エンタメ
映画
2023/4/13 6:30

新谷ゆづみ「よりリアリティーを感じながら、ぬいサーの一員として演じることができました」映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」

繊細な感性で話題作を生み続ける大前粟生氏の小説を初めて映画化した『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』が、4月14日(金)より全国公開。ぬいぐるみに話しかける「ぬいぐるみサークル」に所属する女子大生・白城を演じる新谷ゆづみさんが、「いろいろと考えさせられた」という役作りや、女優としての今後の展望・目標について語ってくれました。

 

新谷ゆづみ●しんたに・ゆづみ…2003年7月20日生まれ。和歌山県出身。最近の主な出演作に連続ドラマW -30「異世界居酒屋『のぶ』Season3~皇帝とオイリアの王女編~」(WOWOW)、ZIP!朝ドラマ「パパとなっちゃんのお弁当」など。映画「わたしの見ている世界が全て」が公開中。

【新谷ゆづみさん撮り下ろし写真】

 

白城は物事を平等に見ることができるし、優しいけれど、そう見えないクールな部分も

──原作・脚本を読んだときの感想は?

 

新谷 私が演じる白城は、ぬいぐるみサークル(以下、ぬいサー)の七森(細田佳央太)や麦戸ちゃん(駒井 蓮)たちと比べると、ちょっと大人びている印象が強かったです。そのとき、私はギリギリ高校生で、「役作り、どうしよう?」と思いましたし、金子(由里奈)監督からも、「白城はとても重要なキャラクター」と言われていたので、少しプレッシャーはありました。

 

──大人っぽいと感じた白城を、さらにどのように捉え、どう演じようと思われましたか?

 

新谷 物事を平等に見ることができるし、とても優しいけれど、そう見えないクールな部分もある。それは物事を客観視できていたり、世間に対して、ちょっと諦めている部分もあるからだと思うんです。あと、七森や麦戸ちゃんとは違う世界を知っているし、物事の捉え方や受け取り方も、優しさのかたちも違う。白城自身も、ぬいサーに入らなければ、彼らと交わることはなかったし、仮に交わったとしても深く関わることがない関係性だと思いましたし、その微妙な雰囲気をどのように出していこうかと考えました。

 

──彼女は、ぬいサーだけでなく、イベントサークルと兼サー(兼部)しています。

 

新谷 一般的な大学生で、どちらかといえば陽キャ。そんな白城に共感するお客さんの方が多いと思ったので、そこも心掛けて演じようと思いました。白城は、ぬいサーに入ることで、イベサーと違う世界を見たかっただろうし、どこかで、ぬいサーのみんながうらやましいと思う部分もあると思うんですね。イベサーでのストレスや悩みを抱えていたことも、「ぬいサーにいたい!」と思う理由ではないでしょうか。

 

──ちなみに、白城はぬいサー内で、唯一ぬいぐるみに話しかけない部員です。

 

新谷 白城なりの理由があるとは思いますが、そんな異質なことすらも、何も言わずに受け入れてくれる、ぬいサーは、どこまでも優しいんだなと感激しました。だからこそ、白城も改めて「この人たちとちゃんと向き合いたい」と思ったんだと思います。

 

金子監督は私たちのことを考えて意見してくださり、ものすごく優しかったです

──ぬいサーメンバーの雰囲気、金子監督の演出はいかがでしたか?

 

新谷 ぬいサーの皆さんとは、台本読み合わせのときから、何度かお会いしましたが、わちゃわちゃした雰囲気にもならず、その後も個人個人の気持ちを深く知りすぎないラインをキープしながら、お互いやっていました。みんな意外と人見知りだったりするのかな? 金子監督は、自分でぬいぐるみを作って現場に持ってくるぐらい気持ちが入られていたので、とても説得力のある演出でした。いろんな意味で、妥協がない方なのですが、言い方だけでなく、私たちのことを考えて意見してくださり、ものすごく優しかったです。

 

──たくさんのぬいぐるみに囲まれた、ぬいサーの部室はいかがでした?

 

新谷 大学のシーンは、立命館大学の校内で撮ったんですが、普通に通っている学生さんもいるなか、その片隅にある本当の部室にたくさんのぬいぐるみを配置して撮影したんです。「わぁ、こんなお部屋があるんだ!」と興奮しました。美術さんが用意してくださったものもあれば、いろんな人のお家にあったものをかき集めているので、役者の私物もあるんです。私は持っていかなかったですけど……。よりリアリティーを感じながら、ぬいサーの一員として演じることができました。

 

──撮影中に苦労されたシーンや印象的だったシーンは?

