6月9日(金)より公開される広瀬すずさん主演映画『水は海に向かって流れる』に出演する當真あみさん。役どころは、広瀬さん演じる榊と同じシェアハウスで暮らす同級生の直達(大西利空)に思いを寄せ、榊に対抗心を燃やす高校生の楓役だ。昨今、主人公の声の吹替を担当したアニメ『かがみの孤城』をはじめ、大河ドラマ「どうする家康」(NHK総合ほか)など出演作が相次ぐ業界注目の彼女に、初めての長編実写映画出演となる『水は海に向かって流れる』の思い出を振り返ってもらった。
【當真あみさん撮り下ろし写真】
楓を演じるときは、普段の自分とは違うことを意識して、スイッチを入れるように
──今回演じられた楓は、前田哲監督との面接で決まったそうですが、監督とはどのようなお話をされたのですか?
當真 おととしの夏、まだ中学3年生だった時に、東京で初めて前田監督とお会いするということで、すごく緊張していました。そのときは、かしこまった話というよりは学校の話など、雑談をしていたのを覚えています。あと、前田監督からは「芯が強そうに見える」と言われたんですが、そこが楓ちゃんと似ていたというのは、後になって知りました。
──初めての長編実写映画出演が決まったときの感想は? また、本作が初めての本格的な演技だとのことですが、いかがでしたか?
當真 すごく嬉しかったです。それと同じくらい「自分は本当にお芝居ができるんだろうか?」という不安な気持ちがありました。だから、原作マンガをしっかり読みました。あと、撮影が始まる前に、前田監督が大西(利空)くんと一緒に読み合わせしたり、役について考えたり、リハーサルしたりする場を与えてくれたので、そこでも一生懸命頑張りました。
──當真さんは、楓がどのような女の子だと思いましたか?
當真 私の中では、楓ちゃんは素直で強い女の子だなと思いました。それで自分の気持ちに真っすぐなので、榊さん(広瀬すず)や直達くん(大西利空)にちゃんと伝えられるし、すぐに行動に移せる。どちらかと言えば、私はアニメ『かがみの孤城』で演じたこころちゃんに近くて、ちょっと内気な性格なので、うらやましいです。演じるときも、普段の自分とは違うことを意識して、スイッチを入れるようにしました。
よく見ていた俳優さんたちが目の前にいるということで、ずっと緊張していました
──楓は陸上部部員という設定で、當真さんはドラマ「オールドルーキー」ではフェンシング選手を演じられました。運動は得意ですか?
當真 運動はすごく得意なわけではないですが、苦手な方でもないです。楓ちゃんは陸上部の設定なので、フォームや走り方を習って練習しました。ただ、本番では走るのに集中しすぎてしまって……。ちゃんとできていたかどうか、完成した映画を観るまで不安でした。
──撮影現場の印象はいかがでしたか?
當真 初めて本格的な演技ということ以外にも、よくTVや映画で見ていた俳優さんたちが目の前にいるということで、ずっと緊張していました。そのため、休憩時間は皆さんのお話を聞いていることが多かったです。雑談や日常の会話をされていて、とても和やかな雰囲気でした。私は大西くんと同じシーンが多いですし、同い年なので、お互いの学校の話など、リラックスして、一番多く話したと思います。
──広瀬さんや高良健吾さんらが集うシェアハウスでのエピソードを教えてください。
當真 映画の中で榊さんが作ってくれる手料理を、私は食べられなかったんです。あとで「おいしかった」というお話を聞いたので、私も近くで見たかったし、ポテトサラダとか食べたかったです(笑)。あと、自分の出番がない長めの空き時間には、シェアハウスの二階で、映画に出てくる猫のムーちゃんと一緒に、ねこじゃらしで遊んでいました。普段ペットを飼っていないので、とても楽しかったです。
素直に気持ちをぶつけるシーンは難しかった
──大変だったシーンを教えてください。
當真 素直に気持ちをぶつけるシーンは難しかったです。「とにかく、やりきらなきゃ!」とう気持ちもありましたし、特に榊さんとのシーンは何回も何回もテイクを重ねました。榊さんと楓ちゃんの設定上、私の方から広瀬さんにぶつかりにいかないといけないので、緊張と怖さ、もどかしさでいっぱいでした。でも、前田監督も広瀬さんも、目の前でずっと私のお芝居に付き合ってくださって、とても感謝しています。
──改めて、當真さんにとって、どのような現場だったと思いますか?
