今や国産時計の品質、仕上げ、信頼感はスイス製品を凌駕する勢い。とくに40万円台クラスの機械式ウオッチは、スイスの同価格帯ではまず実現できない洗練の作りを見せています。そこで、ここでは人気時計3モデルをピックアップ。今回はムーブメント仕上げについて解説します。
[1]
グランドセイコー
メカニカル自動巻き 3 デイズ
陰影がくっきり浮かび上がった迫力のコート・ド・ジュネーブ
自動巻きローターや受けにスイス時計伝統のコート・ド・ジュネーブ装飾が見えます。丁寧に下地処理を施したがゆえ、波模様の幅が均一でかつ陰影が付いた美しい仕上がりです。昔ながらの緩急針もレトロな美観に一役買っていますね。
セイコーが自ら定義するデザイン文法「セイコースタイル」で時代を超えても愛される外装を主張。搭載Cal.9S65は、MEMS製法による脱進機と特殊素材によるヒゲゼンマイで精度を高めました。
[2]
ミナセ
ヒズ ファイブ ウィンドウズ
職人が生み出す繊細なペルラージュ装飾
渦巻き模様のペルラージュを受けや地板などあらゆるパーツに出来る限り装飾。これにより歪みのない平面を湛えるケースとのコントラストを強め、時計としての審美性を高めています。採算を度外視した丁寧な仕上げと言えます。
ムーブメント・文字盤・インデックスが三位一体となったケースインケース構造を採用。その立体感あふれる造形美を風防、ケース裏、側面に配した5つの窓から鑑賞することができます。
[3]
天賞堂オリジナルウォッチ
ヒストリカルクロノグラフ
無造作な仕上げで機械構造を引き立たせる
ムーブメントにはあえて華美な装飾は用いず、素材そのものの質感やパーツの機能美を追求。これにより、クロノグラフ制御方式として採用した高精度なコラムホイールが際立つなどメカニカルな構造を強調することに成功しました。
銀座で135年以上続く老舗正規店「天賞堂」が手がけるオリジナルブランド。本機は同店の倉庫から発見された1920年代の懐中時計の文字盤に着想を得てデザインしたクロノグラフです。
陰影を強調して波模様の美しさを十二分に表現
腕時計本来の価値を追求し続けるグランドセイコー。精度や信頼性を追求したムーブムーブメントは、美しさでも妥協しません。表面に装飾したコート・ド・ジュネーブは、陰影を強調するセイコースタイルに通じる技法で、地板や受けに全面的に施しています。その美しい装飾を十二分に表現できる手法を取っているといえます。また、ローターの外周部には真鍮よりも質量の大きいタングステンを使用。その境目がわからないほど丁寧 に組み合わせたのもさすがといえます。
ミナセはペルラージュを施した後に、パーツから剥がれてしまった銀メッキを再塗装。このひと手間にこだわって生み出した美麗な模様は実に味わい深い。天賞堂は装飾にこだわらずに機能美を楽しめる潔い外観が好印象でした。