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2018/4/20 22:05

今夜開店! 「レコードショップ ギャラン堂」第1回目は昭和歌謡の巨星・筒美京平の自選作品集を全曲紹介

1枚目「筒美京平自選作品集〜City Pops〜」(ユニバーサル/UPCY-7457~8)

【Disc1】

1.「黄色いレモン」藤 浩一(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
これCity Pop? 1曲目からいきなりズッコケますが、筒美京平センセーの作曲家としてのデビュー曲であるこの曲は、藤 浩一さん以外にも泉 健二さん、望月 浩さん(また区別しにくい名前で覚えにくい……)などが競作でリリースしています。まだ初々しさが感じられる、朗らかで優しいメロディです。

 

2.「バラ色の雲」ヴィレッジ・シンガーズ(作詞/橋本 淳 編曲/森岡賢一郎)
グループ・サウンズの誕生とともに、筒美京平センセー始め、フリーの職業作曲・作詞家たちが誕生し、活躍の場が広がりました。

 

3.「ダーティー・ドッグ」尾藤イサオ(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
尾藤イサオさんの表現力ハンパないっす。City Popというか、闇市という感じ。

 

4.「スワンの涙」オックス(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
オックス大好き! 野口ヒデトのハスキーな泣き声ヴォーカルが無邪気な少年のよう。

 

5.「白いハイウェイ」ブレッド&バター(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
京平センセーにとって男性ヴォーカルは、ポップさという観点でどこか少年のような中性的な声質を好んでいたようで、特にブレバタのお兄さんのヴォーカルは最高に少年的でピュア。ワタシにとっても最高に好きな男性ヴォーカルの1人です。

 

6.「サザエさん」宇野ゆう子(作詞/林 春生 編曲/筒美京平)
ある意味City Pops。みんなご存知サザエさん。子供のころから聞き馴染み過ぎていたので気付かなかったけど、サウンドはバッチリ京平サウンドです。

 

7.「ひとりの悲しみ」ズー・ニー・ヴー(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
尾崎紀世彦さんの「また逢う日まで」がヒットする前にGSの「ズー・ニー・ヴー」がリリースしていた歌詞違いの同曲。ヴォーカルの町田義人さんの震えるような声が「ひとりの悲しみ」感を醸し出しています。アレンジ、「また逢う日まで」とほぼ同じだけれども何かが違う。さてそれは何か。答えは2曲後に。

 

8.「悪っぽい人だけど」森山良子(作詞/小平なほみ 編曲/筒美京平)
「たいくつだったのね よくあることだわ」のメロディが秀逸。

 

9.「また逢う日まで」尾崎紀世彦(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
答えあわせです。正解は、グルーヴィーに上下激しく動きまくるベースラインです。そのグルーヴにキーヨの力強い歌唱が乗ると、「ひとりの悲しみ」からこんなにも壮大な歌に生まれ変わるんですね。

 

10.「お世話になりました」井上順之(作詞/山上路夫 編曲/筒美京平)
これほどにも、井上 順さんのキャラクターとヴォーカルでしか表現できない歌があるだろうか。

 

11.「雪が降るのに」黛ジュン(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
あぁ……この鼻にかかった喘ぐような声が好き! 一聴すると京平センセーにしては歌謡寄りに感じますが、何気に演奏がタイトでカッコいいのです。

 

12.「愛の挽歌」つなき&みどり(作詞/橋本 淳 編曲/筒美京平)
これも一聴すると歌謡寄りな印象ですが、演奏がこれまたタイトでクール。前曲「雪が降るのに」と同じようなド頭の不思議なドラムフィル然り、かなりストイックなアレンジです。この2曲を並べるなんて流石だわ。それにしてもつなき&みどり夫妻のクレッシェンド歌唱は何度聴いてもクセになります。

 

13.「青春挽歌」かまやつひろし(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
ジャパニーズ・カントリー。ムッシュのカントリー歌唱は、藁葺き屋根、水車小屋、田んぼのあぜ道に咲く野の花、手ぬぐいを頭に巻いたおばあちゃん、そんな素朴な日本の田舎の景色が見えてくるのでスゴイのです。

 

14.「或る日」ザリバ(作詞/石津善之 編曲/矢野 誠)
矢野顕子さんが所属していたグループ。ちゃんと歌ってる(怒られるわ)。

 

15.「夏しぐれ」アルフィー(作詞/松本 隆 編曲/筒美京平)
京平センセーが松本 隆センセーを起用してフォーク・ニューミュージックとの接近を図り始めた頃の曲。

 

