日曜ドラマ『だが、情熱はある』(2023年4月期)で、お笑いコンビ「オードリー」の春日俊彰役を演じ強烈なインパクトを残した戸塚純貴さん。次は7月22日(土)放送開始のドラマ『スーパーのカゴの中身が気になる私』で主演を務め、制作から携わるなどマルチな面を見せている。
そんな戸塚さんが、俳優になる前に目指していたのが自動車整備士。今でも車やバイクをいじるのが趣味だという戸塚さんに、機械いじりの魅力、そして『だが情』『スーパーのカゴの中身が気になる私』についてたっぷりとお話をうかがった。
【戸塚純貴さん撮り下ろし写真】
車とバイク愛が止まらない素顔「いじっているときがストレス発散」
──戸塚さんといえば資格取得マニアとしてファンの間で知られ、自動車整備士の資格もお持ちです。これはどんなきっかけがあったのでしょう?
戸塚 もともとは自動車が大好きで、そこから整備士に興味を持ち始めました。『ピンプ・マイ・ライド ~車改造大作戦!~』というアメ車(アメリカの自動車メーカーが製造した車)を改造する海外の番組があり、それを見て“整備士ってかっこいいなぁ”と。ただ僕が憧れていたのは、家のガレージでタンクトップを着て車をいじっているような姿で。日本で整備士というと職人的なところもあるので、ちょっとギャップもありましたが(笑)。エンジンやメカの構造などが大好きで、仕事にできたらいいなと思い、専門学校に進学しました。
──子どもの頃からお好きだったんですか?
戸塚 好きでしたね。学校の帰り道、横を通り過ぎていく車種を当てて遊んでるような小学生でした。
──エンジン音だけでどこの自動車メーカーか当てたり?
戸塚 あー、やってましたね(笑)。車やバイクは、あのカッコよさに惹かれていたのと、運転している人が羨ましかったんです。“どうやったら乗れるんだろう”と調べて。バイクは16歳、車は18歳にならないと免許が取れないと知ってからは、早く大人になりたかったです。“自分は免許のためだけに歳をとっているんだ”と当時は思っていました(笑)。実際、16歳になってすぐバイクの免許を取りました。
──当時は何に乗っていたんですか?
戸塚 最初は原付でした。Ape(エイプ)というホンダの50ccのバイクです。友達といじって遊んでいましたね。『モト・チャンプ』というバイク雑誌をよく読んでいて、みんなで「これに載せようぜ!」って張り切っていました。結局掲載されることはありませんでしたけど、青春ですね。
──今もバイクや車をいじるのも、運転するのも、両方お好きなんですか?
戸塚 そうですね。でも、いじる方が好きかもしれないです。自分が乗る車やバイクは絶対に自分でいじりたいですし、人に触らせたくないというのもあります。それに、いじっている間は無心になれるのでストレス発散にもなるんです。もともと黙々と作業することが大好きなので、リフレッシュできるというのが大きいですね。
──なるほど。ロードバイクもお好きだとうかがいました。
戸塚 ロードバイクにハマりだしたのは昨年からです。『VAMP SHOW ヴァンプショウ』という舞台でご一緒した尾上寛之さんの影響でした。尾上さんがすごく自転車好きで、稽古場にもよく乗って来ていたんですね。僕も10年くらい前に買った自転車で通っていたので、それをきっかけにいろいろと教えてもらうようになり、火が点きました。
──自転車もカスタマイズを?
