーム愛好家で、レトロゲームやモバイル機器の収集家でもあります。CEOがゲーム好きなことから、ゲーマーのニーズをよくくみ取った製品を自在に開発できるということなのでしょう。

↑AYANEOのArthur Zhang CEO

 

AYANEOの販売スタイルも特徴的です。同社はクラウドファンディングのIndiegogoを積極的に活用しています。新しい製品を販売するときは必ず同サイトに出品して、世界中のコアなファンの間で話題を集めます。この取り組みの結果として、中国向けと国外向けで半数ずつというバランスの良い販売実績を達成しました。中国以外では、米国や日本、欧州、オーストラリアなどで受け入れられているといいます。

↑今回投入された製品とは別に、AYANEO microも日本に投入予定。ゲームボーイミクロ風のAndroidゲーム機です

 

「AYANEO Pocket S」はガチでスマホゲームを楽しめるAndroidゲーム機

そんなAYANEOが「AYANEO Pocket S」を7月上旬に日本に投入します。プラットフォームはこれまでAYANEOが何台も投入してきたWindowsではなく、Androidです。要するに「スマホゲームをガチで遊ぶ人のための“ゲーム機”」ということになります。

↑AYANEOのAndroidゲーム機2作目にして、高性能チップ搭載のAYANEO Pocket S

 

スマホゲームというと隙間時間に遊べるライトなゲームを想像しますが、本格的にがっつり遊べるタイトルも増えています。たとえば、HoYoverseの『原神』や『崩壊:スターレイル』が有名です。さらに、クラウドゲームやストリーミングによって、PC向けやコンソール機向けの高品質なゲームとの接点も増えています。スマホでも充実したゲーム体験ができるようになりつつある中で、そこに特化したニッチなデバイスが登場するのは必然だったのかもしれません。

 

AYANEO Pocket Sは性能面では折り紙付きです。チップメーカーのクアルコムと提携し、ゲーム専用に設計された最新チップセット「Snapdragon G3x Gen2」を搭載します。このチップはSnapdragon 8 Gen 2のゲーム機特化版ということで、スマホなら「Galaxy S23」など2023年のフラッグシップスマホに匹敵する性能を備えています。Androidの大作タイトルはSnapdragon プロセッサーに最適化されていることが多いので、その点でも安心です。

 

ディスプレイは約6インチ。DCI-P3準拠のIPS液晶を採用し、60Hz駆動対応と、グラフィックの表現力もまずまずです。また、冷却システムとしてベイパーチャンバーと空冷を備えていて、ヘビーなゲームでもパフォーマンスを落とすことなくプレイできます。

 

通信はWi-Fiのみ対応となっており、4G/5G接続はありません。加えて、GPSやカメラも非搭載となっています。たとえばAR対応のゲーム(ポケモンGOなど)を遊ぶときに不便かもしれません。あくまで横向き画面でゲームに特化した製品となっています。

 

ゲームのお供として、「AYA Space」というアプリがあります。このアプリではゲーム操作時のキーコンフィグの割り当てなどが設定できます。ゲーム中のフレームレート表記なども可能です。

 

さらに右側面のスライドボタンがあり、物理的な操作でゲームブーストを利用できます。メモリーの優先割り当てや、通知をオフにするといった機能も設定できるうえに、2回スライドすると、ファン全開で冷却するモードも利用できます。

 

【AYANEO Pocket Sをフォトギャラリーでチェック】(画像をタップすると閲覧できます)

 

さまざまな本格ゲームを遊べる。ただしちょっと(物理的に)重い

Androidゲーム機というのは要するに、コントローラーを備えたAndroidタブレットなのですが、これがあるとないとでは大違いです。特に外部コントローラーが必須のクラウドゲームやリモートプレイを遊ぶユーザーにとっては多くの意義があります。寝転がりながらAndroidゲームを遊べるのは、このデバイスならではの特典です。

 

USB外付けコントローラーに対応しているゲームなら、コントローラーをそのまま利用できます。たとえば『Minecraft』では特に設定も必要なく、快適に動作できました。

 

クラウドゲームの「Xbox Cloud Gaming」や「GeForce NOW」で、PC向けの本格ゲームタイトルを手軽に楽しめるのもこのデバイスならではのメリットです。AYANEOの小型ゲーミングデバイスの中でもコンパクトで、Androidで動作するため4~5時間はストリーミングしつづけて遊べます。

 

実際にXbox Cloud Gamingで検証してみたところ、『OCTOPATH TRAVELER』のような描画の変化が多くないゲームは快適に遊べました。3Dレンダリングを多用するような作品は、Wi-Fi 6のネットワークでも描画が安定しない場合があったので、どちらかというと動きの少ないRPGの方が適しているようです。

↑「Xbox Cloud Gaming」で『OCTOPATH TRAVELER』をプレイ

 

また、Androidには『原神』のようにタッチパネルのみのゲームも多々あります。この場合は、コントローラーのキーをタッチ操作に割り当てるキーマッピング機能を利用できます。『原神』の場合はキーマッピングを利用することでかなり快適に遊べるようになりました。

↑写真はデモの様子ですが、『原神』はキーマッピングを割り当てれば快適に操作できます

 

なお、Androidタブレットの一種ですから、縦持ち型のゲームをプレイすることもできます。感覚としては、縦長の小型タブレットを持っているような持ち方になります。縦画面と横画面を行き来するタイトルとして、『学園アイドルマスター』もプレイしてみましたが、コントローラーの存在を気にせず快適に操作できました。

↑動作性能の要求水準が高い『学園アイドルマスター』もぬるぬる動きます

 

ただし、キーマッピングは現状ではゲームタイトルごとに手動で割り当てる必要があり、その点は手間も感じました。特に『PUBG』のような視点移動を割り当てる必要があるゲームでは割り当てが難しくなっています。このあたりは有名タイトルごとに設定済みプロファイルを提供する方針を示しているため、アップデートでの改善が期待できそうです。

 

気になるのは約350gの重さ。iPad miniやNintendo Switch Liteより重く、iPad Airよりは軽いという程度でしょうか。長時間ゲームに熱中していると、腕に疲労感を感じることがありました。

 

AYANEO Pocket Sの価格は8万9800円(税込)~。既存のゲーミングスマホよりも割安な価格帯に抑えてきました。2台持ちでゲームに特化したAndroidスマホがほしい人、特に『原神』や『崩壊:スターレイル』をがっつりとやりこみたい人には、理想的な2台目端末となり得そうです。クラウドゲームのサービス内容充実を見据えて、いまからゲーム機をそろえておくのもありでしょう。

 

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)