16.「忘れ雪」オフ・コース(作詞/松本 隆 編曲/矢野 誠)
京平センセーが松本 隆センセーを起用してフォーク・ニューミュージックとの接近を図り始めた頃の曲。その2。そして太田裕美の誕生へと続く。

 

17.「セクシー・バスストップ」Dr.ドラゴン&オリエンタル・エクスプレス(作詞/橋本 淳 編曲/高田 弘)
京平センセーが和製ディスコへと果敢に挑戦された頃に結成された覆面バンド。京平センセーも「Jack Diamond」と変名で作曲、コーラスは矢野顕子さん、ドラムに林立夫さん、ベースに後藤次利さん、ギターに鈴木 茂さんという豪華さ。しかしそれを隠して洋盤としてリリースしたそうな。

 

18.「ヒットマシーン」K・T-585 BAND(作詞/今野雄二 編曲/筒美京平)
こちらも和製ディスコへ果敢に挑戦された時期のものですが、このグループでは筒美京平名義で制作されています。当時レコード会社それぞれが企画盤としてリリースしていた「ステレオ・チェック」モノLPというのがあって、そこではミュージシャンたちが商業音楽から少し離れて好きなことをプロフェッショナルに追求できるという枠があったようで、京平センセーもこのグループでディスコ・サウンドを追求なされていたようです。

 

19.「たそがれマイ・ラブ」大橋純子(作詞/阿久 悠 編曲/筒美京平)
Aメロ「今は夏~」の出だし1発目をあのコードで歌いださせる感じの斬新さ。

 

20.「グッド・ラック」野口五郎(作詞/山川啓介 編曲/高田 弘)
ディスコ歌謡の名曲。着目すべきは編曲に高田 弘さんということですが、先ほどの「セクシー・バス・ストップ」も高田 弘さんということで、わりとディスコ・サウンドに長けてた方だったのかと改めて知りました。ワタシの中ではちあきなおみ「喝采」のアレンジャーとしての印象が強かったので。

 

21.「センチメンタル・ブルー」BUZZ(作詞/ちあき哲也 編曲/筒美京平)
小出博志さんと東郷昌和さんによるフォーク・デュオ「BUZZ」。いい名前。何気にYMOの高橋幸宏さんや彼のお兄さんとの交流があったり、デビュー前のユーミンが詞を提供していたり、スノッブな方たちだったと見受けられます。小出さんの胸の奥をくすぐられるような優しい歌声が素晴らしい。

 

22.「ワールド・ファンタジー」レターメン(作詞/L.Rhee 編曲/大村雅朗)
なにコレ? オシャレ! レターメンって誰?! とWikiで調べると、アメリカのコーラス・トリオ(星屑スキャットみたいな?)なんですね。「セクシー・バス・ストップ」あたりの腰が揺れる重心重めのグルーヴから、水平飛行するようなライトな四つ打ち感あるグルーヴへ移行した78年あたりのディスコ・サウンド、ワタシの大好物です。同時期に作られた隠れた名曲「青い地平線」と同じアレンジやコード進行感。

 

【Disc2】
1.「ロキシーの夜」近田春夫(作詞/島 武実 編曲/小田健一郎)
ハルヲフォンから近田春夫としてのソロデビュー曲。近田春夫さんはロックミュージシャンにして歌謡曲研究家であり、特にヒットメーカーとしての筒美京平センセーの作曲法などを熱心に研究していたようです。

 

2.「ブルー・バタフライ」さとうあき子(作詞/松本 隆 編曲/瀬尾一三)
かなり危うい声……。

 

3.「ラスト・トレイン」宮本典子(作詞/三浦徳子 編曲/筒美京平)
ソウルフルなお声とソウルフルなお顔でキャラ立ちまくり。失恋の悲しみを振り払い立ち上がろうとする女性の心情を、彼女の伸びやかな歌唱が見事に表現しています。

 

4.「とりあえずニューヨーク」山下久美子(作詞/近田春夫 編曲/近田春夫)
ここでまた近田春夫さん×京平センセーの化学反応が。この曲の素晴らしさは、最後の最後に出てくる「とりあえずニューヨーク!」というコーラス部分です。取ってつけたように、いままでにまったく出てこなかったメロディとリズム展開でフィナーレを迎える、こういうのをワタシは「デザートメロ」と呼んでおります。

 

5.「ドラマティック・レイン」稲垣潤一(作詞/秋元 康 編曲/船山基紀)
あぁ……また京平センセーが好きそうな声! プラスティックで中性的で甘く、ワタシもこんな声だったら京平センセーに曲を書いてください! ってお願いするのに。

