今年のSIHHではパイロット・ウォッチイヤーだったIWCですが、その裏で驚くべき計画が進行していました。高耐磁ウオッチの金字塔「インヂュニア」が、新型の自社製クロノグラフ・ムーブメント搭載とともに新たなスタイリングで登場したのです。驚くべきは、その価格。「100万円の壁」を大きく打ち破った限定モデルを紹介します。
Go back to 1955!!
現行インヂュニアは、1976年に発表された屈強デザインの「インヂュニアSL」にインスピレーションを得て開発されていました。それが、最新作では一気に時代をさかのぼり1955年のファーストモデルを彷彿とさせる姿に生まれ変わったのです。
外装設計は、幅の広いベゼルにインデックス外周のドット型夜光、スマートな4本のラグなど、1955年のオリジナルモデルに通じるクラシックな趣きとなっています。
ここにアクセントを加えるのが、「モータースポーツ」というキーワード。2013年、IWCはメルセデス AMG ペトロナス フォーミュラ・ワンチームとのパートナーシップを機に、インヂュニア コレクションの完全リニューアルを行いました。新作もその流れを受けて、「クラシック・モータースポーツ」の世界観のもとに開発されたようです。
最新作はGold Steel Titaniumの3型で登場
新たに発表された3本の「インヂュニア・クロノグラフ」は、それぞれに明確なテーマを持っています。
ソリッド・レッドゴールドケースが採用された「インヂュニア・クロノグラフ “74th グッドウッド・メンバーズ・ミーティング”」は、英国の南海岸で開催される伝説的なモータースポーツイベント「グッドウッド・メンバーズ・ミーティング」への特別モデル。
チタニウムケースを採用したシルバーメッキ文字盤のモデルは、「インヂュニア・クロノグラフ”W 125″」。このモデルは、1930年代末にルドルフ・ウーレンハウト設計で誕生したメルセデス・ベンツの伝説的なマシン「シルバー・アロー W 125」がモチーフとなっています。
ステンレススチールケースにスレートカラーダイアルという組み合わせの一本は、「インヂュニア・クロノグラフ “ルドルフ・カラツィオラ”」。1930年代、ヨーロッパの数々のレースで勝利をおさめたレーサー、ルドルフ・カルツィオラにインスパイアを受けたものとなっています。
いずれも限定製造で、ゴールドケースが74本、チタニウムケースが750本、ステンレススチールのモデルも750本となっています。価格はステンレススチールの”ルドルフ・カルツィオラ”で、76万5000円。自社製のクロノグラフ・ムーブメントを搭載していながら、かなり戦略的な価格設定となっています。
驚異のプライスの鍵を握る新しい自社製キャリバー69370
このモデルで初披露された新型の自社製キャリバー69370は、エントリームーブメントとして明確に位置付けられたうえで開発された模様。
ちなみに現行の自社製クロノグラフキャリバー89361を搭載したインヂュニア・クロノグラフ・レーサーは122万円〜という価格設定です。外装の大幅な変更を考慮しても、自社製クロノグラフ搭載機で40万円以上も価格がダウンしたことになります。
新型ムーブメントは、伝統的なコラムホイールによるクロノグラフ制御を採用し、耐久性に優れた設計となっています。コート・ド・ジュネーブとペルラージュ装飾も施されており、はっきり言って、なぜエントリー機に位置付けられるのかわからないほどの仕上がり。
ムーブメントの直径は30mm、厚さは7.9mmとなっているので、今後は厚みのある別のコレクションのクロノグラフに換装される可能性も高そう。こうした疑問は、ぜひ来年のSIHHで設計担当の方に話しを聞きたいところです。
最後に告知。現在、IWCではパイロット・ウォッチイヤーであることと、今回の新作にちなんでスペシャルコンテストを開催しています。応募は、本当に簡単な問題に答えるだけ。抽選で選ばれた5名には、2017年3月にイギリスでのスペシャルな体験が待っているそうですよ。
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