戸塚 もちろんです。ピストバイクにしてみたり、フロントフォークやシャフトを変えてみたり。ただ、すごく楽しいんですが、キリがなくって(笑)。僕はまだまだ、そこまでではないんですが、たまに総額を聞いて“えっ、そんなに高いの!? ”と驚くことがあります。“だって、自転車だよ? ”って。エンジンが付いているわけでもないし、パッと見ただけだと骨にタイヤがついているだけなのに(笑)。でも、そこがハマる理由でもあるんですよね。シンプルゆえに奥が深いから、いろんなことを試したくなります。
──ドライブやツーリングと同じく、ロードバイクでもつい遠出したくなりますよね。
戸塚 そうなんです。以前も八景島まで行きました。いや〜、なめてました。遠いし、アップダウンが激しいからめちゃくちゃきつくて。目的地に着いたはいいものの、帰りは本気でタクシーを使おうかと考えましたから(笑)。でも帰り道は夜中でしたし、道も空いていたのですごく気持ち良かったです。
──ちなみにGetNaviということで、車とバイク以外で必ず現場に持っていくなど、今ハマっているモノもぜひ教えてください。
戸塚 My縄跳びですね! 朝早い現場だとなかなか身体が起きないので、シャキっとするまでずっと跳んでいるんです。……今気づいたのですが、僕はたぶん、ジャンプするのが好きなんです。思えば舞台の本番前にも必ずジャンプをするルーティンがあります。どうやら身体に気合いを入れようとすると、無意識に跳びたくなってしまう性分のようです(笑)。
『だが情』春日役は「僕が感じる春日さんの魅力をただ素直に出すだけ」
──とても多趣味な戸塚さんですが、今もどんどん趣味が増え続けているのでしょうか?
戸塚 いろんなものに興味を持って、すぐに手を出してしまうところはありますね。そのぶん、飽きっぽいんだと思いますけど(笑)。
──さまざまな趣味が、役者の仕事にフィードバックされるのでしょうか?
戸塚 資格はまったく活かされていないですね(笑)。ただ何でも興味を持ったものを掘り下げていく作業は大好きなので、仕事と趣味が互いにプラスになっているところはあります。役によって自分の知らないことがたくさんあり、とことん調べて勉強する。それで面白いなと思ったことは、プライベートでも趣味にしてみる。
──新しい役に出会うたびに、趣味や関心事が増えていく感じがして素敵ですね。
戸塚 この仕事の魅力の1つでもあると思っています。いろんな人の人生を生きられるので、毎回が新鮮です。それに役であれば、“戸塚純貴”じゃないので、好き勝手できるのも楽しいです。普段の生活では絶対にやっちゃいけないことも平気できますから(笑)。
──特に思いがけない役はありましたか?
戸塚 たくさんありますが、女装はまさしく別人になれた気がしました(笑)。
──女装役、多いですよね。
戸塚 そうなんですよ。どうしてなんでしょう(笑)? でも、すごく楽しいですよ。ネイルやメイクを経験したり、ちゃんと下着もつけたりするので、女性の気持ちが少しだけ分かった気がします。NHKの『ディア・ペイシェント〜絆のカルテ』ではトランスジェンダー役を演じさせてもらいましたが、学ぶことが多く、役をいただけて本当に良かったと思いました。
──別の人間を生きるという意味では、『だが、情熱はある』で演じた春日俊彰さん役も衝撃的でした。
戸塚 『だが情』は大変でした。最初にお話をいただいたときは不安と、“いや、絶対に無理でしょ”という思いしかありませんでした。想像できなかったんです、自分が春日さんを演じている姿が。どれだけ考えても、いいイメージが浮かばなかった。
でもプロデューサーさんが「これは戸塚くんじゃないとできない役だから」と言ってくださり、その想いに応えたいと思ったんです。オードリーさんのことは昔からラジオをよく聞いていて大好きだったからこそ、いちファンとして、リスペクトの想いを込めて臨むことにしました。
──演じるうえで、どんなことを心がけたのでしょう?
