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2023/1/5 6:30

松本穂香「相手の価値観みたいなものが見えてきて、“合う・合わない”が明確になると思う」映画「恋のいばら」

1人の男性とその元カノと今カノのいびつな三角関係を通し、誰もが抱く嫉妬や恋心を繊細かつエキセントリックに描いた『恋のいばら』が、1月6日(金)より公開。劇中で図書館に勤める元カノの桃を演じる松本穂香さんに、W主演を務めた玉城ティナさんの印象や作品の魅力について伺いました。

 

松本穂香●まつもと・ほのか…1997年2 ⽉5 ⽇⽣まれ、⼤阪府出⾝。2015年に『⾵に⽴つライオン』(三池崇史監督)で⻑編映画デビュー。2017年放送のNHK 連続テレビ⼩説「ひよっこ」で注⽬を集める。翌2018 年にはオーディションで役を射⽌め、TBS の「この世界の⽚隅に」で連続ドラマ初主演。そのほか主演作に『おいしい家族』(19/ふくだももこ監督)、『わたしは光をにぎっている』(19/中川⿓太郎監督)『酔うと化け物になる⽗がつらい』(20/⽚桐健滋監督)『君が世界のはじまり』(20/ふくだももこ監督)、『みをつくし料理帖』(20/⾓川春樹監督)などがある。また今年は、Netflix映画『桜のような僕の恋⼈』(22/ 深川栄洋監督)の全世界配信、『今夜、世界からこの恋が消えても』(22/三⽊孝浩監督)、『“それ”がいる森』(22/中⽥秀夫監督)、NHK 特集ドラマ「ペットにドはまりして、会社辞めました」、「WOWOWオリジナルドラマ 松尾スズキと30 分の⼥優2」などがある。Twitter

【松本穂香さん撮り下ろし写真】

 

玉城さんとは映画の中の桃と莉子とどこか同じような感じがしました

──最初に台本を読んだときに感想は? また、本作のオリジナルである香港映画『ビヨンド・アワ・ケン』を観た感想は?

 

松本 私が演じる桃は、少しつかみどころのない女性だったので、今までにないタイプの作品になるかもしれないなと……。とても新鮮な感じがしました。オリジナルは城定秀夫監督が「別モノの日本版を作りたいので、特に観なくてもいいですよ」と仰っていたので、私はあえて観ませんでした。

 

──元カノを通じ、秘密の共犯関係に陥っていく莉子役の玉城ティナさんの印象は?

 

松本 今回、玉城さんと一緒に主演するということでお話をいただいたんですが、私と正反対というか対極にいる方なのかな? と、勝手にイメージを抱いていたんです。でも、いざ、ご一緒してみると、全然そんなことはなく、反対に私と似ている部分が多い方でした。映画の中の桃と莉子も、見た目は全然違うけれど、根本的に似たところを感じて、仲良くなっていくので、どこか同じような感じがしました。

 

──これまでもドラマ「この世界の片隅に」のほか、『君が世界のはじまり』や『みをつくし料理帖』など、シスターフッドを描いた作品に出演されていますが、今回の桃を演じるにあたって心掛けたことは?

 

松本 どの作品でも向き合い方は変わらないので、今回も特に意識はしていません。台本のト書きにも、役に関してのヒントが書いてあるので、それは参考にしましたね。いろんなモノで、ぐちゃぐちゃになっている部屋に、笑顔で人を招き入れるという桃の言動からも、少し人とズレた感覚を持っているのかもしれないと思いましたし、バスで隣に座って莉子を見つめていたり、かなり衝動的な行動を取る人だというのは常に意識しました。

 

ティナちゃんは面白くて、賢くて、努力家で、しっかりされている方

──松本さんといえば、朝ドラ「ひよっこ」で演じられた澄子以来、メガネの印象も強いですが、本作の桃もメガネをかけています。

 

松本 確かに、メガネをかける役は多いです。「似合う」と言ってくださる方が多いので、素直に嬉しいです。今回は衣装合わせのときに、小道具さんが用意してくださったものをいろいろかけながら、あまり主張が強すぎないものを城定監督と一緒に選ばせてもらいました。

 

──そんな城定秀夫監督の演出については?

