Vol.153-3
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回はAmazonの電子ペーパー端末「Kindle」のカラー化について考察。これまで向かないとされた電子ペーパーをカラー化する狙いとは何か。
今月の注目アイテム
Amazon
Kindle Colorsoft
3万9980円

Kindleのカラーモデルである「Kindle Colorsoft」は、Amazonとしては初めてのカラー電子ペーパー採用端末だ。だが、カラー電子ペーパーの採用自体は他社でずいぶん前から定着している。
電子ペーパー自体はE Ink社が製造しており、どのメーカーでも発注すれば製品に使える。電子ペーパーを作っているのはE Ink社だけではないのだが、ことコンシューマ向けの製品に使われているものとなると、ほとんどがE Ink社のものと考えていい。
逆に言えば、どの製品でも同じ世代の電子ペーパーを使っていれば画質の差は小さい。例えばカラー版電子ペーパーとしては「Kaleido 3」という世代のものが提供されており、多くのメーカーが採用している。Kindle Colorsoftが採用しているのもこのパネルだ。
個人向けの電子ペーパーを採用している企業は主に3つに分かれる。タブレットを作っている企業、メモ端末を作っている企業、そして電子書籍専用端末を作っている企業だ。
もっとも熱心なのは、ニッチなタブレットを作るメーカーである。中国の家電メーカー「Onyx Internationals」のブランドである「BOOX」は、AndroidをOSとして使いつつ、ディスプレイにE Inkの電子ペーパーを使った端末を作っている。
Androidアプリを自由に使えるので、メモを取りたい人やKindle以外の電子書籍ストアを使いたい人が選んでいる。もちろんカラーの製品もある。サイズも機能も多彩で、バリエーションはKindleの比ではない。日本にも販売代理店はあって入手は難しくないが、製品バリエーションが多いせいもあってか、ひとつの製品サイクルが短いので、欲しいものがあってもすでに在庫がない……ということもあるのが欠点だ。
メモ端末としては、富士通クライアントコンピューティングが販売している「クアデルノ」がある。電子書籍を読む機能はないが、手書きでメモをとることに特化している。ビジネスや学習だけでなく、楽譜にメモを取りつつ演奏するためにも使われている。こちらも2024年末にカラー対応の「Gen. 3C」が発売され、主力製品になった。
さらに電子書籍専用端末としては、「楽天Kobo」シリーズが挙げられる。こちらも長く電子ペーパーを使った端末を販売しているが、現在は「Kobo Libra Colour」「Kobo Clara Colour」というサイズ違いのカラー端末も販売している。発売は2024年5月なので、Amazonに対してかなり先行しての発売、ということになる。
Amazonがゆっくりと動いたのは、それだけ危機感を感じていなかった、ということかもしれない。Kindleのシェアは高く、少々のことでは揺るがない。そのためかなり保守的なデバイスが多い印象なのだが、流石にカラーのデバイスが必要……ということになったのだろう。
では、そんなAmazonが危機感を抱いた状況とはどんなものか? その点は次回のウェブ版で解説していく。
週刊GetNavi、バックナンバーはこちら