人気シリーズ『シュレック』に登場する伝説のネコ・プスが主人公の映画『長ぐつをはいたネコと9つの命』が3月17日(金)に公開します。
愛くるしいモフモフながら、剣を片手に危険な旅を繰り返していたプス。いつの間にか、9つあった命はラスト1つに。死に恐怖を感じ家ネコになろうとした時、どんな願い事も叶う「願い星」の存在を知ります。命を増やすため、なんとしても「願い星」を手に入れたいプスは、手強いライバルたちを巻き込んだ大冒険へ繰り出します。
今回はスリの達人でプスの元カノであるキティ・フワフワーテ役の土屋アンナさんに話を聞きました。キャスティングの話がきたことを「めっちゃうれしかったです」と笑顔で振り返った土屋さん。役作りから自身の家族についてまで、時折、強くたくましいキティの影を見せつつ語ってくれました。
【土屋アンナさん撮り下ろし写真(画像をタップすると閲覧できます)】
仕事に活きるのは人生経験「生きれば生きるだけ、引き出しが多くなる」
――土屋さんは、これまでアクションSF映画『バトルシップ』(2012年)や、アニメ映画『君は彼方』(2020年)などで声優を務めていました。今回プス役を務めるうえで、何か特別な準備はしましたか?
土屋アンナ(以下、土屋) 特に意識しなかったですね。俳優としての演技も同じですが、最初からその役柄に入れないので、やりながら映像と自分の動きをマッチさせていきました。実際に声を出して、その動きをして衣装を着て、どんどんその役になっていく。初めからできると思わないようにしています。
――過去の経験が活きていると感じたことはありましたか?
土屋 それはありますね。仕事も人との出会いも増えて、いろんな感情を経験する分、同じ笑顔でも「ああ、こういう笑顔なのかな」って読み取るパターンが増えているかな。毎日刺激を受けて生きているから、生きれば生きるだけ引き出しが多くなると思います。年を重ねるごとに、人の心は、懐は、大きくなる! ……(周りを見ながら)でしょうか(笑)?
――なるほど! 確かにそう思います。演じるうえで意識したことはありましたか?
土屋 英語と日本語で、ちょっと違うなと思っていて。英語は音が多いけれど、日本語は淡々としているので、より伝わるように大げさにしました。あとは声にならないような微かな音、例えば重い物を持った時の「うっ」とか。映画を見ている人にわかりやすく伝えるために、そんな音を出すようにしました。その音を考えるのが難しくもあり、面白かったです。
――迫力あるアクションシーンも、かなりありましたね 。
土屋 「はっ」1つでも、ジャンプする時の「はっ」と、着地した時の「はっ」は、違うんですよね。頭で考えると自然じゃなくなるので、身体を動かしていました。わざとらしくならないように、でも表現は大げさにっていうレベルも難しい。「声優さんすごいな」って思いました。
――日本語吹き替え版を担当した鍛治谷功監督の演出はいかがでしたか?
土屋 気持ちを引き出してくれるのがとても上手な監督でした。「ちょっと楽しい感じで」とか、「これくらいのテンション? いぇ――い!」「それいきすぎです」とか盛り上げてくれて、一緒に音楽を作るような感じでしたね。私は気が合うと思っているけれど、監督はどう思っているかな(笑)?楽しんで作品を作ろうという気持ちが共通点としてあったので、うまくいったのかもしれません。
キティとプスは“理想の関係性”。「人としての信頼を大事にする愛のカタチ」
――プス役の山本耕史さんとの軽快な掛け合いが印象的ですが、収録は一緒だったのでしょうか?
土屋 別撮りでしたが、プスの声はすでにほとんど入っていたので、一緒にやっているような感じでした。山本さん、いい声していますよね。それに歌が上手じゃないですか。映画『下妻物語』(2004年)の時に、歌う人はテンポを読むのがうまいと言われたんです。今回、テンポよく一緒に作品を作ることができて、山本さんとも気が合う気がしています。
――そんな山本さん演じるプスの元カノであるキティに、共感するポイントはありましたか?
土屋 共感だらけですね。1番は、“ちょっと好きな異性”に会っていても、率先だって「あたしが行く!」と戦いに向かうところ。とりあえず自分で行動するところが、すごく似ているんじゃないかな。あとは母性本能。「ちょっぴりダメ男だから放置できない、この子大丈夫かな」とプスを心配する面もわかりますね。
でもキティは自分の芯を貫いて「私は勝手に生きていくから!」「あなたが寄り添うならOKだけど、あなたが寄り添わないなら知らないわよ」っていう強さを持っている。やっぱり相手を甘やかしちゃダメですね、甘やかしません!
――(笑)。逆に異なる部分はありましたか?
土屋 キティが目をキラキラさせて、プスと“かわいこ対決”するシーンがありますが、私は絶対できないと思いました。「私を見て」のセリフは「えっ、どうやって言おう。どうしよう」って焦りましたね。ネコのかわいさが、私ゼロなので。ネコは6匹飼っていますが、とにかく目がかわいい。あのかわいさを、あいにく私は持っていないです。
――くっつきそうでくっつかない、プスとキティの関係性についてはどう思いますか?
土屋 すごくいいなと思っちゃいますね! 今の時代、パートナーシップというカタチもありますし。友達やきょうだいのような時もあり、恋人のような時もある。人としての信頼を大事にする愛のカタチですよね。私も「そちらは戦いに行くの、じゃあこちらも戦いに行く、後ほど会おうね」みたいなの大好きです!
とかいってラブストーリーのベタベタしている感じも大好きですけれど(笑)。「なにこれ! こんな恋愛したいみたい!」って思う時もあります。でもやっぱり、くっつきそうでくっつかない、それが人生の面白さですよ!