 

松本 城定監督とは現場であまり役についてのお話することがないまま、撮影がどんどん進んでいきました。軽い演出程度で、相談みたいなこともなく、かなりお任せな感じだったので「大丈夫かな?」と思っていたのですが、「OK!」をいただけました(笑)。ワンカットで撮るシーンが多かったので、「どうなるのかな?」と思っていたのですが、何テイクも撮ることがほぼなかったですし。ここまで監督さんと役やお芝居について話しこまなかった現場は、初めてだったかもしれませんね。

 

──撮影中、玉城さんとの掛け合いはいかがでしたか?

 

松本 2人のシーンが多かったので、どんどん仲良くなっていきましたし、自然と距離感が縮まっていきました。世代が一緒だから合う波長みたいなものは、確かにありました。学年的には私が一個上なのですが、ティナちゃんは面白くて、賢くて、努力家で、しっかりされている方なので、引っ張ってもらったというか、助けられることも多かったです。

 

観る方によって、いろんな解釈ができるところも面白い

──完成した作品を観たときの感想は?

 

松本 1つの作品の中に、ラブストーリーだったり、サスペンスだったり、ホラーだったり、いろんな要素がギュッと盛り込まれていて、簡潔に表現されている作品になったと思いました。観る方によって、いろんな解釈ができるところも面白いです。映画の感想を話し合ううちに、相手の価値観みたいなものが見えてきて、“合う・合わない”が出てくると思うんです。だからこそ、「恋人同士では見ないでください」とキャッチフレーズが付いているんでしょうね(笑)。

 

──ちなみに、松本さんのキャリアにおいて、どんな一作になりましたか?

 

松本 この作品が今後、どのように繋がっていくかは分かりませんが、いろんなご縁があるなか、個人的にはティナちゃんと出会えてよかったな、と思える作品になりました。また、楽しい作品で共演してみたいです。

 

周りの人たちを頼りながら、助けてもらいながらやっていけた2022年

──2023年の抱負を教えてください。

 

松本 2022年は自分一人だけではなく、事務所の方とか周りの人たちを頼りながら、助けてもらいながら、フォローされながら、いろんなお仕事をやっていけた年だったと思います。なので、今年はそれを踏まえつつ、いろいろと幅を広げて、少しずつ成長していければいいなと思います。

 

──松本さんがいつも現場などに持っていくモノやアイテムがあれば教えてください。

 

松本 基本、現場には最悪台本だけ持っていけばいいと思っている人なのですが(笑)、あえて言うなら、空き時間に読む小説ですね。持っては行くのですが、共演者の方と話すことが多い現場ではあれば、読みませんし、連ドラの撮影だったら台本を読んでいることが多いです。好きな作家さんは、西加奈子さんです。

 

 

(C)2023「恋のいばら」製作委員会

恋のいばら

2023年1月6日(金)より全国公開

(STAFF&CAST)
監督:城定秀夫
脚本:澤井香織 城定秀夫
出演:松本穂香、玉城ティナ
渡邊圭祐
中島 歩、北向珠夕、吉田ウーロン太、吉岡睦雄
不破万作、阪田マサノブ、片岡礼子
白川和子

(STORY)
桃(松本穂香)は、図書館に勤務する24 歳。最近、カメラマンの健太朗(渡邊圭祐)にフラれ、関係が終わったところ。会えなくなってからも健太朗のことが気になって、健太朗のインスタを見ていると、どうやら新しい恋人ができたらしい。そこから、今カノのインスタを発見。どんどん検索していくと、今カノは地味な自分とは対照的なイマドキの洗練されたダンサー・莉子(玉城ティナ)だと知る。桃は、インスタを頼りに莉子を調べ、直接会いに行ってしまう。そして莉子と対峙した桃は、ある”秘密の共犯”を持ちかける。

【映画「恋のいばら」シーン写真】

(C)2023「恋のいばら」製作委員会

 

撮影/映美 取材・文/くれい響 ヘアメイク/尾曲いずみ スタイリング/李靖華