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2016/6/27 19:39

砂原良徳の考える高音質とは!? Astell&Kern AK380で聴く音楽&トークイベント「Talkin’ Loud & Sayin’ Music」

音楽評論家の小野島 大さんとゲストが選ぶ優れたレコーディング作品を高音質で聴きながら、その作品の魅力や音へのこだわりについて語るトーク・イベント「Astell&Kern×disk union presents Talkin’ Loud & Sayin’ Music」。そのタイトル通り、ポータブルプレイヤーのハイエンドブランド「Astell&Kern」とディスクユニオンによる共同イベントとなります。その第1回には、“まりん”こと砂原良徳さんが登場。砂原さんが考える高音質の音楽について、熱いトークが繰り広げられました。

↑砂原良徳
↑砂原良徳さん

 

イベントはまず砂原さんが考える良質な録音作品3枚を「Astell&Kern」のポータブルプレイヤー「AK380」を通して試聴し、小野島さんが砂原さんに選出理由や魅力について聞いていくという流れでスタート。その3枚についてのおふたりのやりとりをここで紹介しながら、レポートをお届けします。

↑小野島 大
↑小野島 大さん

 

1.ハービー・ハンコック「フューチャー・ショック」

小野島 このアルバムはいち早くヒップホップにアプローチした「ロックイット」が定番なんですけど、それじゃあんまりひねりがないので「アース・ビート」という曲を聴いてみました。なんでこの曲を選んだかというと、ちょっとYMOっぽいから。なので、まりんさんにはいいかなっていう、ただそれだけの理由なんですけど、このアルバムを選んだ理由は?

砂原 どういうところがいいっていうのを口でいうのってけっこう難しいんですよね。好きな食べ物何ですか?

小野島 好きな食べ物? かつ丼です。

砂原 かつ丼のどこがいいんですか?

小野島 かつ丼のやっぱり濃厚なところがいいんじゃないですかね(笑)?

砂原 音がいい悪いっていうのもそれにちょっと近いところがあって、好みの問題というか個人の感性なので難しいんですけど。僕的にはイメージとして音が一個一個立ってるっていうのと、楽器の一つひとつの音がちゃんと聴こえるっていうこと、あと低中高域のバランスがいいっていうことが良い録音の基準になっています。

小野島 それは分離がいいとかメリハリがあるということに通じる?

砂原 そうですね。そのメリハリっていうのはアレンジに左右されたりすると思うんです。だって音数とか、アレンジでだいたい決めたりしますから。そういう意味では、このアルバムは音と音が混み合わず、ぶつかったりせずに整理されてるなっていう感じがしますね。

 

2.ROVO「RAVO」

小野島 これはいわゆるバンド・レコーディングということで、人力の演奏なんですけど、これは録音的に言うとどんなところが?

砂原 これはほとんど生、マイクの録音で、さっきのハービー・ハンコックと比べると音数も多いし、楽器も多い。音数も多いながらも、うまくまとめてるなって思ってこれを選びました。

小野島 たぶんこれって、おそらくスタジオのほとんど一発録りに近いような。

砂原 一発録りに近いと思います。

小野島 勝井祐二さんをはじめ、非常に技術が高い人たちだからほとんど一発録りに近い形でレコーディングをして、あとでキーボードの益子 樹さんが入念なミックスをしているという制作過程だと思いますが、益子さんのミックスとかレコーディングのテクニックで特徴的なことっていうと何ですか?

砂原 最初に益子さんに会ったのは、2000年代にスーパーカーのレコーディングで最初で、その時は別の方とミックスするはずだったんですけど、益子さんは自分で僕にやらせてくださいって立候補してきたんですね。で、アルバムを通してひとりのエンジニアでやったほうが秩序がちゃんとできて聴きやすくなるっていう話をしていて、そういうことを言ってくる人があまりいなかったんで、オレでも言いそうだなって思ったんです。僕が逆の立場でも、エンジニアはひとりにしたほうがいいって言ったかもなって。そういうことをちゃんと言ってくれるのはいいなって思って。あとは、その時もテープレスのデジタルの録音だったんですが、デジタルを追求していけばアナログ時代に得られていた満足感のほとんどはおそらく得られることになるっていうふうに益子さんが言っていて、その考え方が一致していてたのも大きいですね。

 

3.細野晴臣「細野晴臣アーカイヴス Vol.1」

小野島 プロデュース&ミックス by haruomi hosonoとあるだけなので、恐らくご自宅でご自分で録音されたものだと思いますが、めっちゃくちゃ音がいいですよね。

砂原 空間がわかりやすいものを、ちょっと違う感じモノを選びましたけど、細野さんは、いっつも音がいいです。だいたい。ただ、悩んだ、ちょっと苦戦してるなって思う時もたまにあります。

小野島 それはどういうときなんですか?

砂原 低音がうまく収まりきれてないかも、みたいな。だいぶ悩んでこの場所に置いたなみたいな、っていうのがたまにわかる時がありますね。でも、ちょっとこの作品は次元が違うなっていう感じがするんですよね。音像を聴いた感じとかが。ご自分でマイクで録ってる音なんじゃないかなと思うんですけど、すごくご自分の欲求っていうか、欲望があって、ちゃんとそれを達成できるように音楽を作ってるっていうんですかね。旋律とか和音を聴くっていうよりは、雰囲気とか空間を聴く感じの音楽。楽器ひとつ一つの音がちゃんと良い音で、自分が鳴ってほしいように鳴っていないと、いやっていう感じはすごく伝わってくるんですよね。

 

小野島 今3枚聴いてきて、改めて良い録音とは?

砂原 さっきも言った通りなんですけど、個人の好き嫌いになっちゃうんですよね。言葉では説明しにくいんですけど、僕が考えるいい音はこういう感じっていうのはたぶん説明するより、こうして実際に3枚聴いてもらったほうがわかってくれたんじゃないかと思うんですよね。

小野島 それぞれに録音っていうか音質の方向性も違うし、広がりのあるものから割とずんとくるものまである。

砂原 そうですね。悪い録音も持って来ればよかった。

小野島 例えば有名なやつだと何ですか。

砂原 いっぱいあるけど(笑)。まあ、それはまた今度に。

 

なお、今週土曜日には第2回めとなるAstell&Kern×diskunion presents「Talkin’ Loud & Sayin’ Music」 Vol.2が開催されます。出演はZAZEN BOYSの向井秀徳さん。会場はディスクユニオンのイベントスペース「dues新宿」。

出演:向井秀徳、小野島大
日程:7月2日(土)
時間:OPEN 12:45 / START 13:00
料金:2,000円(税込)+ 1D

 

【URL】
dues新宿 http://dues-shinjuku.diskunion.net/Date/201607/