「『うちとは違うね』じゃなく『いいカタチだね』って受け止められる人が増えたら」
――プスとキティと行動を共にするワンコや、「願い星」を狙うゴルディ家族も登場します。それぞれキャラクターの印象を聞かせてください。
土屋 ワンコは、4歳児までのような心を持っていますよね。大人になればなるほど世間のルールに則ったり、経験上で壁を作ってしまったりするけれど、子どもは純粋な目で物事を見ていて、大人がびっくりするような行動や言葉を素直に言ってくれる。「いいじゃん! だってもう幸せだよ」って、ワンコの言葉1つひとつが子どものようでした。
それから子どもって、絶対的に親の味方じゃないですか。親が子どもを強く怒ってしまっても、子どもは親がずっと好きなんです。ワンコも「ねぇ、僕はママとパパが好きなの! それだけなの!」っていう心の持ち主だったので、娘や息子の視線で見られている気がしましたね。親がこの映画を見ると、ワンコと子どもがシンクロするんじゃないかな。
――土屋さんは4児の母で、ちょうど4歳のお子さんもいますね。
土屋 そうそう。私が疲れて帰って愚痴をこぼしても、4歳の虹波(にいな)はおもちゃの携帯で20分くらい「もしもし? そうなの? わかったわ」って、1人で楽しそうにしゃべり続けているんです。見ていると「この子、周りからの言葉なんてどうでもよくなるくらい自分の世界を楽しんでいる」って思います。
ワンコが自分の境遇を話した時も、キティは「それおかしくない?」と言ったけれど、ワンコはすごく楽しそうだった。子どもって、本当にキラキラしている宝です。
――3頭のクマと暮らす少女ゴルディ家族については?
土屋 ゴルディ家族は、いろんな見方ができると思います。人が決めた“家族というカタチ”じゃなくていい、クマでもいいじゃん、これが私のファミリーですって。「思いやる気持ち」「愛する気持ち」は人が決めたカタチにハマらないことを伝えてくれていると思います。
みんながこう思えたら世界平和ですよね。「うちとは違うね」じゃなく「いいカタチだね」って受け止められる人が増えたらいいな。
“願い星”を手に入れたら?「目の前に小さな命があるなら、それを守るのが大人の仕事」
――家族といっても楽しいことばかりではなく、「パートナーがムカつく」「育児がつらい」とネガティブになる時もあると思います。そんな時、土屋さんはどうしていますか?
土屋 楽しいだけじゃない、そりゃそうですよ! 生きていくには仕事をしなきゃいけない、子育てだって自分とは全然違う人間を育てていくわけだから、思ったとおりにいくわけない。 今は特に SNSの時代で、きれいなお弁当をアップしていたり、ファミリーでYouTubeを幸せそうにやっていたりする家もありますが、すべてを見せているわけではないと思うんです。
それを前提に考えると、なるようになる気持ちで母親をすることが大事。さらに大事なのは「自分が崩れたら終わる」と思える強さだと思っています。悩んでも、親が唯一やることは子どもを生かすこと。それこそ自分の子じゃなくても。目の前に小さな命があるなら、それを守るのが大人の仕事だと思うんです。
私は自分なりの子育てを一生懸命やればいいっていう気持ちだけでやっていますね。それに子どもは常に親を必要としていて、必要とされると、人は強く生きられますから。
――強くたくましいキティの影が見えました。では本作にちなんで、もし土屋さんが「願い星」を手に入れたら、何を願いますか?
土屋 世界中で傷ついている子どもたちがいなくなることが1番の願いです。叶ったら超最高ですよね。最近悲しいニュースばかりだから、いいニュースを流してほしい。いいニュースがニュースだから……それがやっぱり私の願いかな。ピースでいこうぜ! です。
――土屋さんの真っすぐな願いが伝わりました。最後に、読者に一言お願いします。
土屋 楽しい映像の中に、1つひとつの言葉の重さを見つけれくれたら、また見方も違ってくるのかなって思います。この映画を通して、みんな生きているだけで最高だねってなったらいいな。
愛用コレクションはアウトドア用品! 土屋さんの「ハマっているモノ」
――今ハマっているモノはありますか
土屋 今コレクションしているのはフリーダイビング用のマスクと、GULL(ガル)のロングフィンです。海に潜るので、海グッズはお風呂場に増えていますね。マスクなんて7つくらいあるかな。潜るところによって変えたり、フリーダイビング用の小さなものだったり、いろいろあります!
それから海つながりで、海に持っていくマイボトルも集めていました。コーヒー用とか漏れる問題とか、いろいろ試した結果、やっと理想のボトルにたどり着いたんです!
――今はいろいろなモノがありますね。選ぶ時は機能性重視なのですか?
土屋 えー、色(笑)。といってもマスクもロングフィンも、見た目と機能性の両方をそろえていないとダメですけどね。買う時は「この青好き! このピンク好き!」で即決まります。買い物に時間かけないタイプですが、長く愛用しますよ。
迷ったら人に見せて「どっち派?」って聞くけれど、答えを聞いても「やっぱりこっち!」って人の意見は一切無視。いや、意見を聞いて「え……」って自分が思ったら違うってわかるんでしょうね(笑)。
長ぐつをはいたネコと9つの命
3月17日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
(STAFF&CAST)
監督:ジョエル・クロフォード
声の出演(日本語吹替版):山本耕史、土屋アンナ、中川翔子、小関裕太、木村 昴、津田健次郎
声の出演(オリジナル):アントニオ・バンデラス、サルマ・ハエック
配給:東宝東和 ギャガ
公式サイト:https://gaga.ne.jp/nagagutsuneko/
撮影/中村 功