非破壊スキャンから書画カメラまで網羅:CZUR ET MAXが実現する自炊とペーパーレスの究極系

ink_pen 2025/12/29
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非破壊スキャンから書画カメラまで網羅:CZUR ET MAXが実現する自炊とペーパーレスの究極系
小川秀樹
おがわひでき
小川秀樹

編集プロダクションで編集・ライターとしてのキャリアをスタート。ビジネス、旅行、スマホ関連、著名人インタビュー記事などを幅広く制作してきました。趣味は国内外の旅行。特に東南アジアの文化を好み、タイとミャンマーには3年間の在住経験があります。


「自炊(書籍の電子化)」へのニーズは根強いものがありますが、愛書家にとって本を断裁したり、スキャナーに押し付けたりする行為は心理的ハードルが高いものです。そんな「大切な蔵書を傷つけたくない」という悩みを解決するのが、非接触型オーバーヘッドスキャナー「CZUR ET MAX(シーザー・イーティー・マックス)」です。

断裁不要で書籍を電子化できるだけでなく、ビジネスを支える多彩な機能が搭載された、ペーパーレスの究極系とも言える本機の実力を徹底検証しました。

クラファンでも注目! 非接触型スキャナーの集大成

2010年に初代iPadが発売された頃、蔵書の自炊がブームになりました。当時は断裁機で書籍をバラバラにして高速スキャナーに流し込むスタイルが主流で、電子化の便利さと引き換えに、「本を壊す」決断を迫られた経験がある人もいるのではないでしょうか。

あれから年月が経ち、自炊を取り巻くテクノロジーは劇的な進化を遂げました。現時点における究極系とも言えるのが、今回レビューするCZUR ET MAX(シーザー・イーティー・マックス)です。

本機は、非接触型オーバーヘッドスキャナーを手掛けるCZURのフラッグシップモデル。上部から撮影をするだけなので、断裁する必要がないことはもちろん、スキャナーに本を押し付ける必要すらなく、蔵書に一切のダメージを与えずに電子化できることが最大の特徴です。

同社はこれまで、個人・オフィス向けのさまざまなオーバーヘッドスキャナーを展開してきましたが、本機はその集大成ともいえるモデル。従来の非接触型スキャナーが抱えていた「画質」や「歪み」などの問題を、圧倒的なスペックでねじ伏せに来たという印象です。

本製品への注目度は凄まじく、先行して実施されたクラウドファンディング(Makuake)では、50万円の目標に対して約4,000万円の支援額を達成しました。多くの愛書家やビジネスパーソンが、この「究極の一台」の登場を待ち望んでいたことがうかがえます。

まず驚かされるのが、3,800万画素・410dpiという超高画質。実際に最高画質でスキャンして拡大してみましたが、細部までしっかりと描写されていました。

↑最高画質でスキャンしたものを拡大。細かい文字も潰れずに保存できる。

本体はマットブラックの重厚な質感で、デスク上での存在感は抜群。上部には大まかなスキャン範囲を確認できるプレビューモニターが搭載されています。

↑いちいちPCに視線を移さずにスキャンできるプレビューモニターが意外と便利。

また、背面には取り外し可能なサイドライトが付属しており、光沢紙の反射を軽減できるなど、ハードウェアの完成度は極めて高い印象です。

↑2方向から光が当たることで反射が若干軽減される。

セットアップは、専用ソフトをインストールしてから、PCと本体をケーブルでつなぐだけ。拍子抜けするほどスマートに次世代の自炊環境が整います。

↑専用ソフトでは簡単な画像編集やOCR作業などが行える。

非破壊の書籍スキャンに特化した便利機能

本機種はフラッグシップらしく豊富な機能が搭載されていますが、中でも充実しているのは非破壊で書籍をスキャンするための機能。ここでは、主な機能を3つ検証します。

・付属の指サック
オーバーヘッドスキャナーで厚みのある書籍をスキャンする場合、本が閉じないように抑える必要がありますが、せっかく自炊したページに自分の指が写っているのは興ざめです。

本機種には、専用の指サックがついており、これで抑えることでソフトが自動的に指サックを検出・削除してくれます。

↑左写真のように付属の指サックでページを抑えると、自動で消去。右写真は実際に消去されたデータ。

上の写真のように、なにもない位置に指サックを当てれば完璧に消去してくれる一方、文字や写真のある場所を押さえてしまうと、やはり不自然になるので、小口(ページ外側の端)ギリギリまで文字や写真があるものには不向きです。

↑左写真のように文字の上を押さえると、右写真のように不自然に修正される。

・フットペダル

↑しっかりとした押し心地で誤作動は起こらないが、何回も踏んでも疲れにくい絶妙な設定。

指サックで本を押さえながらスキャンすることが多いので、本製品にはスキャンのスイッチとして、フットペダルが付属しています。

オーバーヘッドスキャナーの場合、高速性に懸念があったのですが、フットペダルがこの課題を解決していると感じました。慣れれば、ページめくり→指サックで抑える→フットペダルでスキャンという流れを、見開きあたり1~2秒で行うことができました。

なお、手で押すタイプのスキャンボタンも付属しているほか、ソフト上で「スキャン」のボタンをクリックすることでもスキャンできる、至れり尽くせりの仕様となっています。

・歪み補正
断裁せずに本を開いたままスキャンする場合、「ページの湾曲」という問題がついて回ります。しかし、ET MAXはこれをソフトウェア上の処理でしっかりと解決しています。

