まだ世の中にないものやストーリーあふれるチャレンジが集まる 応援購入サービス「Makuake」から注目のプロダクトをピックアップ。 デザイナー、経営者、テレビ番組のコメンテーターなど、 多岐にわたる活動を展開するアートディレクターの山㟢晴太郎さんに、 開発担当者との対談を通じて製品の魅力を深掘りしていただきます!
【Makuake×GetNavi】山崎晴太郎のNEXT CREATORS「MYCL JAPAN『KINOLI製 Apple Watchベルト』」
MYCL JAPAN
KINOLI製
Apple Watchベルト
2万5000円
Makuake応援購入実施中(6月25日10時〜8月29日22時)https://www.makuake.com/project/kinoli_watch/
キノコの菌糸100%の新素材「KINOLI」を表地に使用したApple Watchベルト。KINO LIは温度や湿度などを調整した環境下でキノコの菌糸を培養し、独自技術でシート状に加工した新素材だ。耐久性を担保するため、裏地には国産の「姫路レザー」(牛革)を組み合わせている。
SPEC●素材:表地/KINOLI(菌糸素材)、裏地/姫路レザー(牛革)、金具/ステンレススチール●対応するApple Watchのサイズ:38/40/41㎜、42/44/45㎜●ベルトサイズ:S/約145〜180㎜、L/165〜200㎜●カラー:オレンジ、ブラウン ※写真は開発中のものです
“自然に還る”サイクルが垣間見えるのも魅力! 100%キノコからできた新感覚レザー素材
デザイナー・山崎晴太郎さん
企業のデザイン戦略とブランディングを軸に、グラフィックからプロダクトまで幅広いディレクションを展開。デザインで社会を変えるという信念のもと、省庁や企業と連携し課題解決に取り組む。セイタロウデザイン代表。TV番組コメンテーターとしても活躍中。
※山崎晴太郎さんの「崎」の字は、正しくは「大」の部分が「立」になります。
MYCL Japan 株式会社
X @MYCLJapan
Instagram @mycljapan
キノコの栽培や種菌開発などに携わる専門業者4社によって長野県小諸市で設立された、グローバルベンチャー。“食”以外でのキノコの可能性を模索し、キノコの菌糸を用いた新素材「KINOLI」を開発。長野が世界に誇るキノコ栽培技術を“衣”、“住”にも転用し、キノコ農業の活性化を目指す。
MYCL Japan株式会社
ブランディング・マーケティング
デザイナー
志賀英人さん
菌糸の神秘とキノコの可愛さに魅せられ、生態や生産技術について独学で習得し、同社に合流。推しキノコはヤマドリタケ(食用)、カゴタケ(観賞用)、ベニテングダケ(観賞用)。
これまでの“皮の”概念を 大きく覆すかもしれない!
山崎さん(以下敬称略)キノコって面白いから好きなんですよ!「あ、これはヤバいな……。でもこっちはイケるかもしれないから食べてみよう」みたいな積み重ねの歴史でしょう? それでこれだけ可食キノコがわかってるって、すごいですよね。見た目が美味しそうなわけでもないのに(笑)。人間の業の集大成って感じで、本当に面白い!
志賀さん(以下敬称略) まさにトライアンドエラーの賜物です。
山崎 時を超えて今度は皮素材にもなって。KINOLIを手に取ったとき、「キノコのニオイじゃん!」と感動しました。見た目や質感は皮なのに。なぜキノコを皮素材にしようと思ったのですか?
志賀 日本はキノコ生産の技術がとても高く、その設備のある企業や農家が長野に集結しています。2020年代に入り、菌糸(キノコの体を形作る糸状の細胞列)を素材化した「マッシュルームレザー」が海外から出て注目を集めたんです。それを見て、“日本の技術であればもっと高品質な、100%菌糸の皮素材を作れるのでは?”ということで、開発を始めました。そんな反骨精神もありつつ、単純に“作ってみたら面白そう”というマインドに突き動かされたほうが強いですね。
山崎 キノコオンリーでできているんですか!?
志賀 一般的なマッシュルームレザーは植物の繊維や石油樹脂が混ぜられていますが、KINOLIは菌糸だけでできています。
山崎 ならば、被災したときとか、最悪食べても問題ない?
志賀 可食できるキノコ製なので、食べても害はないと思います。オススメはしませんが……。
山崎 ごめんなさい、どうしても“キノコ=食べるもの”という概念が抜けなくて、頭の中がバグってます(笑)。動物皮が比較対象なのかと思いますが、KINOLIならではの特徴はありますか?
志賀 一番は、製造プロセスの違いです。牛革なら、牛を育てて皮に加工して……となると年単位の時間と広大な土地、エネルギーがかかりますよね。でも菌糸なら、少ない土地と水で、40日程度で皮素材を作れちゃうんです。しかも、生産にエネルギーがほぼかかりません。どのようにエイジングしていくかはまだ未知の部分がありますが、耐久性は牛革と変わりません。
山崎 変な話、腐る場合はある?
志賀 日常的な手入れをしなければ腐る可能性はありますね。とはいえ、素材としてちゃんと長く使えるように、菌の不活化はしています。
山崎 敢えて腐らせても面白そう。先日知り合いが、引っ越しの際に黒歴史の日記を発掘して、捨てたって言ってたんですよ。KINOLIなら、腐って自然に還っていく日記帳が作れそうですよね。
志賀 作れます!“腐る美学”ってありますよね。いかに美しく終わりを迎えるか……みたいな。それでいうと、KINOLIは生分解性も備えているので、土に埋めれば自然に還ります。キノコは本来、木を分解して土に還すために生まれてきた菌ですから。
山崎 どれぐらいで還りますか?
志賀 遅くてもだいたい半年です。
山崎 え、そんなに速いの!? 年単位はかかるのかと思った(笑)。本当に面白い素材ですね! 循環させることが前提にあるなら、学童系のプロダクトに置換してみるのはどうでしょう? たとえば小学生が夏休みに持ち帰る朝顔の鉢。栽培学習が終わった後は正直、邪魔なんです……。ああいうものこそプラスチックから菌糸素材に変えて、自然のサイクルを子どもたちに学ばせたら、メチャクチャわかりやすくないですか?
志賀 鉢の型を作り水をかければ、中で菌糸が勝手に育って鉢形になるので、すごく良いアイデアだと思います! 鉢から自分たちで作って、朝顔が朽ちたら最終的に鉢ごと土に還して……。僕たちが目指す、“キノコを「衣」と「住」の文化にも定着させる”という未来にもつながっていきそう。
山崎 短いスパンで循環していくのが本当に面白い! いままでそんな素材見たことありません。デザインする立場から言うと、“素材”って世の中に出尽くしていて、新素材に出会って好奇心がそそられることってほぼありません。KINOLIほどフレッシュで可能性を秘めていると、すごくワクワクします。革製品の概念を覆す素材になるかもしれませんね!


※こちらは「GetNavi」2025年7月号に掲載された記事を再編集したものです。
構成/ゲットナビ編集部 文/えんどうまい 撮影/鈴木謙介