高校球児たちの日常と生態をリアルに描いた映画「野球部に花束を」で実写映画初主演を飾った醍醐虎汰朗さん。劇中では思わず「バカだな〜(笑)」と言いたくなるイキった高校球児を演じています。「過酷だけど青春していたなと思います」と語る撮影の裏話をたっぷりと教えてくれました。
【醍醐虎汰朗さん撮りおろし写真】
これをどうやって映画化するんだろうって気持ちが一番強かった
──初主演が決まったときの心境はいかがでしたか?
醍醐 初主演作品になるのでうれしいなって気持ちと同時に、野球は未経験な上、高校球児を取り巻く環境やしきたりなども無知だったので多少の不安はありました(笑)。野球部員の役に説得力を持たせるためにしっかり練習しないとなって。
──今回演じた黒田鉄平は中学から野球部という設定。経験者に見せるためにどんな練習をしたのでしょうか。
醍醐 撮影前からしっかりトレーニングをして、野球の練習も行いました。コーチに教えていただいて基礎からみっちり。黒田はキャッチャーなので、ひたすら球を捕り続けました。
──高校球児役なので劇中は丸刈りでした。丸刈りになるのは抵抗ありませんでした?
醍醐 特にありませんでした。中学でサッカー部だった頃、部活とは関係なく丸刈りにしたことはあるんです。それでも最初の1日、2日は鏡を見ても自分なのかどうか分からない感覚になりました(笑)。
──笑える「高校野球あるある」がたくさん出てきます。脚本から面白かったのでは?
醍醐 めちゃくちゃ面白いなって思いました。先に原作を読んで面白いと思ったのと同時に、これをどうやって映画化するんだろうって気持ちが一番強かったです。でもさすが飯塚(健)監督だなって。脚本を読んでこうやって落とし込むんだって思いました。
黒田はひと言で言えば “イキリ”。そんな感じの子です(笑)
──役柄について監督とはどんなことを話し合いましたか。
醍醐 本読みが終わった段階で監督と話し合いましたが、それも1分くらいで終わりました(笑)。イメージを擦り合わせる必要がないくらい、お互いの思い描いていたものが一緒で。「こうだよね、こうだよね。うん、OK」って感じのやりとりだけでした。
──醍醐さんご自身は黒田についてどんな人物だと思って演じていらっしゃったのでしょうか。
醍醐 芯はすごく純粋、でも年頃でかっこつけたいしモテたい。本当にどこにでもいる普通の子なんだと思います。ただ芯が純粋だから最初はかっこつけているけど、最終的には野球部にしっかり染まる。その幅みたいなものをしっかりと見せたいなって思いました。まあひと言で言えば “イキリ”。そんな感じの子です(笑)。
──黒田をイキって見せるためのポイントもありそうですね。
醍醐 いっぱい作りました。背もたれにひじを引っかけて反り返るように座ってみたり(笑)。座りづらいのにすごく浅く腰かけたり。ちょっとでも自分を大きく見せるためにする仕草ですよね。弁当も普通に食べればいいのに、足をガッと開いて座ってガッと食ってる自分かっこいいでしょ? みたいな。そういうダサいかっこつけ方を意識しました。黒田ほどイキってはないけど、自分も含め学生時代はみんなそういうことしてたなって思い出しました。
──しっかり練習するシーンもたくさんあるので撮影は大変だったのかなって思いました。
醍醐 過酷なほうだったと思います。真冬に撮影したので半袖でグラウンドに立ったり体育館で全裸になったり、寒さとの戦いでした。仕込めるものがないので、全裸のシーンは地獄でしたね(笑)。
──過酷な撮影の中でも印象的だったシーンは?
醍醐 先輩が引退するときのノックのシーンは、監督が極限まで追い込んだシーンを撮りたかったんだと思うんです。ひたすらスライディングして、僕らが倒れたらカットがかかるんですよ。乳酸がたまって筋肉がパンパンになり最後は動けなくなりました。みんなの顔もキツそうだったし、10分くらい動けない人もいました。その場面はシンプルにみんな芝居を超えた顔をしていました。完成した映像を見て、限界まで追い込んだ芝居を超えた瞬間の顔ってきれいだなって思いました。
──部員たちをしごく髙嶋政宏さん演じる監督も強烈ですよね。
醍醐 髙嶋さんはお芝居がすごく面白くて、脚本からは考えられないくらい役を膨らませて来てくださったんです。それによって作品に厚みが出たと思うのでありがたかったです。普段の髙嶋さんもすごく面白くて。噂には聞いていたんですが、ピンクな感じのお話が多いんです(笑)。しかもイキイキと楽しそうにお話しされるので、もはや変なことを話しているようには聞こえなくて。日常会話のように普通のテンションで話されるのが面白かったです。まだまだ僕には知らないことがいっぱいあるな、大人の階段を半歩くらいしか昇ってないんだなって気づきました(笑)。
本当に部活で仲良くなった友達みたいになれたと思います
──濃いキャラクターがたくさん登場しますが、撮影中吹き出しそうになったりしませんでした?
