1300が定番ラインではなく復刻で生産される理由!
【Q.6】1300はこれまでに何度、復刻されてきたのでしょうか?
山崎 1995年に初めて復刻されて以来、2000年、2005年、2010年、2015年と5年おきに復刻され、今回の2020年で6度目です。
【Q.7】需要があるにも関わらず、定番化せず限定化するのは、やはりマーケティングな意味合いが大きいのでしょうか?
山崎 確かにそういう意味合いも無きにしもあらずですが、技術的な問題もあります。いかに85年のオリジナルに近づけるか、その試行錯誤を繰り返しながら商品化するわけですから、時間もかかってしまいます。分かりやすい例を挙げると、サドル部分の「N」。85年のオリジナルは、ステッチが直線じゃなかったり、端に寄りすぎていたりします。でも、オートメーション化された現代の工場では、ステッチが綺麗なラインで縫うことも可能なわけです。良いことではありますが、綺麗に縫えてしまうと完全な復刻とは言えません。当時の味を忠実に再現するためには、当時を知る職人の技術が必要になりますし、その技術を新しい世代に継承していかなくてはならない。そういったこだわりが細部に宿るのが1300の復刻モデル。だから量産ができず、定期的な復刻販売になってしまうんです。
【Q.8】1300には1300CLや1300JPなど、様々な表記がありますが、具体的にどう違うのですか?
山崎 純粋な復刻モデルは、1995年、2000年、2005年、2010年、2015年、2020年のものです。こちらはジャパン企画ですのでJやJPがつく。正式には、1995年が「M1300」、2000年が「M1300J」、2005年も「M1300J」、2010年が「M1300JP」、2015年が「M1300JP2」と表記されます。
それぞれ、ディテールにわずかな違いがあります。ちなみに2015年のM1300JP2は、ビブラムソールの使用やシュータンのタイポグラフィだったり、シュータン裏の説明文だったり、オリジナルのディテールを忠実に再現した完全復刻モデルだと言われています。
【Q.9】オリジナルの復刻ではなく、まったく新しいデザインの1300が登場することはあるのでしょうか?
山崎 過去には、「1300CL(クラシック)」というモデルがありました。これは、アッパーは似ているんですが、ミッドソールのソールユニットに別のものを使っているので、厳密には1300の派生モデルとなります。今後も、この1300CLのプラットフォームで新しい技術のミッドソールを取り入れたり、することは考えられます。ただ現段階では、僕の口からこれ以上の詳細は言えません(笑)。今後、正式な発表があると思いますので、楽しみにしていてください。
【Q.10】1300ならではのエピソードを教えてください。
山崎 他のモデルと比べると、お客様の目線がとにかく厳しいです(苦笑)。例えば、目視で確認できない程度のノリのハミ出しやちょっとしたキズなど、他の商品では検品をパスするレベルでもクレームが届くことがあります。先ほどの“なぜ、定番化せず限定化するのか?”といった質問にもつながることなんですが、こういったエピソードも、1300がレギュラーモデルとして展開されない理由かなと。だから、アメリカメイン州にあるスコヘーゲン工場で熟練の職人たちもじっくりと手間と時間をかけて取り組んでいます。