『オトナの短篇シリーズ01「女」』―芥川、太宰、夢野久作…文豪たちが描く美しくも恐ろしい女たち

ink_pen 2018/4/27
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『オトナの短篇シリーズ01「女」』―芥川、太宰、夢野久作…文豪たちが描く美しくも恐ろしい女たち
三浦 暁子
みうらあきこ
三浦 暁子

1956年生まれ。大学在学中に結婚、専業主婦を10年ほどした後、突如、文筆活動を開始。現在は神戸市在住。エッセイストとして活動しています。著書には『ボルネオの白きラジャ』(NTT出版)、『梶本隆夫物語』(燃焼社)、共著に『家族はわかり合えないから面白い』(三笠書房)などがあります。

大倉燁子という作家

大倉燁子の『魔性の女』は実におそろしい作品だ。何でもお見通しの霊感を持つ妻から逃げ出そうとする夫の話なのだが、真綿でじわじわクビをしめられるような息苦しさがある。と、同時に夫に対してこれほどの執着を持つことができることをうらやましいと思った。執着は愛でもあるからだ。

 

逃げても逃げても、追ってくる妻。浮気をしていても、黙って許しながらも、息の根をとめるようなことをする。今の言葉で言うならストーカーと呼ぶべき女性で、夫が「黙ってただじいっと眺めていられるのは辛い」と嘆くのも当然だと思う。

 

 

太宰治が描く3通りの女

他の作品も夢中で読んだが、太宰治の3文字「女」シリーズにはたまげた。『美少女』、『千代女』、『女生徒』と3つの作品が収録されているが、太宰治とはこれほどまでに女を舐め尽くすように描く作家だったろうかと驚かずにはいられない。

 

それも作品ごとに視点が異なっているのが驚く。太宰治は心中という形で命を絶ったが、苦しみも喜びも作品のエネルギーも、もしかしたら、すべてを女性に求めていたのかもしれない。そうでなければ、作品によっておじさんになったり、狂気をおそれる女の子になったり、小説の才能を持った少女となったりできないはずだ。

 

3人3様とも言えるし、3人の中に太宰本人がいるともいえる。実に不思議な味わいの太宰がそこにいる。

 

『オトナの短編シリーズ』はオトナのための作品集であると同時に、オトナになるための小説集だという気がする。19世紀から20世紀にかけて、日本にはこんなに自由闊達な小説があったのかと、これほどまでに暴れてしまう作家達がいたのかと、改めて驚いた。

 

やっぱり小説は面白い。オトナもこれからオトナになるヒトも読んでみて欲しい。

 

 

【書籍紹介】

オトナの短篇シリーズ01 「女」

著者:オトナの短篇編集部
発行:学研プラス

与謝野晶子や太宰治、芥川龍之介に加え、岡本太郎の母・岡本かの子や夢野久作など一度は名前を聞いた事のある作品を中心に厳選。魅力的な「女」の作品と共に、編集部員の選考理由も掲載。電子書籍をまだ読んだ事がない!という方にもオススメの一冊です。

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