実際にスキャンをして驚いたのが、補正の自然さです。

↑右が補正後。写真、文字ともに違和感なく補正されている。

左の写真は、あえて指サックで押さえず湾曲を出し、さらに補正なしでスキャンしたものです。ノド(綴じ目)付近に歪みが発生しています。

一方、右写真はまったく同じ条件でスキャンしたものに、歪み補正をかけたもの。まるで最初からフラットな紙であったかのように平坦化されています。

あまりにも歪みがきつい場合、不自然な補正になることもありますが、上記の指サックと併用すれば、大抵の書籍は歪みなくスキャンできそうです。

ビジネスシーンで活躍する「全部盛り」の多機能性

非破壊の書籍スキャンに便利な機能が揃っているET MAXですが、他にも「全部盛り」と言えるほど圧倒的な多機能性を備えています。特に、ビジネスシーンで溜まりがちな紙資料の整理において、本機種は最高のアシスタントになってくれそうです。

ここでは、ビジネスで使えそうな4つの機能をピックアップして検証していきます。

・マルチターゲットページング
筆者がもっとも実用性を感じた機能が、マルチターゲットページングです。これは、ランダムに置かれた複数の書類を一度にスキャンすれば、ソフトウェアが個別のアイテムとして認識し、独立した画像ファイルとして保存してくれるもの。

例えば、紙のレシートや名刺などを一気にデータ化する際などに便利そうです。乱雑に斜めに置いても傾きを補正してくれるので、並べ方に神経質になる必要はありません。

↑あえて斜めに置いたレシートも、まっすぐにスキャンされ画面左に正しい向きでサムネイルが並ぶ。

・自動ページ補修
ホッチキスで綴じられた書類や、端が少し破れてしまった古い資料も、スキャン時に自動で補修して白く埋めてくれます。ちょっとした工夫ですが、データ整理の際に角が綺麗に揃っているだけで、気持ちよく仕事ができると感じました。

↑ホッチキスで綴じられて角が折れている書類。右写真は補正部分を拡大したもの。修正の跡は見えるものの、形が揃っているのはうれしい。

・OCR機能
本機が備える「OCR(光学文字認識)機能」は非常に強力で、スキャンしたデータをWordやExcel、検索可能なPDFへと変換してくれます。

認識精度は高く、今回試した範囲で修正が必要だったのは「ー(長音記号)」を「-(ハイフン)」と誤認した箇所くらいでした。紙の資料から引用して企画書を作る際など、この精度がもたらす時短効果は計り知れません。

そして、かつての自炊ブームと現代で決定的に異なるのが、こうしたデータを作った後の「活用の幅」です。

例えば、Googleの最新AIサービス「NotebookLM」。これはPDFやテキストなどを読み込ませることで、その資料に基づいた要約や分析などを行ってくれるツールです。

↑「NotebookLM」。PDF、テキスト、ウェブサイトなどのソースを元にAIと対話ができる。

ET MAXでアナログ資料をスピーディーにPDFやテキストへ変換し、こうしたAIに読み込ませれば、膨大な資料の内容についてAIと対話しながら業務を進めることも可能になります。

単なる保存のためではなく、紙の資料を効率的に活用するための入り口として、高精度なスキャナーの重要性はこれまで以上に高まっていると言えるでしょう。

・書画カメラ
スキャン機能ではありませんが、ビジネスシーンで大活躍してくれそうな機能が「書画カメラ」です。こちらは、映しているものをリアルタイムでモニターやプロジェクターなどに出力できるもの。

会議での資料共有、研修での実物投影、プレゼンの演出など、あらゆるビジネスシーンで活躍してくれそうな機能です。

↑手元の細かい資料や製品サンプルを画面出力できる。接続はHDMI。多少の遅延はあるものの、快適な使い心地。

15万円の価値あり。「全部盛り」で完全ペーパーレスへ

ここまで紹介してきたもの以外にも、ET MAXには多くの機能が備わっています。

例えば、免許証や名刺などの裏表をスキャンして一枚の画像に統合する「裏表統合」、大きなサイズの書類でも半分ずつスキャンして後から結合できる「A2結合スキャン」など、痒いところに手が届く機能が満載です。

CZUR ET MAXをしばらく使い込んで感じたのは、単なる書籍自炊用スキャナーではなく、身の回りのあらゆるアナログ情報をデジタル資産へと集約・変換する「ハブ」のような存在だということ。

・蔵書を傷つけずに、最高品質でアーカイブしたい人
・大量の資料や名刺、レシートを効率よく整理したい人
・会議やプレゼンでアナログ資料をスマートに共有したい人
・アナログ資料をAIに読み込ませ、業務に活用したい人

こんな人は、「全部盛り」の機能をフル活用できるはずです。
非常に完成度の高い製品ですが、あえて注意点を挙げるとしたら、まずはスペースです。付属マットを含めると、縦横それぞれ60cmほどのスペースが必要です。基本的にパソコンと並べて使用するものなので、かなり広いデスクスペースを確保しなければいけません。

もう一つの注意点は、やはり価格です。クラファンでは割引販売が行われましたが、通常の価格は約15万円。企業で使うならともかく、個人が使うスキャナーの価格としては、若干勇気のいる金額ではあります。正直なところ、たまに数枚の書類をスキャンする程度の用途であれば、本機は完全なオーバースペックであり、持て余してしまうでしょう。

しかし、AI活用などを見据えて大量の書籍や資料をデジタル化したいユーザーならば、15万円の投資に十分見合うリターンが得られる製品だと感じました。

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