 

新谷 七森とぶつかり合うシーンですね。お互いぶつかり合うけれども、それは真逆にいた2人がしっかり向き合った証拠じゃないかと。だからこそ、2人の言動として、表現として、すごく大事なシーンだと思いました。なので、時間をかけて、何度もやらせてもらいました。

 

──京都ロケの思い出は?

 

新谷 京都のホテルに宿泊しながらの撮影だったので、そういうところで生まれた絆はあったかもしれません。さすがに、みんなで食べに行くことができなかったのですが、撮影の合間に一人でご飯屋さんにも行きました。佳央太さんが「おいしい鰻を食べに行った」と聞いていたので、そのお店に行ったら、休業日だったんです。それで有名なラーメン屋さんに行って、さっぱりしておいしい醤油ラーメンを食べました。

 

──完成した作品を観たときの感想は?

 

新谷 劇中に流れる音楽や効果音がとてもポップなのに、どこか切なさを感じました。あと、何度か出てくるぬいぐるみ目線のカットを観ることで、ぬいぐるみの方にも感情移入しちゃったりして(笑)。なかなかできない体験ですし、それがこの映画ならではの特色や面白さだと思いました。

 

素敵な人間性も含めてずっと吉高由里子さんに憧れています

──『麻希のいる世界』『やがて海へと届く』など、2022年は女優としての新谷さんにとって大きな転機となった一年だったと思います。それを経ての本作は、どんな一作になりましたか?

 

新谷 原作を読んだときからいろいろと考えさせられ、役者としてもそうですが、人としてもすごく成長できる内容の作品に出会えたと思っています。それは私自身、前から望んでいたことですし、この作品を観た誰かに何かを伝えられることができたらいいなとも思います。あと、同じ事務所ということもあり、七森役の佳央太さんとは小学生のときから同じレッスンを受けるような知り合いだったんです。今回やっと共演できたのですが、このタイミングでご一緒できて本当に良かったです。

 

──今年20歳になり、来年デビュー10周年を迎えるなか、今後の展望・目標は?

 

新谷 もうそんなに経つんですね! お仕事をしつつ、とにかく人間として成長したいです。あと、年齢を重ねるごとに、吸収できるものを着実に吸収しつつ、それを作品に反映できたらと思っています。これからは学生だけでなく、いろんな職業の役をやっていくと思うので、とても楽しみです。素敵な人間性も含めて、ずっと吉高由里子さんに憧れていて、それは変わりませんね。

 

──これまで大人っぽい役柄を演じることが多かったですが、素の新谷さんは?

 

新谷 私、三人姉妹の末っ子なんです。だから、家族の前では甘えたがりです。あと、ちょっと頑固かもしれないし、お姉ちゃんがお母さんに怒られている姿を見て育っているので、「これはしないようにしよう!」とか、要領の良さというか、ずる賢い部分はあるかもしれません(笑)。

 

──撮影現場などに、常に持っていくモノやグッズがありましたら教えてください。

 

新谷 役について以外も、やりたいと思ったことや次の日の予定など、思いついたものをすぐ書き込めるよう、ペンとノートは必ず持っています。ずっと使っているのは、書きやすさよりも柔らかさ重視のシャープペン。ノートはいろんなものを使ってきたんですが、2年前に新潮社さんの「マイブック」に出会って、その使いやすさが気に入っています。2年間で、3冊ぐらいのペースですね。あと、ネロリの匂いをする香水とか、いい匂いがするものも好きです。

 

 

(C)映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい

4月14日(金)より新宿武蔵野館、渋谷 ホワイト シネクイントほかロードショー
4月7日(金)より京都シネマ、京都みなみ会館にて先行公開

(STAFF&CAST)
監督:金子由里奈
原作:大前粟生「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」(河出書房新社 刊)
脚本:金子鈴幸、金子由里奈
出演:細田佳央太、駒井 蓮
新谷ゆづみ、細川 岳、真魚、上大迫祐希、若杉 凩、
天野はな、小日向星一、宮﨑 優、門田宗大、石本径代、安光隆太郎

【映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」よりシーン写真】

(C)映画「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」

 

撮影/金井尭子 取材・文/くれい響 スタイリング/世良 啓 ヘアメイク/坂本志穂 衣装協力/ToU I ToU SERAN,Fumiku