推理小説の登場人物となり、参加者が話し合いながら事件の解決を目指す体験型ゲームの新ジャンル「マーダーミステリー」。このゲームシステムをベースに、ストーリーテラーを劇団ひとりさんが務めるドラマ「マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿」は好評を博し、舞台化もされた。2月16日(金)から公開されるシリーズ最新作、『劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血』も、各シーンのセリフはほぼアドリブで行われ、演技者としての実力が試される新感覚ミステリームービーとなっている。過去にも「マーダーミステリー」を取り入れた舞台に出演している北原里英さんに、緊迫感に満ちた撮影時のエピソードを中心に、今ハマっていることやモノなどを語ってもらった。
【北原里英さん撮り下ろし写真】
撮影が始まって、実際に接して得た情報で推理をしていくしかない
──「マーダーミステリー」というゲームシステムを取り入れた『劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血』ですが、事前に与えられるのはキャラクター設定と行動指示のみ、各シーンのセリフはほぼ即興劇(アドリブ)という、俳優さんにとって、演技力はもちろん、推理力やアドリブ力も求められる内容です。
北原 ドラマ版の「マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿」には出演していないのですが、もともと私はマーダーミステリーにご縁があって。マーダーミステリーの要素を取り入れた舞台やテレビのバラエティには出演したことがあったんです。だから初めての方よりは、ルールを分かった上で参加できました。
──マーダーミステリーは人狼ゲームと通じるところもありますが、こういうゲームは得意なほうですか?
北原 あまり人狼ゲームは得意じゃないです。というのもゲームとはいえ、なるべく嘘はつきたくないから。偽善者に聞こえるかもですが(笑)。
──今回の映画は、事前にどんな情報をもらえたんですか。
北原 舞台となる鬼灯村(ほおずきむら)と自分が演じる人物の設定書、その事件が起きるまでの動き、その日の自分の簡単な行動は、それぞれもらっているんですが、それを発展させて自分でセリフを作らなきゃいけないので、誰にも頼ることができないんです。他のキャラクターに関しては、例えば「〇〇に好意を寄せている」ぐらいは分かるんですけど、ほぼ情報がなくて。撮影が始まって、実際に接して得た情報で推理をしていくしかないんです。
──休憩中、共演者とはどう過ごしていたんですか?
北原 本当に厳重で、セッティングチェンジなどで空き時間が生まれるじゃないですか。そういうときも、他の人と話したりしては駄目なので、一人一台ロケ車が用意してあって、車の中で待機するんです。それぞれ車に戻ると、役者一人に、一人ずつ担当のスタッフさんが付いていて。例えば1回目の話し合いをするシーンが終わった後、そのスタッフさんから、「あなたはこれを見つけました」と新たな証拠を渡されるんです。それを次の話し合いのときに、どの順番で出すかが今後の展開で重要になってきますし、自分が犯人と疑われたときに、みんなの目を逸らさせるために出すこともあります。「ちょっと、この証拠は弱いな」と思ったら早めに行きたいし、そこは自由なんです。
──それはすごい! もちろん事前に俳優さん同士で話し合うのも駄目?
北原 駄目です。メイクルームでメイクしているときも、他の方と時間が重なったらあいさつするじゃないですか。あいさつした後に世間話を始めたら、スタッフさんが飛んできて「しゃべらないでください!」と止められるぐらい徹底していました。
「アドリブが苦手」と仰っていた高橋克典さんの独白シーンは圧巻だった
──撮影期間はどのぐらいだったんですか。
北原 俳優陣は2日です。1日目は丸々アドリブパートで、死体発見からエンディングまで。2日目は回想シーンなど前後の芝居パートだったので、その日は決まったセリフのみ。たった2日間なのに、1日目で脱出ゲームをやったくらいの絆が生まれたので、2日目は連帯感がありました。
──かなり1日目は張り詰めた空気だったんじゃないですか。
北原 緊張感はすごくありました。アドリブに対する緊張感もありますし、これが映画になるというところで、1つの作品として完成させなきゃいけないという緊張感もおのおのあったと思います。スタッフさんは、俳優陣の初見のリアクションを大切にして撮ってくださったのですが、演じている側は素とお芝居の中間という感覚でした。
──アドリブパートは、どの俳優さんが話し出すか分からないから、カメラの台数も相当ありますよね。
北原 そうですね。でも、完成した作品を見たら、それを感じさせないので、さすがプロの方々だなと思いました。一日中撮影をしていたので、もっとたくさんのことを話し合ったりもしたんですが、余計なシーンは削って、ミステリー色強めにきれいにまとまっているなと感じました。
──例えば、どういう要素がカットされていましたか。
北原 ドラマ版から出演している劇団ひとりさんはアドリブのプロじゃないですか。八嶋智人さんも面白い方なので、お二人のアドリブは、笑いが堪えられないくらい面白い瞬間が多々ありました。一度カメラが回ったらストップしないので、スタッフさんも流れに任せるしかないんです。そういうシーンは本編でも多少は残っていますが、全体的にシリアスになっていますね。関西人の役者さんが多かったので、現場ではお笑い色が強めでした。
──劇団ひとりさんは笑わせる気満々でしたよね。
北原 満々でした(笑)。初めて映画を見た方は気付かないかもしれないんですが、みんな笑いを堪えたり、顔を背けたりしていて。繰り返し見ていただくと、そういうところにも気付いていただけるんじゃないかと。
──中盤で脱落するキャラもいますが、それも途中で知らされたんですか?