醍醐 たくさんありました。でも笑ったら飯塚監督にすごく怒られるので、本番はしっかり役としてその場に立っていなければと必死に我慢しました(笑)。心の中では「めちゃくちゃ面白いな、この人」って思っていましたよ。
──チームメイトの桧垣を演じた黒羽麻璃央さんの印象はいかがですか。
醍醐 本当に面倒見の良いお兄ちゃんって感じですね。現場でも気さくに話しかけてくださって、年齢は麻璃央くんが7歳上なんですけど、同じ目線でずっとしゃべってくださったのでありがたかったです。
──1年生を演じた皆さんとはどんな関係性を築けたと思いますか?
醍醐 仲間って感じですね。まあまあ過酷なことを一緒にやったので、ギュッと仲良くなれました。本当に部活で仲良くなった友達みたいになれたと思います。
──撮影中も部活みたいな雰囲気だったんですね。では撮影中の一番の思い出を教えてください。
醍醐 全裸のシーンですね。男たちだけだったので、フルチンになってマエバリを貼り合いました。中には貼るのが下手くそな人もいるんですよ。カッパカパで(笑)。下手くそやんけー! ってイジったりしました。あとマエバリが映らないように着替えるシーンがあって、何回撮ってもどうしても見えちゃったりして……青春してたなって思い出します(笑)。
あの感覚……気持ちいい〜〜ってなります。サウナも水風呂も我慢です(笑)
──ここからは「モノ」「コト」に関する質問をさせてください。今ハマっているモノやコトを教えてください。
醍醐 最近オロポというオロナミンCとポカリスエットを混ぜた飲み物にハマってます。サウナが好きで、サウナから出た後に飲みます。
──サウナはよく行くんですか?
醍醐 行きますね。ハマったきっかけは忘れちゃったんですけど、以前はサウナって熱いから苦手って思っていたんです。水風呂も冷たいからイヤだなって。でも整え方を覚えてからは最高です! サウナに10〜20分入って水風呂に1、2分入ってから体を拭いて座るんです。そうすると体の芯からぐわぁ〜ってなる。何て言うんだろ、あの感覚……気持ちいい〜〜ってなります。サウナも水風呂も我慢です(笑)。そしてサウナから出たらオロポを飲むのが最近のはやりです。この映画の撮影中も行きましたよ。麻璃央くんもサウナが好きで、「サウナ好き?」「好き」「じゃあみんなで行こうか」ってことになって、みんなで行きました。
──マンガもお好きらしいですね。
醍醐 すごく好きです。今は「ONE PIECE」がすごく熱いです。とうとう最終章に突入! 今めちゃくちゃ面白いんですよ。最終章の前に1か月休載していたので、月曜がつまらなくて(笑)。「少年ジャンプ」の作品が好きで小学生からずっと読んでいます。
──「ONE PIECE」の魅力ってどんなところですか?
醍醐 登場人物一人ひとりが魅力的。そして少年誌に掲載されている作品だから熱い。かっこいいです。教科書みたいなところもあって、こういうふうになりたいなって思える生き様をしている人物がたくさん出てくるところも好きです。
──マンガの速読ができると聞きました。
醍醐 読むのはとても早いと思います。でも字をほとんど読まずに、絵を見て雰囲気を楽しんでるって感じだったんです。最近はじっくり読みます。細かいところまで見て、ゆっくりゆっくり読むのが好きになりました。
野球部に花束を
8月11日(木・祝)より全国公開
【映画「野球部に花束を」よりシーン写真】
(STAFF&CAST)
監督・脚本:飯塚健
原作:クロマツテツロウ『野球部に花束をKnockin’ On YAKYUBU’s Door ~』(秋田書店「少年チャンピオン・コミックス」刊
出演:醍醐虎汰朗、黒羽麻璃央、駒木根隆介、市川知宏、三浦健人/里崎智也(野球解説者) 小沢仁志/髙嶋政宏
(STORY)
中学時代の野球部生活に別れを告げ、高校デビューを目指し茶髪に染めて入学した黒田(醍醐)。夢見たバラ色の高校生活は、うっかり野球部の見学に行ってしまい、あっけなくゲームセット。 新入生歓迎の儀式で早々に丸刈りに逆戻り……練習以前に、グラウンド整備や白線引きにすら怒鳴られる日々。そしてヒエラルキーの頂点に立つのは、ヤバい見た目と言動で3年生をも震え上がらせる最恐の監督。強くはない、けど別に弱小でもない。そんな中途半端な並の都立高校野球部で、助け合ったりいがみ合ったりしながらも生き延びていく黒田ら1年生だった。
(C)2022 「野球部に花束を」製作委員会
撮影/映美 取材・文/佐久間裕子