當真 スタッフさんもキャストさんも気軽に声をかけてくださったり、場を和ませてくれたり、温かくて和気あいあいとした現場だったと思います。そのおかげで、撮影後半にいくにつれて、リラックスして演技できました。私は楓ちゃんと性格が逆なので、今までやったことのない経験ができましたし、普段の生活の中でも「しっかりしないと!」と意識してみたり、いろいろと勉強なりました。
その役を通してでしか経験できないこと、その役をやるからこそできることに気づけて楽しい
──本作後に撮影された『忌怪島/きかいじま』も間もなく公開されます。
當真 『水は海に向かって流れる』の後に、ドラマの現場も経験して『忌怪島』の現場に入ったので、少しは緊張が解けているような気がしました。ホラー映画なので、ほかの作品と雰囲気がぜんぜん違いますし、私の中では「叫ぶ」イメージがあったので、ほかのホラー作品を観て、女優さんの叫ぶ表情とかタイミングを研究しました。
──現在、亀姫役で大河ドラマ「どうする家康」に出演されるなど、多忙な日々を送られていると思います。周囲の反応・反響はいかがですか?
當真 毎日が大変とか忙しいというよりは、自分にはない要素を持った役を演じるときの難しさに気づかされています。でも、その役を通してでしか経験できないこと、その役をやるからこそできることに気づけて楽しいです。家族や友だちから頻繁に連絡が来ることで、「みんな見てくれているんだなぁ」って実感しています。あとは、たまにSNSで自分のアカウントに来るメッセージとか読むことで、「嬉しいなぁ」と思っています。
──今後の目標や展望について教えてください。
當真 今、活躍されている俳優さんの多くが経験されている学園ドラマに出演したいです。あとは、高校を卒業してからになると思いますが、将来的に例えば『ハケンアニメ』のような、いろんなお仕事をしている役に憧れがあります。
──現場に必ず持っていくモノやアイテムを教えてください。
當真 あまり意識していないのですが、大きいバッグとは別に、お仕事のときは台本とお水だけを入れるためのトートバックを持っていきます。今使っているのは、『忌怪島』の撮影で奄美大島に行ったとき、お休みの日に自分で泥染めをして作ったものです。あと、お仕事以外でもなんですが、モバイルバッテリーはないと安心できないみたいで、ときどき大きなカバンの方に2つ入っていることもあるんです(笑)。
水は海に向かって流れる
6月9日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
【映画「水は海に向って流れる」よりシーン写真】
(STAFF&CAST)
監督:前田 哲
原作:田島列島「水は海に向かって流れる」(講談社「少年マガジン KCDX」刊)
脚本:大島里美
主題歌:スピッツ「ときめきPart1」(Polydor Records)
出演:広瀬すず
大西利空、高良健吾、戸塚純貴、當真あみ/勝村政信
北村有起哉、坂井真紀、生瀬勝久
(STORY)
通学のため、叔父・茂道(高良)の家に居候することになった高校生の直達(大西)。だが、どしゃぶりの雨の中、最寄りの駅に迎えにきたのは見知らぬ大人の女性、榊 (広瀬)だった。案内されたのはまさかのシェアハウス。いつも不機嫌そうにしているが、気まぐれにおいしいご飯を振る舞う26 歳の OL ・榊をはじめ、脱サラしたマンガ家の茂道(通称:ニゲミチ先生)、女装の占い師・泉谷(戸塚)、海外を放浪する大学教授・成瀬(生瀬)と、いずれも曲者揃い、さらには、拾った猫ミスタームーンライト(愛称:ムー)をきっかけにシェアハウスを訪れるようになった直達の同級生で泉谷の妹・楓(當真)も混ざり、想定外の共同生活が始まっていく。そして、日々を淡々と過ごす榊に淡い想いを抱き始める直達だったが、「恋愛はしない」と宣言する彼女との間には、過去に思いも寄らぬ因縁が……。榊が恋愛を止めてしまった《本当の理由》とは……?
(C)2023 映画「水は海に向かって流れる」製作委員会(C)田島列島/講談社
撮影/映美 取材・文/くれい響