北原 そうです。ご本人も直前まで知らなかったみたいです。
──アドリブ面で特に印象に残っている共演者はどなたですか。
北原 高橋克典さんの独白シーンは、「本当はセリフが用意されてない?」と疑うぐらい迫真の演技でした。しかもご本人は「アドリブが苦手」と仰っていたのに、アドリブでこんなに感情を入れることができるんだと驚かされました。
目の前で劇団ひとりさんのアドリブ劇が見られてうれしかった
──1日目の手応えはいかがでしたか?
北原 全然攻めることができないし、うまくかわされることもあって、演じながら下手だなと思いました。どこまで言うのかがマーダーミステリーって難しくて、あまりに自白しなさ過ぎても話が進みません。大体こういう作品って、一番怪しくない人が犯人じゃないですか(笑)。だから怪しいポイントが多い人は、先に言っちゃったほうが良かったりもするんです。
──事前の役作りも難しいですよね。
北原 でも、しっかり役を作っていかないと、何か言われたときにパッと返せないから、いろんなパターンを考えていきました。何か言われたときの否定の仕方一つとっても、「そんなに強く出たら変だよな」とか、いろんなことを考えちゃうんです。私が演じた七尾優子(ななお・ゆうこ) は最近移住してきた元看護師なので、村人からしたら部外者なんです。村人のことを知らない中で、誰にどうやって疑惑の目を向けていくかも悩みました。
──優子が不利になるような証拠写真も出てきますが、もちろん本番の前に撮影しているわけですよね。
北原 そうです。衣装合わせのときに撮影しているので、どこかで絶対に出てくるんだろうなと思っていたんですが、どこで出てくるかは分からない。でもマーダーミステリー作品をいくつもやってきたので、自分の設定書を見ながら、写真を出されたときに、どういう言い訳をしようか考えていました。
──衣装合わせも推理の上では重要だったと。
北原 そうなんですよ。もっと言えば、打ち合わせが一番の肝だったんじゃないかと思っていて。光岡麦監督との話し合いで、何点かメモしていたことを「こう書いてありますけど、私じゃないですよね?」みたいな感じで質問したら、「鋭いですね」と仰っていました。
──打ち合わせから光岡監督との駆け引きがあったんですね。
北原 逆に撮影が始まってからは、光岡監督と演技プランなどを話し合う時間は少なかったですね。2日目のお芝居パートも、「とにかく全員怪しく演じてください」みたいな感じだったので、綿密に話し合ってというよりは、好きにやらせてもらいました。
──完成した作品を見てどんな印象を受けましたか。
北原 しっかりとしたミステリーに仕上がっていたので、ミステリーファンの方にも満足していただける内容になったと思いますし、劇団ひとりさんのアドリブが好きな方にもオススメです。
──劇団ひとりさんのお芝居は『ゴッドタン』を彷彿とさせますよね。
北原 そうなんです! 私は「キス我慢選手権」が大好きで、『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』は劇場まで見に行ったくらいなので、目の前で劇団ひとりさんのアドリブ劇が見られてうれしかったです。
夫婦で愛用しているスマホスタンド「Majextand M」
──映画でオススメのミステリー作品を教えていただけますか。
北原 私は『名探偵コナン』が好きで、新作映画は毎回、映画館で見ます。中でも好きな作品は2作目の『名探偵コナン 14番目の標的』(1998年)で、各キャラクターの名前に入っている数字を基に事件が起きるんです。目暮十三だったら13、白鳥任三郎だったら3と、この映画のために作者の青山剛昌先生は名前を付けたんじゃないかというぐらい見事でした。今年4月公開の新作『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』は、私の推しである服部平次がキーパーソンになるので、今から楽しみです。
──アニメ全般がお好きなんですか?
北原 それが他のアニメは、ほぼ見ないんです。それ以外だと『エヴァ(新世紀エヴァンゲリオン)』ぐらい。だから本物の『名探偵コナン』ファンなんです!
