グーグルが純正スマートフォンの最新モデル、「Google Pixel 10」シリーズを発売しました。強力なカメラ、独自のAIエージェント「Gemini」を搭載するフラッグシップモデル「Google Pixel 10 Pro XL」を海外出張に持参してみたところ、さまざまな場面でとても役に立っています。この記事では、同機種のインプレッションをお届けしましょう。

目次
旅に欠かせないバッテリー持ちが良いスマホ
筆者はメインのAndroidスマホとして、歴代のGoogle Pixelを使ってきました。本体のデザイン、あるいはハードウェアとしてのカメラ機能などは、グーグルが2024年に発売したGoogle Pixel 9シリーズの時点でかなり高い完成度に到達していたように感じています。
それを踏襲したGoogle Pixel 10シリーズは、全体としてグーグルらしく「AI機能」が大きく進化したことが注目すべきポイントに挙げられるでしょう。余談ですが、スタンダードモデルである“無印”の「Google Pixel 10」も、背面のメインカメラがトリプルレンズシステムになったことには驚きました。しかも、価格はPixel 9シリーズから据え置いています。

筆者は9月1日から約1週間、ドイツの首都ベルリンで開催されるエレクトロニクスのイベント「IFA 2025」を現地で取材することになり、心強いAIエージェントとして「Google Pixel 10 XL」を持参することにしました。Google Pixelシリーズの中で最も大きい、約6.8インチのSuper Actua ディスプレイと、独自設計のチップセット「Google Tensor G5」を搭載するフラッグシップモデルです。Google ストアで販売されているSIMフリーモデルの価格は19万2900円(税込)から。
ビジネス利用という観点で見ると、まず評価したいのがバッテリー時間です。上位のProシリーズは30時間以上のバッテリー駆動時間を実現しており、昨年のProモデルよりも約6時間伸びました。
2025年現在、飛行機でドイツまで行くためには、直行便でも12〜13時間かかります。筆者はウィーンを経由してベルリンまで移動したので、トータルで18時間近くかかりました。その間はPixel 10 Pro XLに保存したNetflixの動画を見まくったり、Pixel純正レコーダーアプリに記録した音声を聞き直したりするなど、仕事にも使い倒しています。
結局、羽田空港でフル充電にしてから、あえて機内で一度も充電しないでみたところ、ベルリンに到着した時点でバッテリー残量は40%以上。万一、充電を忘れて機内で爆睡してしまっても大丈夫です。

大画面で迫力のエンターテインメント鑑賞を楽しむ
Pixel 10 Pro XLの約6.8インチの大きな画面は、Pixel 10シリーズの他モデルに対する大きなアドバンテージと言えます。空港では、航空券のモバイル搭乗券も堂々と表示できました。HDRコンテンツ表示時の最大輝度は2200nits、ピーク輝度は3300nitsと、Pixel 9 Proモデルよりも10%明るくなっているので、各施設でのモバイル搭乗券の読み込みもスムーズです。

あとはなんと言っても、大きな画面で動画が見られるのが快適でした。もちろん画面の大きさではPCやタブレットに軍配が上がるものの、筆者はふだんから電車移動の際にスマホで動画を見ているので、同様の感覚で機内でも気軽に動画が楽しめる大画面スマホが好みです。

ちなみに、Pixel 10 Pro XLは本体内蔵スピーカーが従来機種からアップグレードされています。比較しながら聴いてみたところ、全体の音の量感がパワーアップしている印象を受けました。たとえば音楽や映画のサウンドトラックを聴くと、中低音域の厚みが増していることがわかります。
ナレーションや映画のダイアローグなどは人の声の明瞭度がもう少し上がってほしかったとも思いますが、そのためには抜本的なスピーカー取り付け位置のレイアウト変更が必要になりそうなので、悩ましいところです。