戸塚 何かを心がけたというより、演技に悩んだら、とりあえず胸を張ってゆっくり歩こうと思っていたぐらいですね(笑)。というのも、春日さんの生態って謎じゃないですか。テレビで拝見している春日さんはすぐにイメージできますが、居住地である「むつみ荘」で生活しているときの春日さんがどんな行動をされているのか本当に分からなくて。
そして春日さんの相方である「オードリー」若林正恭さんや、「南海キャンディーズ」の山里亮太さん、山崎静代さんは演者とコンタクトを取っていたそうなんですが、僕は春日さんとたまたま一度お会いしただけなんです。“……そうですか、僕だけヒントなしですか”と(笑)。
── 1人だけハンディがありますね(笑)。
戸塚 ただ、そのほうが純粋に自分が思う春日さんと向き合えたので、逆によかったのかなと思っています。それと、こんなことを言っちゃなんですが、ご本人からアドバイスをいただいても、あまり身にならない気がして(苦笑)。というのも春日さん自身、最近は自分のことがよく分からなくなってきているとおっしゃっていたんです。
ピンクのベストに七三分けがトレードマークですが、若林さんから提案されてあの姿になってからは、どんどん春日さんが“春日”に侵食され、もはや普段の自分がどんな感じなのかを忘れかけてしまっているとか。
──そうなのですね。確かに、春日さんが何を考えているかを理屈で理解しようとすると、“何を考えているのか分からない面白さ”もがなくなってしまう気がしますね。
戸塚 ですから僕もあまりあれこれ考え込まず、僕が感じる春日さんの素敵だと思う部分を素直に出していけば、それでいいんだと思うようになりました。とはいえ、それを視聴者に受け入れてもらえるかは別問題ですから、放送が始まるまで本当に不安でいっぱいでした。
──実際は、登場するやいなや絶賛の声がSNSにあふれていましたよ。
戸塚 うれしかったですし、ホッとしました。ただ、あの役の功績はスタッフさんたちの徹底したリサーチや愛があったからだと思っていて。まさに“そこに情熱があった”からこそ。そんな素敵な作品に参加できたこと、幸せでしたね。
吉見Pと共同制作「絶対に素晴らしい作品になりますから」
──このたび新たにスタートしたドラマが『スーパーのカゴの中身が気になる私』。主演の戸塚さんは、スーパーでアルバイトをしている売れない役者・十文字雄三を演じますね。
戸塚 またガラッと雰囲気が変わりました(笑)。十文字は売れっ子俳優になりたい向上心のある青年ですが、はたから見ても、どうにも役者に向いていない。でもその空回りしている感じがかわいいし、魅力的なんです。ひたすら夢に向かって頑張っている姿は惹きつけられます。ちょっと変わった奴ではありますが、みんなに愛されるキャラクターになればいいなと。
──共演者も石田ひかりさんをはじめ、豪華で個性的な面々が集まっています。
戸塚 スーパーで働くメンバーは皆さん素敵ですね。華やかに彩りを与えてくださる石田さんと清水麻璃亜さんがいて、そこに永野宗典さんやドロンズ石本さん、渋江譲二さんなど個性的な方々も加わります。十文字はみんなに支えられて成長していきますが、戸塚純貴としても皆さんに助けられています。さらにそこへ竹中直人さんや岡田義徳さんなど豪華なゲストが登場してくださる。物語はそんなゲストの皆さんのストーリーが軸となって描かれていくので、毎回新鮮な気持ちで見ていただけると思います。
──十文字が他人のカゴの中身からその人の人生を妄想し、自分の役作りにつなげていくという展開が面白いです。
戸塚 実は今回、脚本の段階から携わらせていただきました。『純喫茶で恋をして』という2020年のドラマでもお世話になった吉見健士プロデューサーや、脚本家の和田清人さんと一緒に、1から打ち合わせをして作らせてもらいました。
──『純喫茶で恋をして』も、吉見プロデューサーはじめ『孤独のグルメ』スタッフが手掛けるドラマですね。大好きです!