 

6.「夏のクラクション」稲垣潤一(作詞/売野雅勇 編曲/井上 鑑)
イントロが流れると同時に目に浮かんでくる、夏の強い日差しや湿った風やアスファルトの蜃気楼なんかが、稲垣潤一さんの甘酸っぱいヴォーカルとともに立ち上がってきます。

 

7.「Romanticが止まらない」C-C-B(作詞/松本 隆 編曲/船山基紀)
筒美京平meetsエレクトロには欠かせない右腕的存在、船山基紀さんの素晴らしいアレンジ。そしてヴォーカルの笠 浩二さんのこれまた少年っぽい声で、地声とファルセットのあいだを行き来するギリギリの音域を歌う感じがあどけなくタマラナイ。

 

8.「その後で殺したい」SHOW-YA(作詞/秋元康 編曲/松下 誠)
筒美京平meetsロックバンド。というのはワタシの中ではあまり結びついてなかったのですが、なるほどこうなるのかと納得。寺田恵子ネーサンのヴォーカルが見事に引き立つメロディと展開が素晴らしい。

 

9.「野性の風」今井美樹(作詞/川村真澄 編曲/久石 譲)
洗いざらしの白いシャツにブルージーンズ、真っ赤なルージュ。そんな感じ。

 

10.「HI! HI! HI!」森川由加里(作詞/森 浩美 編曲/船山基紀)
何だこのパワーソングは! エキゾでパワーソング、なんかバブルな感じでイイね。ベッド・インとかにカバーしてもらいたい。もうしてるかもしれないけど。

 

11.「夏の二週間」谷村新司(作詞/康 珍化 編曲/船山基紀)
初めて知りました。

 

12.「兆しのシーズン」中島みゆき(作詞/中島みゆき 編曲/瀬尾一三)
大好きな歌。中島みゆきさんのシングルのB面だったみたいです。過去にも「肩幅の未来」(長山洋子)、「美貌の都」(郷ひろみ)と京平センセーとの共作はありますが、これも誰かに提供する予定だったのでしょうか。でも、みゆきさんの蜃気楼のように危うく揺れるボーカルがこの曲にすごく合っていると思います。

 

13.「カナディアンアコーデオン」井上陽水(作詞/井上陽水 編曲/佐藤 準)
楽しいね。

 

14.「強い気持ち・強い愛」小沢健二(作詞/小沢健二 編曲/筒美京平・小沢健二)
筒美京平meets渋谷系。京平センセーは90年代も果敢に新しい音楽と交わっていきます。というよりむしろ、渋谷系と呼ばれるミュージシャンからのリスペクトによるアプローチによるコラボレーションでもありました。クレジットでもわかるように、共同作業により作り出されたサウンドから、お互いへのリスペクトと愛を感じます。青空に突き抜けるような歌。ワタシの青春そのもの!

 

15.「MUST BE HEAVEN」中西圭三(作詞/高見沢俊彦 編曲/小西貴雄)
恐縮ながら初めて聴きました。中西圭三さんの歌は、もちろん色んなヒット曲で耳にしていましたし、歌唱力の素晴らしさは承知でしたが、こんなにも引き込まれ、胸をグっと掴まれた歌唱は久しぶりです。歌い出しからラストへ向かうほどに少しずつ声が擦れていく中、それでも絞り出すように歌い上げる中西圭三さんのヴォーカルの凄みに、つい涙が込み上げていました。

 

16.「恋のルール・新しいルール」ピチカート・ファイヴ(作詞/小西康陽 編曲/小西康陽・福富幸宏)
筒美京平meets渋谷系その2。これもワタシの青春そのもの。小西康陽さんの京平センセーへのリスペクトは様々な作品や仕事を見てもよく分かります。しかしこの曲、かなりピチカートっぽく、アレンジの力が大きいにしても、まるで小西さんが作曲しててもおかしくないくらいピチカートなんですが、京平センセーがピチカートに寄せたのしょうか? 真偽は分かりませんが、京平センセーの呑み込みのよさみたいなものを感じます。

 

17.「Desire」DOUBLE(作詞/SACHIKO 編曲/福富幸宏)
マブいわ。

 

18.「AMBITIOUS JAPAN!」TOKIO(作詞/なかにし礼 編曲/船山基紀)
新幹線に乗れば皆が聞くあのフレーズ、Aメロの出だし部分のメロディやサビの「Be ambitious!」の部分がジングルになってるのでお馴染みかと思います。この曲がリリースされた時、「あぁ、まだまだ京平センセーは現役だ!」と実感した覚えがあります。

 

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