Pixel 10 Pro XLに難点があるとすれば、やはり他のPixel 10シリーズのモデルよりも本体が重いことです。質量は232g。手に持つとずっしりとした重みを感じます。ここまでの重さになると、画面の大きさや先進性を優先して、10月9日に発売される折りたたみモデル「Google Pixel 10 Pro Fold」を選んでも良さそうな気がしてきます。

旅行に役立つPixelの新しい2つのAIカメラ機能
観光のようなシーンでは、Pixel 10 Pro XLが新しく搭載する2つのAI系カメラ機能が特に楽しめました。
ひとつはPixelのAIエージェントが、写真を撮影する際に構図の決め方をガイダンスしてくれる「カメラコーチ」です。カメラアプリを起動して、画面右上に表示されるカメラのアイコンをタップすると、被写体をスキャンして、AIが写真の構図を複数提案してくれます。
カメラの実力で色合いやボケ味が上手に表現できたとしても、構図ばかりは撮る人のセンスに依存します。筆者は自分が思っているほどに「食」の写真を撮るのがうまくないようで、よく家族に美味しそうに見えないとダメ出しされます。どうも、料理や食材に近く寄り過ぎてしまうようです。そんな筆者に、カメラコーチは「食器や盛り付けの美しさを表現してみては?」と適切なアドバイスを授けてくれました。

お気に入りの構図を見つけたら、被写体を中央に寄せたり、周りにどういった被写体を写り込ませるとキレイに見えたりするかなど、AIが複数ステップに渡ってコーチングしてくれます。一方で、被写体が「人」や「ペット」のような自発的に動くものだった場合、この数ステップの間に思案してしまうと、せっかくのシャッターチャンスを逃してしまう可能性もあります。旅先で出会った美味しい料理、美しい風景と歴史的建造物などをうまく撮りたいときに活躍してくれそうな機能と言えるでしょう。
もうひとつは、Pixel 10 Proシリーズにだけ搭載されている100倍電子ズーム対応の「超解像ズームPro」です。独自のAIアルゴリズムにより、30倍以上の電子ズーム撮影時にディティールを補完してくれます。
筆者はヨーロッパの教会建築の大ファンですが、高い塔の先端の方にいるガーゴイルの彫刻、装飾された美しい機械式の時計など、ズーム撮影により近付いてディティールが確認できることに感動しました。AI超解像なので、形状や平坦部の質感が多少変わってしまうこともありますが、得られる発見の方が多いので、今まで見慣れていた建物も撮りまくってしまいました。



仕事で便利、レコーダーのNotebook LMアプリ連携
もう一つ、筆者は仕事でよくPixel純正レコーダーアプリを使います。これまでは録音音声を自動で文字に起こしてGoogleドキュメントに共有する機能がありましたが、Pixel 10シリーズからは、クラウドを介してNotebook LMに文字起こしデータを共有できるようになっています。
要約や翻訳など、「できること」はNotebook LMアプリに準じる形になりますが、文字起こしデータを元に、録音の内容をポッドキャスト番組風の「音声解説」に変換してくれる機能が便利です。筆者はインタビューの録音内容について、原稿を書く前に復習する用途に活用しています。Notebook LMアプリへの共有機能は、Pixelをインターネットに接続しないと使えないので、機内で使う際にはWi-Fi接続が求められます。

高価だが長い目で見れば”お得な買い物”になりそう
Pixel 10シリーズは高い耐久性能を備えているスマートフォンですが、特に慣れない場所に旅行や出張のため出かけるときにはケースを装着した方が無難だと思います。グーグルの純正ケースを着けると、背面カメラバンプの張り出しがなだらかに抑えられるのでおすすめです。持ちやすくなります。
フラッグシップモデルであるPixel 10 Pro XLはスマホとしては高額ですが、グーグルはこれから7年間に渡りAndroid OSとセキュリティのアップデート、Pixel Dropによる新機能の追加サービスを提供することを宣言しています。旅行の時間に限らず、普段から仕事やエンターテインメント鑑賞などにも使い倒せるAIスマホとして、本機は長い目で見て”お得な買いもの”になると思います。
【ギャラリー】(クリックで拡大します)