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2017/3/17 20:00

小柳ルミ子「来夢来人」に代表されるスナック店名の当て字ブームの謎

ギャランティーク和恵の歌謡案内「TOKYO夜ふかし気分」第11夜

みなさんこんばんは、ギャランティーク和恵です。とうとうこのコラムも11回目を迎えます。なんだか回を重ねるごとにワタシの人生を切り売りしてるようで、大した人生経験もないワタシなのに、このままケバブのように切り売りし続けたらあっという間に骨だけになっちゃいそうです。そうなったらなったで、次は鶏ガラみたいにスープにしてみなさんに……って、何の話してんだろうワタシ……。

 

そろそろ桜が咲く季節がやってきますね。開花予報では3月下旬に開花の予定だそうです。お花見などのご予定もそろそろ立ててる頃でしょうか。忘年会や新年会と同様、今日はこのお座敷へ、明日はあのお座敷へ……、と会社の同僚や友人たちとスケジュール調整も大変なことでしょう。しかも桜が咲いているのはほんの1週間程度、なかなかタイトスケジュールです。そしてワタシはというと、お花見を終えたホロ酔い気分の団体様がワタシのお店「夜間飛行」へゾロゾロと入ってくるのをカウンターの中で待ち構える、というのが毎年恒例になってます。えぇ、桜よりお金が大事ですねん。

 

というのは冗談ですが、むしろワタシはその「お花見」というものにここ10年くらい呼ばれたことがありません。水商売をしていて時間帯などが合わないと思われてるのか、それとも単純に友達がいないからか(やだ……涙が出てくる)、団体行動が苦手だとよく口にしてると、こういう行事に自然と呼ばれなくなりました。自業自得ですね……。それならば、スナックやバーが企画でよくお花見をやってるように、ワタシもスナックのママの特権を利用して、新宿御苑あたりでお客様参加型のお花見でも企画してみようかしら。新宿御苑は毎年お花見の時期になると、新宿2丁目のゲイバーがそのまま御苑の中に移動したかのようにあちらこちらで青空営業してて、そういう風景は“さすが新宿だな”って思います。

 

スナックといえば、ひと昔前まで外来語を漢字で当て字した店名のスナックを良く見かけませんでしたか? 「多恋人(タレント)」、「樹里杏(ジュリアン)」、「待夢(タイム)」、「洒落道(シャレード)」などなど。いまでも小さな町の駅前なんかでチラホラ見かけます。そのなかでもひときわ有名なのは「来夢来人(ライムライト)」でしょうか。星屑スキャットのメンバーのミッツさんがママを勤めていた新丸の内ビルの中にあるスナックも「来夢来人」です。ちなみにメイリーさんがママを勤める新宿2丁目にあるバーは「在龍(ザイル)」。こちらは当て字なのかは不明ですが……。

↑星屑スキャット(メイリー・ムー、ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵)
↑星屑スキャット(メイリー・ムー、ミッツ・マングローブ、ギャランティーク和恵)

 

それにしても、このスナックの店名を漢字で当て字にする風習って、一体いつから始まったのでしょうか。一説には、そのブームの火付け役となったのが小柳ルミ子さんが歌っていた「来夢来人」ではないかともいわれています。

 

【今夜の歌謡曲】

20170317-i07(2)
提供:渡辺音楽出版株式会社

11.「来夢来人」/小柳ルミ子
(作詞/岡田冨美子 作曲/筒美京平)

 

しかし、外来語を漢字で当て字にすることはずっと昔よりあったわけで、決してこの「来夢来人」がスナックの当て字文化の起源ではないとは思われますが、スナック文化というものが成熟していったのが、カラオケブームが始まった1970年終盤あたりからではないかと考えると、1980年にリリースされたこの小柳ルミ子さんの「来夢来人」は、スナックのネーミングにおける当時のプロトタイプとなったのではないかとワタシは勝手に想像しております。それ以前に「来夢来人」というネーミングの前例はあったのかな? と、JASRACに登録された曲を調べてみますと、尾崎亜美さんが1978年にリリースしたアルバム「STOP MOTION」の中に収録された「来夢来人」(これもイイ曲!)、そして大友裕子さんが1980年にリリースしたアルバム「傷」の中に収録された「来夢来人」(1983年にあみんがカヴァー)がありました。

 

尾崎亜美さんの「来夢来人」の歌では、喫茶店と思われる店名としてこの名前が使われています。ということは、1978年の時点でそういった名前のお店がいくつか存在していた可能性があります。そしてなぜか、「来夢来人」という曲が1980年前後に集中してリリースされているのも、きっとブームになる背景があったに違いない……。最初にこの当て字をした人は一体……一体……誰なの!? 謎は深まるばかりです。もう決めました。ワタシ、今日から「来夢来人」研究家になります。

 

桜吹雪の舞う景色に和風SM的恋愛関係を描いた歌詞世界が映像的で美しい、小柳ルミ子さんの「来夢来人」という曲。これからの季節にピッタリです。お花見に誰にも誘われることもないワタシは、毎年ひとり、お気に入りの花見コースを散歩しています。まだ五分咲きくらいの桜から満開の桜、そして桜が散ってゆく頃まで、暇さえあれば足を運んでいます。もちろん、散ってゆく桜を愛でる時にはこの「来夢来人」を口ずさみながら……。