戸塚 うれしいです! 妄想全開で、男性ファンの多い作品なんです。今回も妄想がテーマの1つになっているので、どうやら吉見さんの中に、僕が“妄想する役”をやらせたい思いがあるんだなと感じました。僕も嫌いじゃないので、うれしいんですけどね(笑)。
また今回のドラマでは、妄想部分をアニメーションで表現するなど、いろんな遊びを盛り込んでいるんです。アメコミ(アメリカン・コミックス)っぽい世界観ですが、それも“マーベルの映画に憧れている役者志望という設定がいいんじゃないか”というアイデアから生まれたものでして。みんなでいろんな案を出しあって作り上げていったので、より思い入れの強い作品になりました。
──「役者は受け身の仕事」という話もよく聞きますが、自ら企画に携わるのはまた違った新鮮さや面白さがあるのではないかと思います。
戸塚 僕らはどうしても作品ありきで仕事をいただくことが多いのですが、そこに甘えていると、極端な話、与えられたセリフを言うだけで終わってしまう場合もあります。もちろん、“この役を君にやらせてみたい”という形でお声掛けいただくのは役者冥利に尽きるのですが、ときには自分から作品を生み出していくことも大事だと思っています。演者と制作陣が互いに意見を出し合い、うまく噛み合ったとき、絶対に素晴らしい作品になりますから。これからも挑戦していきたいと思っています。
──十文字は役者を目指す若者ですが、ご自身の経験を投影している部分もあるのでしょうか?
戸塚 そこは意識しませんでした。ただ同じ職業ですから、少なからず共感するところはあります。オーディションに向けての役作りで、思いっきり空回りしてしまうところとか(笑)。
──十文字のように、つい人間観察をしてしまうことは?
戸塚 そこはもう完全に同じですね(笑)。昔は喫茶店で台本を読むことが多かったのですが、まわりのお客さんの会話を盗み聞きしては妄想していました。会話の中身を分析して、その人の職業を推理してみたり、2人組のお客さんがいると、どういう関係なんだろうかと考えてみたり。それが役者の仕事に役立っているのかどうかは全然分かりませんけど(笑)。
──十文字と全く同じですね。すでにさまざまな役に挑戦されている戸塚さんですが、今後挑戦してみたい役はありますか?
戸塚 どんな役でもチャレンジしていきたいと思っています。さすがに年齢的に高校生役はもう無理だと思いますけど(苦笑)。これからは大人の役が増えていくと思うので、セリフや佇まいにしっかりと説得力をもたせられるようになりたいです。あとは、やっぱり日本人ですから、侍の役を演じてみたいです! これは日本人に生まれて役者の道を選んだ人間の宿命だと思っています。
──ぜひ見てみたいです! すでに殺陣の稽古などされているんでしょうか?
戸塚 はい! どんな役がきてもいいように、以前からアクションの基礎などはずっと習っていて準備だけはしています。侍役のつながりで、乗馬も経験してみたいです。乗馬にはライセンスがあると聞いたので、資格収集マニアとしてもぜひ挑戦してみたい1つです。
ドラマ『スーパーのカゴの中身が気になる私』中京テレビ
2023年7月22日(土)放送開始
毎週土曜 深夜24時55分~
TVer、Locipo、Hulu、U-NEXTにて見逃し配信
<キャスト>
戸塚純貴、石田ひかり、清水麻璃亜(AKB48)、永野宗典、ドロンズ石本、渋江譲二、新谷あやか、ほか
<スタッフ>
プロデューサー:吉見健士、歌谷康祐
脚本:和田清人、灯 敦生
演出:佐々木 豪、中山大暉
公式サイト:https://www.ctv.co.jp/superkago/
<ストーリー>
売れない俳優・十文字雄三は生活のためにスーパーでアルバイトをしていたものの、俳優業に専念することを決意し、バイトを辞める決心をする。しかし、そんな彼にレジ係のチーフが待ったをかける。「カゴの中身からその人の生活が見える」という彼女の言葉に、客の観察が役者の肥やしになると考えた十文字。その日を境に、彼は店に現れるわけあり風の客を見ては妄想を働かせるようになる……。
撮影/関根和弘 取材・文/倉田モトキ ヘアメイク/中島康平 スタイリング/鬼塚美代子
衣装協力/
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