──今ハマっていることは何ですか。
北原 数年前からなんですが、スパイスカレー作りにハマっています。完全にオリジナルなんですが、適当にスパイスを配合して作ります。家族以外に振る舞うのも好きなので、クリスマス会や正月などで集まるときは、スパイスカレーを作って持って行きます。
──スパイスは専門店で買うんですか。
北原 そういうときもありますが、今はスーパーや百均でもスパイスが売っていて、手軽に買えるんですよ。しかもスパイスカレーって難しいと思われがちなんですけど、実はめちゃくちゃ簡単で。煮込まなくていいので時間も掛からないですし、市販のルーで作るよりも簡単かもしれない。私はキーマカレーが一番得意なんですけど、挽肉を炒めるだけだし、お肉が固くなる心配もないので、すごく楽です。
──最後に今オススメのモノを紹介してもらえますか。
北原 「Majextand M」というスマホ用のスタンドです。お手持ちのiPhoneにシートを貼って磁石で固定させるんですけど、スタンドの高さと角度を調節できますし、縦にも横にもできるし、タブレットにも使えます。例えば新幹線で動画を見るときって何かにスマホを立てて見ると思いますが、不安定でぐらつくじゃないですか。それが全くないですからね。TikTokなどで動画を撮るときや、インスタライブをやるときも、めちゃくちゃ便利ですし、集合写真を撮るときも重宝します。お正月に家族親戚一同で集まったときも大活躍なんですよ。オンラインミーティングにも最適ですし、畳んでコンパクトになるので持ち運びも簡単。あと人間工学に基づいているので、ストレートネックにもなりにくいんです。
──通販番組みたいにスラスラと説明できるんですね(笑)。
北原 そろそろ販売元の会社からオファーをもらってもいいんじゃないかというぐらい周りに売りまくっていますから(笑)。今作の衣装合わせでも、監督さんや衣装さんたち3人が買いました。私からオススメしたわけではなく、普通に使っていたら、「何ですかそれ?」って、みんな興味を持つんですよね。共演者だと、木村了さんと八嶋智人さんにも売り込みました(笑)。
──店頭で見つけたんですか?
北原 いえ、夫(笠原秀幸)がドラマの現場に行ったら、メイク中にスマホを「Majextand M」に立てていた俳優さんがいたらしくて、わざわざスタンドを持ち歩いているんだと思っていたら、メイク後に畳んでいるのを見て、まさかのスマホにくっついているスタンドなんだと。それで夫婦で購入したんですが、我々夫婦で100個は売っています(笑)。色も4色展開で、私が使っているのはシルバーですが、女の子だったらローズゴールドがかわいいと思います。
──本当に会社と繋がってないんでしょうか?(笑)
北原 繋がっていません! でも、これだけ夫婦で売っているので、そろそろ何がしかの契約をいただけたらうれしいですよね(笑)。
劇場版 マーダー★ミステリー 探偵・斑目瑞男の事件簿 鬼灯村伝説 呪いの血
2024年2月16日(金)より、新宿バルト9ほか全国ロードショー
(STAFF&CAST)
監督:光岡 麦
企画:安井一成 エグゼクティブプロデューサー:後藤利一 松井 伸 チーフプロデューサー:梅村 安 嶋田 豪 プロデューサー:西前俊典 市川貴裕 龍川拓美
シナリオ構成:渡邊 仁 企画アドバイザー:眞形隆之
配給:アイエス・フィールド 配給協力:ショウゲート
出演:劇団ひとり、剛力彩芽
木村了、犬飼貴史、文音、北原里英、松村沙友理、堀田眞三
八嶋智人、高橋克典
(STORY)
舞台は『一夜のうちに3人の生贄の血を滴らせると死者が蘇生する』という不気味な伝承が残る鬼灯村(ほおずきむら)。その伝承をもとに「三つ首祭り」という奇妙な鬼祭が行われていた夜、村の長を務める一乗寺家当主の遺体が発見される。 しかし、その日、村へと続く一本道で土砂崩れが発生、 警察が到着するまでにはかなりの時間を要する。当時、屋敷にいたのは8人。それぞれ人には言えない秘密を抱えており、全員が殺害の動機をもっていた。事件の真相に迫るべく、登場人物を演じるキャストによるアドリブ推理が予測不能な結末へと導かれていく―!
公式HP https://madarame-misuo.com/
公式X https://twitter.com/MadarameMisuo
(C) 2024劇場版「マーダー★ミステリー 斑目瑞男の事件簿」フィルムパートナーズ
撮影/武田敏将 取材・文/猪口貴裕 ヘアメイク/住本由香 スタイリスト/山田梨乃