突然ですが皆さん、“喧嘩”ってお得意ですか?
私は得意かどうかわからない。そもそも誰かと面と向かって喧嘩をしたことがほとんどないからだ。ずっと避けてきた。なぜかって、対立したくないからだ。なぜかって、勝つ自信がないからだ。なぜかって、傷つきたくないからだ。
時折「この人とは絶対に喧嘩したくないな」と思う人がいる。
先日「アメトーーク!」で放送されていた特別企画「ブラマヨ吉田の変愛トーーク」は、ブラックマヨネーズ吉田が“草食系男子”と“彼氏に浮気されたことがある女子”の両者と白熱した議論(?)を繰り広げるものだった。それぞれ複数の相手に一人堂々と戦う吉田に、私は“喧嘩したくない人”の本質を見たような気がした。
特に草食系男子との対決は、一見の価値ありといった面白さであった。
端的に言えば、草食系男子の恋愛観は「あくまで恋愛とは人生の一要素」であり、「他と代替可能」であり、「性欲はあるがそこに至るまでの過程が面倒臭い」という、正論といえば正論のものであった。しかし、ブラマヨ吉田は彼らの発言、というか、価値観、生きる態度、すべてを一言で全否定する。
「どうせ傷つきたくないだけなんやろ」
一寸のためらいもなく言い切った。「お前が彼らの人生の何を知っているんだ」という声が聞こえそうなものだが、彼の気迫か目力か、それとも的を射ていたのか、草食男子たちはつい口をつぐんでしまう。反論もどこかたどたどしく、劣勢のように見えた。
それまで草食系男子のいいわけを全否定し続けていた吉田は、突如「いや、わかるよ」という歩み寄りを一瞬見せる。
「もしコンパになって、ダルビッシュさんとイチローさんと俺、それに女子二人が来るとする。そしたら俺もね、お前らと同じように“いや、別に恋愛とか必要ないし……”とか言うと思う。それはなぜかって言ったら、女性二人はダルビッシュさんとイチローさんに絶対ついていくと思うから。ここで戦いに参加したら俺が深く傷ついてしまう気がするから。……でも、戦うべきだと思う。だって、いつダルビッシュさんが誰かに呼び出されて帰るかもわからん。イチローさんが体調崩して帰るかもわからん。そんなときに二人の女性のどちらかにモテる存在であらなければならないと思う」
まさかの不戦勝狙いである。
スタジオが笑いにつつまれるなか、しかし、吉田はこう言い切った。
「俺らは男前に生まれてこなかった時点で、今回の人生補欠なんです。補欠は補欠なりに日々訓練しておかないと、いざ試合に出られたとなったときに活躍できませんよ」
痺れた。この男、なんて格好いいんだ。
自らのことを“補欠”と言いながらも、勝ちへの執念を捨てない。誰だって、自分のことを人生の主役だと思いたいものである。しかし、現実はそうはいかない。
吉田は、その誰しもが目を背けたい事実を直視し認めながら、それでも前に進もうとする気迫がある。
よく勝負事や仕事などで「本当に楽しんでるやつには勝てないよな」なんて言うが、こと喧嘩においては「傷つくことを恐れないやつには勝てないよな」ということだ。
吉田は決して「他の人は知りませんが、僕個人の意見としては……」なんてダサい枕詞を使わない。どんなに正論で切りつけられても、自らの持論をもってぶつかりにいく吉田の気迫たるや。
とある草食系男子が言った。「僕、ぐいぐいくる女の子が苦手なんですよ。でも、自分からいくのも苦手で。だから(恋愛するのが)大変なんです」
吉田は目を丸くしながら言った。「勝ちたくもないし負けたくもないのに競馬場に来たってこと? 何しに地上に来たんや?」
吉田はあきらかに勝つために地上にきている。戦わなければ負わない傷も、勝ちを見据えていれば怖くはないのかもしれない。孤軍奮闘、しかし決して譲歩せず、なびかず、ぶれない吉田の姿勢は、戦士たるもの。
格好いいなあ、吉田。
そうだよ、私は、何しに地上に来たんだっけなあ。
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イラスト/マガポン