 

デビューから70年代いっぱいまでは清純さを辛うじて保っていたルミ子ですが、この曲を歌った1980年の紅白歌合戦では、とうとうバックダンサーを引き連れてダンサブルに歌い踊る新しいルミ子がステージで開花しました。それからのルミ子はハイレグ姿で男たちを従え、それはもう美しく咲き乱れるのです。……あ、小柳ルミ子さんをルミ子なんて呼び捨てにしちゃった。でも、ワタシにとっては愛と尊敬の念を込めて、あえてルミ子と呼ばせていただきます。つまりは……「来夢来人」はスナック文化の開花宣言であり、新しいルミ子の開花宣言なのです。

 

<和恵のチェックポイント>

1980年にリリースされたシングル曲。作詞はシブがき隊「スシ食いねェ!」や、鈴木聖美&鈴木雅之のデュエット曲「ロンリー・チャップリン」などのヒット曲を手がけた岡田冨美子さん。桜吹雪をバックに日本女性の淑やかな恋心をSM的主従関係で描く映像的で美しい歌詞世界はお見事。しかし何故「来夢来人」という言葉を選んだのか、そのあたりを「来夢来人」研究家(にわか)としては本人にお会いしてぜひお聞きしたいものです。

 

そして作曲は泣く子も黙る筒美京平さん。この曲、ワタシは何度も歌わせていただいてるのですが、非常に難しいです。筒美京平センセーの曲は、わざとかなというくらいに突拍子もない音階で歌いにくいメロディを作られているような節があり、しかしそこがポップスとしての強さにもなってるのでしょうが、この曲はそんな京平メロの中でも飛び抜けて難易度高いです。それをパシッと歌いこなすルミ子(敬称略)はさすが。

 

ルミ子のヴォーカルは70年代と80年代で大きく変化しますが、この曲はその変化前のギリギリの頃。70年代のルミ子の魅力はやはり地声と裏声の使い分けで、その魅力を引き出すようなメロディでもあります。「お久しぶりね」以降のルミ子の声はあばずれ感が強くなりヒステリックになります。ワタシはそっちが大好きなんですけどね……(褒めてます)。そして特筆すべきは編曲家の萩田光雄センセーのアレンジの素晴らしさです。70年代中盤から80年代にかけてのアレンジャーとしての仕事はどれもこれも素晴らしく、歌謡曲という音楽において萩田光雄センセーの功績はもっと認められるべきだと思います。

 

【INFORMATION】

1971年のデビュー以降、次々とヒットを連発し歌謡界で花開いた小柳ルミ子のシングル・ヒットから厳選、CD1枚に収めたまさに「ベスト・オブ・ベスト」と呼べる“究極の1枚”小柳ルミ子「プレミアム☆ベスト シングルセレクション」が発売中です。デビュー曲「わたしの城下町」や代表曲「瀬戸の花嫁」、今回紹介した「来夢来人」も収録。歌謡曲ファン必聴の1枚です。

20170317-i07(3)

小柳ルミ子「プレミアム☆ベスト シングルセレクション」
税込価格:2160円
商品番号:WMP-60207
発売元: 渡辺音楽出版株式会社

 

『NEXT歌謡フェス』@新宿 Loft

歌謡曲の時代を築かれてきた歌手やミュージシャン、これから歌謡曲を次の時代へ繋いでいく歌手やミュージシャンが一同に集まる贅沢な祭典「NEXT歌謡フェス」が、3月25日(土)に新宿Loftで開催されます。こちらのイベントに、ギャランティーク和恵さんも出演されます。前売りチケットはeプラスにて発売中。

2017年3月25日(土)
@Loft(新宿)
<時間> 14:00_19:00(開場13:30)
<料金> 前売り3500円 当日4000円 (1ドリンク別)

出演: (出演者発表順)
原田真二
アイドルネッサンス
ギャランティーク和恵
町あかり
姫乃たま
内海和子&立見里歌 (ex.おニャン子クラブ)
乙女フラペチーノ
半田健人
サロメの唇

MC:長井英治、姫乃たま

<NEXT歌謡フェス HP> http://kayo-japan.com

 

星屑スキャットワンマンライブ

4月16日(日)には、恵比寿アクトスクエアにて星屑スキャットのワンマンライブが開催されます。今回はお食事をしながらテーブル席でゆっくりとお楽しみいただけるスペシャルなライブとなっております。昼・夜の2回公演です。

星屑ディナー2017

2017年4月16日(日)

@アクトスクエア(恵比寿)

<時間> 昼/12:00開場 13:00開演 夜/16:30開場 17:30開演

<料金> S席 1万3000円(お土産付き) A席 9800円

出演:星屑スキャット

(ミッツ・マングローブ/ギャランティーク和恵/メイリー・ムー)

チケット:3月11日よりチケットぴあにてチケット発売中

(Pコード:327-490)